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魔法で犬にされた僕が好きな女子に飼われる話

作者: 佐古昭博

なんか浮かんだ妄想を小説に書きました。

共感してくれたら嬉しいです( ´∀`)

 僕の名は犬塚淳史、なぜか犬になっていた。しかも小さめの犬にだ。それも昨日からだ。まったく身に覚えはないのだが、ただ微かに気になることと言えば、一昨日に杖を持ったじいさんを歩道をよたよたしているところを助けたのだが、そのじいさんがあろうことか僕の夢の中に出てきたのだ。

 一見良くなさそうな夢だが、彼は僕にこう言った。


「今までの善行のため、お主を幸せにしてやろう」


 ……それがこの結果か?

 全然幸せじゃねーよ!! 不幸せだよ!!


「ワンワンワーンー!!」


 と吠えても仕方がなかった。どの人間にも伝わらないのだからだ。それにもう夕方の空になり、皆の帰宅時間である。僕は帰る宛もない近くの公園に向かう。


「クーン……」


 と寂しく下を向いてとぼとぼと歩いていると、ビーンという音が聞こえた。見ると横からバイクが来ていたのだ。僕はいつの間にか車道に出ていた。僕はなけなしの力を振り絞って対向車線へ走った。


「ばっきゃろーー! 危ねーだろ、このクソ犬ー!!」

「ワン……ワン……」


 なんとか逃げ切ったが、四本脚で走るのが慣れていないので危うく敷かれるところであった。

 くそっ、なんでこんな目に!! 幸福どころか不幸のどん底だよっ!!


「クーン……」


 と鳴いていると、キーと自転車が止まる音がした。


「大丈夫……?」


 声をかけられた方を見ると、僕と同じ学校の制服の女子だった。自転車から降りて、ミニスカートをひらひらさせながら、僕に近づいてくる。

 僕は思った。

 (なるほど、これは幸福(あり)かも知れない)


「もうさっきのバイクの人なんなのー! こんな小さな犬に向かって、あんな酷いこと言うんだから。本当さいてー!」


 彼女は怒りながら、膝を折りたたむ。この景色は絶景だった。犬になって危うく幸せと感じてしまうところだった。


「ちちちっ」


 と呼ぶ彼女の顔を見ると、僕の好きな女子である有栖川由香里ちゃんだった。成績優秀、家庭的な優しさで家は裕福と噂される美少女で、彼女の長い髪はとても艶やかで綺麗かった。


「で、その犬どうするの?」


 彼女の連れの女子が言う。


「うーん……。よし、可愛いし、可哀想だからウチで飼うわ!」

(え?!)

「おー、さすがユカリ~。金持ちは行動力が違うねー」

「それにこの顔どこか……」

「ん? 顔がどした?」

「う、うん。何でもないわ! さっ、おいで……」


 僕はどきどきしながら彼女に近づく。そして彼女に持ち上げられる。身を好きな女子に委ねるから、心がさらにどきどきし体が熱くなる。


「なんだこの犬。オスじゃねーか。絶対さっきの拍子にユカリのパンツ見たぞ、スケベだな~」


 僕はついギクッとする。


「絵美、そんな下品なこと言わないの!」

「はいはーい」


 そして彼女は絵美という友人と別れてから、有栖川邸に着く。流石は有栖川邸見た感じ豪華だ。


「じい」


 由香里ちゃんがパンパンと叩くと、執事らしきおじいさんが来た。


「はい、由香里お嬢様」

「この犬に念のためワクチンを打っといて」

「かしこまりました」


 そして彼に狂犬病の予防接種と思われる注射を打たれると、僕はそのまま部屋の廊下にそっと置かれた。

(ど、どうなるんだ……?)

 僕は不安のままその場に立ち尽くしていると、彼女がひらひらが付いた綺麗なロングドレスに着替えて部屋から出てきた。


「さっ、一緒にお風呂に入りましょうねー」


 彼女は僕を優しく抱擁して、そのままバスルームに連れて行く。

 え?! ちょっ、え!?

 僕は混乱を極め、動きに落ち着きがなくなる。


「こら、じっとしてて。今から綺麗綺麗するんだから」


 そう言った彼女はしゅるしゅると服を脱ぐ。


「ワンワンワンッ(あっ、ちょっ、わっ)!?」


 と言っても言葉にはならず、裸の彼女は僕を担いで風呂場に連れて行く。その時の背中の柔らかい何かと突起物の何かの感触は終生忘れないだろう。


「はい、綺麗綺麗しましょうねー♪」


彼女は高級そうなシャンプーや石鹸で僕を優しく洗ってくれる。彼女の温もりや細やかさが伝わってくる。


「よし、終わった。じゃあ、私も洗おうっと♪」


 洗い終わった僕はすることがないので、今シャンプーしながら鼻歌を歌う彼女を静かに眺めていた。


「はい、静かで偉い偉~い。じゃあ一緒にお湯に浸かりましょう。はい、ザブーン~♪」


(はい、最高の高。めっちゃ気持ちが良い~)

 そして風呂から出ると、高級そうなお肉を食べ、彼女の部屋へ連れて行かれ、それ専用のトイレをセットし、彼女は僕を布団に入れられた。


「私がこの子を責任持って育てないとっ。おやすみ、あっ君♪」


 この家での僕の名はあっ君だそうだ。

 犬サイコー。好きな彼女の傍にいられるし、もう犬でいいんじゃないかっ?

