第二十八章 戦い
「キャー!」
門に近い家から悲鳴が聞こえます。
それと同時に逃げ惑う人々。
皆一様に城へと走って行き、その後ろを追うワニのような怪物達。
ゴツゴツした肌に鋭い牙。鈍く輝きを放つ鉤ヅメが捕まえた人々を切り裂いています。
「……もう破られてんですか!?いや、きっと誰かが手引きしたのかも……」
とにかく、飛ぶのはここまで!
「……出よ、蓮扇華!」
ワニ目掛け、垂直飛行で突っ込みます。
当たる瞬間に蓮扇華を取り出し、ワニの腕を切断。
着地と同時に横に薙払い、間合いを取ります。
「……早く逃げて!」
後ろに転がった男性に言うと、どうやら無事なようで、切り裂かれた部分を押さえながら走っていきます。
「ちくしょ〜、痛ぇじゃねぇか!」
ワニは喚いたいますが、顔は痛がっていません。
ニヤニヤして、長い舌をベロベロ出しているのが、家からもれてくる光でわかります。
「あ……!」
ワニがニヤニヤしていた理由。
それは……腕が……生えてきました。
……再生能力です。「気持ち悪いですね……」
生えた腕はヌラヌラと気味悪くひかり、体液が糸をひいて垂れていきます。
ドドドドド……
地響きが門の方から聞こえてきます。おそらく……城壁は落ちたでしょう。
とにかく時間を稼がないと……
「……風よ、纏いて敵を撃て!
真空の刃よ、彼の者を引き裂け!」
風弾にプラスアルファで真空波です。
時間差で攻撃したので、避けるのは至難。
次の敵はまもなくでしょうか……
フッ……
え?
風弾のみならず、敵を襲おうとしていた風は文字通り消えてしまいました。
一体……
「いやぁ……いい微風をありがとな」
そよ風?言わせておけば!
でも何で……?
「燃え盛る闇の炎よ、消し炭にしちまえ!ダークフレアブレス」
夜なので見にくいですが黒い炎がワニの口から吐かれています。
そしてそれは空中で広がり、網で捕らえるように迫ってきます。
「……ウィンドカーテン!」
これでなんとか……いやダメ!
炎はウィンドカーテンを消し、逆にメラメラと燃え盛り、近づいてきます。
「くっ……」
翼を羽ばたかせ、後退しなが空中へ。
火は風に強い。例えマスターでも自然の法則には逆らえません。
カノンさえいれば……
マスターとは言わずとも水の使い手がいれば瞬殺。
ですが……私にはまだ光があります!
「……光蝶、バタフリー!」
「フレアランス!」
私が光蝶を放つのと、敵のフレアランスの完成は同時でした。
先ほど出したダークフレアブレスを形状変化させて、無数の槍としてきたのです。
私が初撃を避けると読んでたとしたら、相当頭のいいやつです。
身体を捻って槍を避け、空中回転を行って体制を整えます。
フレアランスが僅かに髪をかすったらしく、焦げ臭いです。
通り過ぎる瞬間、凄まじい熱を頬に感じました。
「永遠なる凍結を!ブリザード!」
そこへ待ち望んだ声が。
カノン!
ワニを見ると、私の蝶がまとわりついているところに、カノンのブリザードをモロに受け、凍りついています。
フレアランスやダークフレアブレスも消え、完全に制圧したようです。「ルル、計算が狂った。
城門破壊される前に敵大将を制圧する予定だったんだけど……」
カノンは右手を前に突き出し、クレイモアを出現させます。
カノンの武器、アイスインペリオ。
氷を操り服従させる者が扱うのに、そのままのネーミングです。
「……敵にな、いないんだよ。総大将の魔将が……」
「え……」
魔物の中で、特に力を持ったやつは魔将と呼ばれ、軍の中では総大将となります。
普通の戦いでは、総大将を倒せば勝利となりますし、総大将の力量で兵の数も増えます。
でも……それがいないとなると……
ドドドド……
「とにかく今は敵を排除しないと」
カノンは地響きの発信方向に向き直りました。
土煙をあげ、ついに押し寄せて来ました!
