表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

開幕謎ポエム:大盛り

 光の降る空 闇が湧き出る地

 それが彼らの日常

 罪を背負う少年すら

 その枷から逃れることは叶わない


「嗚呼 汚れた星はとても美しい」


 瞳に映る数多の光たち

 深淵の輝きに惹かれるのは何故なのか

 地に堕ちた魂は何を想うのか


「いいえ 美しいから汚れているのです」


 それはきっと ショウネンが抱く理想の姿


 とっくに過ぎ去った未来を嘆いていた

 ――僕たちはまだ知らない


 これから訪れる過去を憂いていた

 ――ボクたちはまだ知らない


「キミはどうなんだい?」


「君と同じですよ」


 歩いてきた道に転がる屍の山

 もう二度と自分の意思を持つことはない

 肉の塊の成れの果て

 生者に向ける虚空の眼

 その意味だけは少し知っている気がした


 だからキミと

 

 だからボクと


 こんな苦痛だらけの世界だけど

 ほんのちょっぴり振り返ってみる


 温もりを知っているはずなのに

 自分以外をどうして信じられるのか

 他人であることが心地よい


 でも――

 優しさを 厳しさを 愛情を 憎悪を

 欠片を与えてくれた人たちは もういない


 優しさ 優しくすること


 厳しさ 厳しくすること


 愛情 ……まだわからない


 憎悪 僕自身


「嘘はやめましょう」


 キミは悲しそうに首を振る


 優しさ 無駄なこと


 厳しさ 無駄なこと


 愛情 無駄なこと


 憎悪 無駄なこと 


 全部いらなくて 不必要で 邪魔で 無価値で

 無駄で 無駄で 無駄なこと


「そうだね わかっているよ」


 全部無価値で愛おしい

 僕の大切で無駄なモノ


 だけど――

 例え全て取り戻したとしても

 あの頃の僕には戻れない

 それはキミを否定することだから

 キミと出会うためならば

 大切なものなんて全部失くしても構わない


 だから戻らない

 戻れない

 戻りたくない


 答えのないナニカを求めて

 永遠に退き続ける日々は退屈かい?


「それも悪くない」


 本当に?


「ああ」


 違うことなんて わかっている

 答えのないものは永遠に見つからない

 何故なら答えがないから


 空を見上げると闇が堕ちてくる

 堕ちた僕等にぴったりだ


 足元から光が溢れ出す

 堕ちたボク等には眩しすぎる


 おかしいな おかしいな

 この戸惑いすら紛い物

 創られた偽物のココロ


 僕が言葉を使うたび 世界の価値が堕ちていく

 僕が想いを伝えるたび 世界の色が朽ちていく

 キミがイノチを護っても 僕らの雨は降り止まない

 キミがイノチを壊しても 僕らは先へ進めない


 時々夢を見る——


 知らない大地に立っている

 そよ風が頬をそっと撫でる


 光も闇も存在しない

 とてもとても優しくて

 頭上に広がるのは 穏やかな青空

 全ての望みが叶えられる

 誰も悲しまなくてもいい

 幸せと希望で包み込まれている

 理想の自分になれる世界


 だけどキミはそこにはいない

 僕の傍にキミはいない

 この世界はキミの存在を許さない


 涙の流し方なんて忘れたはずなのに

 溢れるものを止めることができない


 僕はキミの代わりになれないから

 ココロの穴は ぽっかりと空いたまま

 鎖で縛られたくないなら逃げてしまえばいい

 

 誰も知らない誰かのモノガタリ

 聞いて 聞いて 聞いて


 ナニカが生まれる前のプロローグ

 知って 知って 知って

 

 永遠に訪れないエピローグ

 ――語るのは誰?


 言葉を紡ぎ 想いを抱き 糸は複雑に絡み合う

 人と人の出会い 想いと想いの邂逅

 善人などいない

 悪人もいない

 それがオハナシのルール


 キミに教えてもらったこと

 人が歩けば道ができる

 想うことで曲ができる

 失うことで歌ができる


 伝えると残る 残ると伝わる

 語ることで知ることができる

 一度でも忘れられたら終わり

 みんなそうやって生きてきた


 だったら……


 僕の中で見つけたキミの欠片

 寄せ集めたらキミはできるのかな

 忘れないうちに 残っているうちに

 そして創った僕だけのキミ


 キミと同じ髪 キミと同じ目 キミと同じ鼻

 キミと同じ口 キミと同じ首 キミと同じ肩

 キミと同じ腕 キミと同じ手 キミと同じ胸

 キミと同じ腹 キミと同じ背 キミと同じ脚

 キミと同じ肌 キミと同じ声 キミと同じ匂い

 キミと同じ口調 キミと同じ仕草

 キミと同じキミと同じキミと同じキミと同じ

 キミと同じキミと同じキミと同じキミと同じ

 キミと同じキミと同じキミと同じキミと同じ

 キミと同じキミと同じキミと同じキミと同じ

 キミと同じキミと同じキミと同じキミと同じ


 キミと同じ

 当然だ 僕が創ったキミだから


 でも怖い

 怖い

 怖い

 怖い

 どうして怖い?


 そこにキミはいないから

 こんなものはキミじゃないから

 ハリボテで薄っぺらな ただ似ているだけの幻

 僕の弱さが見せる

 都合のいい 偽物の操人形

 とっくに気付いていた

 認めるのが怖かっただけ


 ――ほら


 指で触れると塵のように崩れ去った


 そして目が覚める


 キミは嬉しそうに僕の顔を覗き込んでいた

 まるで全てを知っているように

 僕の目覚めを待っていたように


「おかえり」


「ただいま」


 どうしたのなんて聞かない

 これで十分だ

 目の前の残酷で美しい世界が

 僕たちの鏡だから


 手を伸ばしたら届きそうなキミの背中

 触れた瞬間に消えてしまうかもしれない

 指先で突くと

 キミは立ち止まって「どうしました?」と振り向く

 やっと僕を見てくれた

 それだけで少し嬉しくなる


 喉を潤すために水を汲む

 僕が飲むか それとも草木に注ぐか

 同じことだとキミは言うけれど

 もし違うとしたら?


 神さえも持て余した世界の摂理

 何度も繰り返して 

 少しずつ削れていく

 それは誰も知らない星の記憶

 あるいは誰もが知っている

 遥か未来の終焉


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