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叩けば治るんじゃないかな
水島春樹は一人っ子だ。
父は輝夫、母は小春。父は地場ゼネコンに勤め母はパーとに通う。
彼は虚弱体質だった。アレルギーは犬と金属で小児喘息持ち。家族は息子が風邪を引くと季節の変わり目を感じた。
「春のやつ、相変わらず夜中に寝れないままだな」
「そうね。喘息の発作が全然なくならないわ。横になって寝れないくらいだから放っておけないし、これがいつまでも続くのかと思うと…」
「あいつも小学校に上がるんだ。こんな調子じゃ学校も休みがちになるだろ」
「かといってどうしたらいいのかしら」
「思い切ってなんか運動やらせよう。お前んとこ、義父さんが剣道やってなかったっけ?」
「そうね、たしか高校までって言ってたかしら。でも大丈夫?あの子に剣道なんて」
「とりあえず近くのとこで見学させて、本人の意思で一つやってみようや」
体質のわりに性格は過敏なところのない春樹。二つ返事で入会を決めた。
「人の頭叩いてほめられるなんてけったいやな」
屈託のない愚かさで、小二の夏、春樹の体質改善が始まった。