チュン太郎
我が家のポメがモデルですが、フィクションとノンフィクションが入り雑じったお話を書いてみましたw
笑って頂けたらいいな~
我の名はジョナトン・ノエ・ルチアーノ。
十九世紀、ビクトリア女王に飼われていたポメラニアンの末裔だとされる、由緒正しき血統書付きのお犬様である。ぴちぴちの三歳だ。
一見オレンジ一色の毛色に見えるが、額と耳、首から肩甲骨にかけて、毛根から毛の中程までは真っ黒だ。喉から胸、腹、尻にかけては純白で、パーティーカラーと言われている。我の自慢である。ふふん。
御主人は殊の外この真っ白い毛がお気に入りで、よく撫でてはタキシードのようだと褒めちぎっている。そうだろう、そうだろう。美しかろう?
我の一日は、優雅な朝の散歩、新鮮な水、丹念なブラッシング、新鮮な生肉から始まる。
カリカリ? そんなものなど我は食わぬ。
御主人は、原料が何かまったく分からぬ三種類の粉末をお湯で捏ねて小さな団子をたくさん量産し、それを手ずから我のお上品な口へと食べさせてくれる。匂いから察するに、ひとつはミルク、もうひとつは多種多様な野菜やフルーツ、更にもうひとつは豆か何かだと思う。あまりにも多くの匂いが混じっていて、特定するのは困難であろう。
次いで生肉のミンチに顆粒とオイルを混ぜたものをくれる。顆粒からは海藻や乳酸菌の匂いがし、オイルは磯臭い。しかし、我ら犬にはこの生肉と魚の混ざった匂いが堪らぬ!
はしたなくも涎が垂れ落ち、意に反して左右に振れた尻尾の勢いは止まらない。
御主人! 御主人! 早くそれをくれぬか!
むほー! この鼻を抜ける生臭さ! 堪らん! 美味いよぉぉぉ! 脂も筋も美味いよぉぉぉ!
器? そんなものは我は使わぬ。御主人の手から食べるのが当然であろう。何せ我、セレブだし。御主人カップ麺食べてるけど、我セレブだし。
新鮮な水を飲み終えたら、汚れ防止の前掛けを御主人がはずしてくれる。自慢の純白飾り毛が汚れてはならぬからな! 前掛けは必需品なのだ。お犬様はおしゃれにも気を遣うのだ。何せ我、セレブだし。
濡らしたコットンで目やにを取ってもらい、開けた窓の前にパウダービーズの大判クッションをスタンバイ。
これ、この感触が堪らん!
ぐるぐるぐるぐるクッションの上で回って、ベストポジションを見極めて丸くなる。
日向ぼっこをしながら、いつもの優雅な一日の幕開けだ。
微睡む我の頭を撫でて、御主人が慌ただしく出掛けていくのもいつもの風景。
我を置いて行くとは何事か! 御主人ーっ! 御主人ーっ!?
そんな駄々をこねたりなど我はしない。そんなお子様のような恥ずべきことなど我には不要。
だって待っていれば帰ってくると知っているのだ。帰宅した御主人が構い倒してくれるのを知っているのだ。我はお利口さんなのだから、我が儘など言わぬのだ。
「行ってくるね、お留守番よろしく、庄之助」
ぬう……! 我はジョナトン・ノエ・ルチアーノであるぞ! そのような大河ドラマに出てきそうな古めかしい日本の名など認めぬ!
いつの前にか太陽が真上に昇っていた。どうやらふて寝している間に昼になったようだ。ちゃちゃっと我専用のトイレで用を足し、寝床に戻れば庭の紅葉に雀が来ていた。
何やら赤い小さな蕾を啄んでいる。
雀殿。最近毎日のように訪れるが、それは美味いのか? ――ぬ? 季節限定の春の味覚とな? ほんのり甘い、だと? す、雀殿。それを少しばかり我にもくれぬか!? なに? 網戸があるから手渡せない? ぬうう……致し方ない。勝手に外へ出てはならぬと御主人にきつく言われているからな。網戸は開けられぬ。
べ、別に、開けられないわけではないぞ!?
雀殿、ホバリングしながら小馬鹿にするのは止めよ!
「庄之助くん。何を吠えているの?」
御主人の母上! 良いところへ参られた!
我にもあれを取ってくれ! 紅葉の、あの真っ赤な蕾だ!
それから我の名は庄之助ではないぞ! ジョナトン・ノエ・ルチアーノ―――
「うん? 雀が気になるの? ちょっと待ってね~」
刹那、パン!と耳をつんざく鋭い音がした。
我は咄嗟に走って逃げた。怖くて逃げたわけではないがな!
「これでよし。庄之助くん、もう大丈夫よ~。そんな狭いところに隠れてないで、出ておいで~」
どうやら雀殿を追い払うため、御主人の母上が柏手を打ったようだ。なんとはた迷惑な!
「あらら~。尻尾丸めちゃったのね~。びっくりさせてごめんね? いま拭くもの取ってくるから、ちょっと待ってなさい」
そう、ちょっとびっくりしただけだ。怖かったからじゃない。断じてない。
だから御主人の母上。
我がお漏らししたこと御主人には黙ってて……。
猫じゃらし様より頂けました、庄之助FAです(艸ε≦●)♪
ありがとうございます:*(〃∇〃人)*: