第四章 光の国へ
……今日は変な日だったな。
明日こそ、明日こそ本屋さんに行こう。
そんな事より、うぅ〜お腹空いた。
リビングに降りて行くと、電気はついていなく暗いまま。
時計を見ると、もう9時。
……母さんたち遅いな……
あまり親に好まれていないとわかりながらも、やはり心配してしまいます。
普段は遅くなる時はメールしてくるんですがね。
……テレビでも見ますかぁ。
今日はあんまり見てないし……
そう思い、電源を入れます。
するとちょうどニュースをやっていました。
そして、私はある事を知ったのです。
後々、知らなければ……
『え〜只今入りましたニュースによりますと、今日午後8時頃、ニュータウンの交差点で乗用車の玉突き事故が発生致しました。
そして、乗用車に乗っていた山崎隆一さん、その妻の涼子さんが病院に運ばれましたが、まもなく死亡しました……』
は?
……うそ
は?
何言ってるの?
母さんたちが……
死んだ……?
……うそだ……
昨日まで……あんなに……
笑っていたのに……
…私は本当に……
………独り……
あまりにショックで涙が出ませんでした。
何も考えられずに玄関に向かい、裸足で外に走り出します。
そしてすぐに、
…ゴンッ!
「……っ」
何かにぶつかりました。そのせいで私は尻餅をついてしまいました。
顔を上げるとそこには……
“異界の扉”があったのです。
異界の扉は言いました。
『痛ぇっ、
って何だよ、お前か……旅をするのか?』
扉を見上げ、声を聞いた途端に今まで溜まっていたものが、津波のように押し寄せて来ました。
「……母さんが……父さんが
……事故でっ……ひっ、うぁ〜ん!っ……うっ……」
私は泣き出してしまいました。
すると私の心中を察したのか扉は言いました。
『……そうか……辛いな……ならば、なおさら旅に出ろ。
泣くな!……あっちには、死者を復活させる術があると聞く』
「……あっちって……どこ?死者をって……」
『光の国。シャイン。お前には、そこへ行く資格がある』
「……どういう事ですか?資格って……何?」
『シャインには魔力のある者しか行けない。だが、お前にはそれがある』
魔力なんて……私は……だいたい、この世界にそんな物あるわけないじゃない。
そう言おうと思ったが、言えませんでした。
なぜなら扉がこう言ったからです。
『お前のその翼。
それは限られた血族にのみ与えられる。そしてそれは魔力の塊だ』
信じられませんでした。
私に魔力があるなんて。
気がつけば涙も止まり、扉の話に聞き入っていたのです。
扉は話を続けます。
『……そもそも、この扉も魔力が無ければ見えないしな』
……なるほど……
だから誰も気づかなかったのですね。
『……それで、どうする?行って運命を変えるか?それとも、ここで泣いて終わるか?』
……扉よ、だいぶキャラ変わりましたね………
既に私の心は決まっていました。
「……行く!!
私はその世界に。
母さんや父さんを取り戻せるなら、わたしはその世界に行く!!!」
『良い瞳だ。ならば開くとしよう』
扉は自分の声に合わせ、開門しました。
向こう側は凄まじい光で見えません。
ん?背中がもぞもぞする。
背中を見ようと首を捻ると、翼が巨大化していたのです。
背中は全て、さらに太もものあたりまでその大きな翼に覆われていました。
『早く行け。開いている間は魔力のない者にも見られてしまう……』
扉に急かされ、私は一歩、また一歩と扉に近づいて行きます。
その時、ふわっとした物が足元を通り抜けました。
近所のポッチャリしたノラ猫です。
『……ほら、猫が入っちゃったじゃないか……』
あぁ、もぅ……わかりましたよ!
遂に、私はこの世界を旅立ち、異世界への一歩を歩み始めました。
『行ったか……。
あいつなら帰ってこれるだろう。
結構な魔力持ってたし、玉も持ってたからな』
そう言うと門番は暗い闇に溶けるように消えていった。
そしてその頃……
シャインの山奥。
月が高く登り、梟の鳴き声が夜の闇を強調している。
そんな山道で一人の少年が、倒れている少女を発見していた。
物語の歯車は動きだした。
歯車は止まらない。後にかみ合わなくなったと思っても、それは虚構の上に成り立つ砂上の楼閣。
初めからかみ合ってなどいる訳がない。
物語の輪は閉じるのか、螺旋のように伸びるのか……