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首なし騎士とお嬢様

作者: 灰音

「あらまぁ、どうしましょう」

『…………。』


レティは困ったように首を傾げる。自分の使い魔の首なし騎士が拗ねたように廊下に座り込み1歩も動こうとしないからだ。

広い廊下なのでさして通行の邪魔にはならないが、様々な種族の使い魔が集まるこの魔法学校の中でも首なしの黒い鎧の騎士はかなり目立つほうなのだ(しかもかなり体格がいい)

周りの生徒や使い魔達は遠巻きに眺めはするものの、またか、といった様子である。この2人のこうしたやりとりは日常茶飯事なのだ。


「騎士様、授業に遅れてしまいますわ」

『受けたくない』

「まぁまぁ、そう言わずに。楽しいではありませんか、授業」

『楽しくない』


レティが宥めても、首なし騎士はメモ帳に嫌だ嫌だと書き連ねている。


『君が居ないから楽しくない』

「仕方ありませんわ。次の授業は使い魔と別々の授業ですもの。でもまた会えるではありませんか」

『離れたくない』

「授業の間だけではありませんか。たった1時間ですの」

『無理』

「うーん、困りましたわ…」


この魔法学校は基本的に使い魔と一緒に授業を受けることが多いが、時に別々の授業になることもある。

レティと片時も離れたくない首なし騎士からしたらこれは既に拷問のようなものに近しい。


このように、授業を受けたくないという場面は他の生徒と使い魔間でも少なからず存在する。その場合の対応としては宥めて何とか連れていくか、放置するか、一緒にサボるかの三択になる(稀に先生に言いつけるというパターンもあるが割愛)

放置や一緒にサボるというのは後の内申点に響くし、何より責任が相互に発生するので一緒に反省文を書かされたりする。

如何に魔法学校に入った目的がお婿さん探しのレティとはいえ、彼女は元来真面目な性格なのでこうして宥めているというわけだ。


『一緒にサボタージュしてしまえばいい』

「それはいけませんわ。授業は真面目に受けるものですの」

『今日は不真面目になる』

「サボったら反省文書いたりしないといけませんのよ」

『君の分も私が書く』

「そういう問題ではありませんの!」


口を尖らせ、彼女にしては珍しく大きな声を出す。ただ首なし騎士からするとそれすらも可愛いと思うようであまり効果はないのが現実なのだ。


「はぁ…騎士様がここから動いてくれないと私も動けませんの。困りましたわ…」

『動かなくていい』

「今日の授業、私ね、とっても楽しみにしてましたのよ。クッキー作りますの」

『……………!?』

「残念ですわ。出来上がったクッキー、騎士様にプレゼントしようと思ってたのに…」


レティの思わぬ一言に、首なし騎士は身体を動かす。この男、非常に現金なのでレティから渡されるものに弱い。


「そんなに嫌なら、先生に言って授業をお休みするしかありませんわね…」

『やっぱり行く』

「本当に?無理しなくても良いんですのよ…?」

『クッキー、本当にプレゼントしてくれるのか?』

「勿論!だって私の大切な騎士様ですもの。心を込めて作りますわ」


花が咲くような柔らかい笑みをレティが浮かべると、首なし騎士は先程までの嫌がりようが嘘のように立ち上がった。


ちなみにこの後、レティの作ったクッキーが別クラスの異性に配り歩かれたと知り、鬼のような雰囲気で回収作業をしたのは別の話…。


お久しぶりの灰音です。とある企画で書いた短編を供養がてら掲載。

人外の使い魔は女主人に執着していますが、あくまで短編で単発作品なので伝わらないかもしれないです。

首なし騎士とお嬢様のコンビ、気に入っているのでリメイクしたりして書こうとは思ってます。

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