 そしてしばらく僕はこの家で飼われた。しかし日を過ぎるごとにご主人(彼女)の顔色が良くならない。


「大丈夫ですか、お嬢様……? 一度病院に行かれますか?」

「いえ、大丈夫よ。ありがとう、もう少し待ってみる」


 心配した僕はクーンと彼女に呼びかける。


「あっ君……ごめんね。ご主人の私が心配かけて。最近私の好きな人が行方不明らしいの」


(な、なんだってーー!?)

 僕は色々ショックで驚く。彼女に好きな人がいるのも驚きだが、その好きな人が行方不明だなんて……。

 彼、死んでない? 大丈夫……?


「う、うん。私が弱きになってどうするの! 彼は呑気な顔して学校に登校してくるに違いないわ! もう少しの辛抱よ」


 そう心を切り替えて明るくいようとするご主人だった。

(そいつ、ご主人様(由香里ちゃん)を悲しませやがってー。許さねー!)

 そして有栖川邸にいついて一ヶ月、ついに由香里ちゃんは寝込んだ。


「お嬢様、お粥置いときますので食べて下さいね」

「ありがとう、じい……」


 そして僕は常に寄り添うように、日に日にやつれていく彼女の近くにいる。


「なんか事件に巻き込まれてしまったのかしら……」

「クーン……」

「……ふふ、あっ君。いつも近くにいてありがとう……」

「クーン……」

「初めて会った時、貴方の顔が犬塚君に似てたから飼ったのよ? もしかして……貴方が……犬塚君だったりしてね……?」


(え?)


「馬鹿ね……。そんなこと小説でしかあり得ないのに……」


(ちょ、ちょっとそれって……)


「犬塚君……どこかで無事でいてね……」


(え? 僕のこと……!?)

 そして疲れて寝た彼女の寝顔を見ながら、僕はいたく後悔する。

 犬サイコーなんて思って、ずっと犬のままで良いなんて考えていた僕はなんて愚かなんだ。人はいつも誰かを必要としている。こんな僕でも心配して思ってくれる子がいたなんて……。


「ワンワンワンッ。クーン(神様、いるなら人間に戻して下さい)」


 そして夜になり、彼女のベッドで寝ていると、あのじいさんの出る夢を見た。


「あい分かった。これからも善行に励みながら、幸せに暮らすんじゃぞ」


 そして翌日。


「犬塚君……」

「う、うーん……」

「……あ、あっ君、おは…………」

「あ、おはよう。大丈夫か……? ……え?」


 彼女は僕を見ながら呆然としている。それに目線がやけに高……ん?


「人間に戻っ…………た?」


 やったーと言いながら、僕は嬉しさのあまり彼女の部屋で小躍りをした。


「ご主人様やったよー! 僕、人間に戻ったよーー!!」


 僕は幸せ満載の気分だった。人間に戻ったなら、これで彼女に告は……く…………ん??? 今、どういう状況だ?

 呆然と僕を見るご主人様、そして素っ裸の僕、そして彼女の寝室で小躍りする状況……。え? やばくない……?


「あ、あの……、ご主人さ……もとい有栖川さんこれは~~……」

「………………犬塚……君……なの?」

「…………え?」

「犬塚君…………?」

「あ、はい…………」

「~~!! な、なんで裸なの!?」

「僕があっ君…」

「え?」

「あの犬がさっきまで僕でした……」

「……………………………………………………」


 彼女はまた呆然として、なにやら考えてる素振りになり、しばらくすると急に顔が赤くなる。


「え? じゃあ、いままでの……」

「うん。すべて知ってる……」


 彼女は顔を布団に潜り込ませ、周りに聞こえないぐらいのこもった声できゃーと叫んだ。


「あの、有栖川さん……」

「な、なに……?」

「僕と……その……良かったら付き合いませんか?」

「…………」


 彼女はぐずっと泣きながら言った。


「いままでの責任取ってよね……?」

「は、はいっ」

「よし、分かったわ。と、その前に…………」

「?」

「この部屋からの脱出計画を考えましょう」

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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