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第六章 目覚めは夜更け

ん……




……騒がしいですね……


なんだか、体がダルいです。



頭がボーっとしてますが、私はなんとか重たい瞼をあけました。すると目の前には……



「ルルぅ!」



うわっ!な、なんだ?


猫!?



私の目の前、鼻と鼻がくっつく位の場所で、猫が私の目を覗き込んでいたのです。


「……キッ、キャーッ!」


私は思わず叫んで、猫を払い飛ばしてしまいました。


ひゅ〜んと見事な弧を描き、その猫は壁に大の字になってへばりつきました。


そのままズルズルと床に着地。


「……いっ、痛いニャ〜!ウニャ〜!!……」



そして泣き出してしまいました。


そんな事より!


「……し、しゃべってる……猫が……!ここどこっ!?」



「……ルル様」



その声で気がつきましたが、すぐ横に、おじいさんと、一人の男の子が立っていました。



おじいさんは続けます。


「……ルル様、お気を確かに。大丈夫ですか?」


「……あっ、はい、え〜と……大丈夫です。


……ここは……?」

とりあえず猫はおいときます。



辺りを見回すと、古い小屋のようです。

何だか薄暗いのは、電気ではなく、ランプのせいでしょうか。

なぜか、懐かしさを感じます。



「……やはり、覚えていらっしゃいませんか……


あっ、申し遅れました。私、ユーマ・クリービー。

ユー爺と呼ばれております。


こっちのが、孫のカノンです、ルル様」


ユー爺と名乗った、おじいさんは嬉しいような、悲しいような顔をしていました。


「……ここは光の国、シャイン。あなた様が今までいた、“境の国”と空間を隔てた所でございます」



……じゃぁ、私は来れたんですね……


「全てを御理解いただくために……まずは、伝説をお話し致しましょうかの……」


ユー爺の言葉で、カノンが嫌そうな顔をしたのを、私は見逃しませんでした。


「……では………………………………



………………


…………


……






………という事です。このとき、飛び去った大地が故あって“境の国”と呼ばれるようになったのです」




「……じゃぁ、私は……王様より偉い人って事ですか?」


「……最終的にはそうですが……」


ユー爺がちょっと悲しそうに見えるのは気のせいでしょうか。


普段の、ノーマルな私だったら信じなかったでしょう。



しかし、ここは魔法の国。


全てがアブノーマルです。



現に、今までと違う世界に来てしまった私には、信じるより他に術がなかったのも事実ですが……




「……それでは、属性テストを始めても……よろしいですか?」



私がひどく考えこんでいたので、ユー爺は、おずおずと尋ねてきました。


あぁ、なんか私には魔法属性が2つあるらしいんですね。

なんだかかなりレアな能力らしいんですよ、これが。

最初の方の悪い魔法使いとかはよくわかりませんでしたが、最後の方はまだ覚えています。




「……あっ、はい、お願いします





あぁ…。……でも……やっぱり、その前に1つお聞きしたい事があるんですが……」




「おや、何ですかな?」

と、怪訝な顔をしたユー爺。



「あのですね、ここに来た理由があるんですが。ここならそれが叶うって。

私、両親を……蘇らせたいんです!」




その瞬間、周りの空気が変わりました。

悲しみ、恐怖、そして哀れみ。


様々な感情が渦巻いているような、複雑な空気に……




「……ルル様、それを“何処”で“誰”にお聞きになったのですか?」


私は、ユー爺があまりに真剣な顔をしているので、何だか怖くなりました。



「ここに来る、いえ、この世界に来るときに“異界の扉”からですけど?


……というか、そう教えてもらったからこっちに来たようなもんです。



確かに本当の親に会ってみたい気持ちもありますが、私には、育ててくれた親も本当の親ですから」


つい聞かれてない事までしゃべってしまいました。



「……そうですか。

また、話さなければならない事が増えてしまいましたね」

この後、ユー爺は3時間ほど話し続けました。


私を運んでくれたらしい、カノン君は話しの途中で爆睡です。


3時間分をまとめると……




他者を蘇らせる魔法は“現在は”存在しない。


公の記録によると最後に使われたのは遥か昔。


伝説に出てきた悪い魔法使いが、魔界を開き、魔王が自らの軍団を作った時とされている。


現在使えるとすれば、魔界の者だけだ。


使うときには、自分の寿命の半分と自分以外の者の肉体、そして多大な魔力が必要らしい。


……って事らしいです。


「……と言うわけですので、ルル様……この魔法は禁忌となっております」


「……そう……ですか……


わかりました、では他の方法を探します。

可能性がどんなに低くとも、私は助けたいんです!」



こう決意を固めた私は、どんどん体が軽くなっていくのを感じていました。






「……今すぐにテストを行います。


今やらねば、あなた様の魔力は……“計りきれません”。



さぁ、カノン。起きなさい。


ルル様もご準備はよろしいですかな?」

壁に寄りかかって寝てしまったカノン君を起こしながらユー爺は言いました。


「……あ、あの……計りきれないって……?」



「いいですか、魔力というのは、それを操る者の覚悟や思い。つまり、その者の思念で決まるのです。


まだ大丈夫だと思っておりましたが……

あなた様の覚悟はとても強い物で、不安定です。


早くテストをして、“魔具”を決めなければ……」



そういうが早いか、ユー爺はポケットから、指輪を取り出し、自分の右人差し指にはめました。

「“魔具”については後で説明します。


ですから、はやく!」


ユー爺は私の目の前に来ると、右手を私のおでこに当てて言いました。


「……あぁ、大いなる地の神よ。その御力により、迷える者に救いの指標を授け与えたまえ。

“ガイア・サイン”」



すると、先程まで、とても軽かった私の体が徐々に重くなっていきました。


「……これで大丈夫じゃろう。

終わりましたぞ、ルル様。


結果は明日の朝出ます」


ユー爺はいつの間にか凄い汗をかいていました。


私の視線に気づいたのか、ユー爺は、ふぅ〜と溜め息をついて汗を拭いました。


「……いやぁ、カノンが手伝ってくれないので、大変でした」




「でも、ボクは起きてるニャよ?」









「……うわぁっ!


ビ、ビックリしたぁ」


私はまた叫んでしまいました。



「……ニャァ、ひどいニャ!ずっと泣いてるのに誰もかまってくれニャいし……


“シクシク”って言ってたら、いっぱい行をつかっちゃうから、静かに泣いてたのニャ!」


それからしばらく、猫は喚き続けました。


軽く落ち着いてくると、その猫はムーンと名乗りました。



「……あのカノンの魔の手から、ボクはルルを守ったのニャ。感謝して欲しいニャ。」



「……あ、ありがとうムーン」


ちょっと尊大な所もありますが、何故か憎めない存在です。


「……ルル様、先程のお話ですが……」

あぁ、ムーンの乱入で話しが途切れてしまってましたね。


「……だいぶもう遅いので、明日の朝の方がよろしいですか?」



う〜ん、聞きたいのはやまやまですが、流石にもう遅いですね。ユー爺も疲れているようですし……


外からはフクロウの鳴き声が聞こえてきます。


「……わかりました。では明日お聞きします。


今日はもう寝ますね……」


「あっ、でしたら、そこのベッドをお使い下さい。カノンのですが……」


私が寝る所を探しているとユー爺が言いました。


「でも、カノン君に悪いです」


私が言うとユー爺は微笑んで、壁際を指さしました。



そこでは、カノン君が座ったまま、静かに寝息をたてていたのでした。




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