四つ足歩行の亀と蛇を掛け合わせたようなやつから、ブクブクと膨れ上がり、毛むくじゃらの怪物まで様々です。
「……死ぬなよ?」
カノンはアイスインペリオを握りしめ、敵に向かって疾走していきます。
「愚問ですね。私は畳の上で死ぬ人間なんですから」
私もカノンの後に続きます。
蓮扇華を縦横に振るい、風の刃を敵目掛けて無数に放ちます。
「ぐがっ!」
刃はコウモリのような怪物に当たると、スパッと腕を持っていきました。
向こうにしてみれば見えない剣で斬られたようなもの。
そのせいで少し怯みが生じます。
その瞬間をカノンは見逃しません。
まるで重力を断ち切ったかのように、軽々と跳躍すると突っ込みながら、上段から振り下ろします。
初撃で確実に仕留め、血を浴びる間もなく、着地と同時に右へ薙払い、間髪いれずに逆手で死角にいる敵を貫きます。
あっという間に4体が動かぬ骸となりました。
……やはり強いですね。
でも数が多すぎます。
そうこうしていると、更に5体が切り倒されました。
だいぶカノンの息も上がっています。
街の入り口は4つ。そこから同時に攻められているとすれば、援軍は来ないかもしれません。
「……カノン、援護して下さい!私が出ます!」
私も……覚悟を決めなくては……カノンはバックステップで間合いをとると、すぐさま詠唱を開始し、魔方陣を展開。
集中し、素速く確実に詠唱しているカノン、その髪は地面から風が吹いているように逆立っています。
よほど強い魔術を使うようです。
私はというと、カノンが退いて空いたスペースに飛び込み、すぐさま蓮扇華を振るいます。
「……蓮桜舞武!」
蓮桜舞武は回転系の技。
全ての技をいなし、同時に桜の花が散るように魔力を散布して攻撃する技。
「ルル!飛べっ!」
カノンの魔力が最高潮に達したとき、私に呼びかけました。
「……悠久なる水の流れ。光と闇の大樹が交わる時、我が願いを聞き入れよ。
時空召還魔法!赤き大蛇、バナスと愚煉の炎!」
ドンっ……
私が飛び立つと同時に地面からいくつも火柱がほとばしります。
……前髪焦げるかと……
「……ぎゃぁ!」
下にいる敵は断末魔を残し、灼熱の炎に消えていきます。
あれ?
上からみると、まだまだいると思われた敵は少なく、100体に満たないようでした。
火柱が闇夜に吸い込まれるように消え去ると、おびただしい死体の中に、赤い大蛇の影が見えた気がしました。
「……あれ?」
カノンも異変に気づいたようです。戦場に全く適さない間の抜けた、緊張感のかけらもない声。
カノンは私と敵を交互にみると、無理やり納得したようで、アイスインペリオをしっかりと構え直すと、残党に向かっていきました。
大方、私が上空から攻撃したと思ったんでしょうが……
この少ない人数では、街の中を探索するスパイのような役割しか果たせないでしょう。
もし、違うとすれば彼等は少数精鋭。最強に集められた者達のはずですが……
……弱すぎでしたよね?明らかに……
カノン相手ならわかりますが、私と同レベルとか……雑魚も良いとこです。
ザンっ……シュパッ……
そんな事を考えていたら、カノンは一片の慈悲もなく斬っていきます。
絶命の血が吹き出る前に次の敵を切り倒し、突き刺し、蹴り飛ばしていきます。
……戦闘の神の生まれ変わりですか?あなたは……「……で?」
僅かに顔にかかった血を拭いながらカノンは言います。
私が聞きたいですよ、そんなん……
「……空から見てきます」
明らかにカノンの目はそれを命令していました。
まぁ、確かにそれが一番速いですし、確実ですが……私だって今の戦闘でかなり疲れているのに……
ぶつぶつ文句を言いつつも、翼を広げ一気に上昇。
ロングコートがバタバタとはためいています。
平安そのものの街に比べ、闇の向こうには篝火が焚かれ、昼間のような明るさです。
上空は風が強く、煙の匂いが届いています。
「……ん〜、いますね。でも……城壁は無事……ですね。門も問題ない。
え……あ、あれは!」
私はすぐさまカノンの下へ降下を開始しました。
敵の軍勢の中には、今までなかった、ゲームでしか見たことがないような攻城兵器がいくつも見えたのです。
おそらく今までの敵は私達と同じく時間稼ぎ。
結果として、今、骸となっている彼等は戦いに負け、勝負に勝ったのです。
「……何だと?
それで……どんなのがあった?」
カノンに言うや否や、その状況を受け止め、対処しようとする姿は立派です。
「そうですね……巨大な梯子が沢山。それから投石機、巨大な矢を発射できる装置とかですね」
「なる……いや……そうなると……………だが……」
カノンは顎に手をあて、ぐるぐる歩き回りながら考え始めました。
「やはり……ルル、今から言うのは悪魔で仮説だからな?
今までの奴らの真の目的は時間稼ぎで間違いないだろう。
そして敵はその時間を使い、城壁を壊さないで侵入しようとした。この街を支配下に置いたのち、ここを拠点にしようとしてたなら話は通る。
城壁を壊すのはもったいないからな。
だから奴らは……ウィズミックの制圧。及び、未来の才能ある反逆者達の芽を摘むこと。つまり学園の生徒の抹殺だ」
……この読みの深さ。論理性。
境の国に来たら探偵になるべき才能の持ち主です。
「だとしたら……」
私はハッとし、カノンを見ました。
「……あぁ、学園が危ない」
確か切り札のラザフォード君が学園の要となっているはず……
「……ルル、急げ!」
カノンはもう走りだしています。
私も飛行し、速度をあげると真っ直ぐに学園を目指します。
その窓には光はなく、有り得ない程の静けさに包まれています。
タタタタッ……
ふと足音が近い事に気がつき、下を見ると、カノンが屋根から屋根へと飛び移っていました。
高所恐怖症のカノンには考えられないですね。
それほど切羽詰まってるんですよ。
ふと、叫び声が……
空耳か……?
いや、違う!
学園に近づくにつれて声は大きくなり、あちらこちらで魔法の光が飛び交っています。
そして血の臭い。
時折混じる、金属音。
どうやったか知りませんが、敵は学園の入り口まで侵攻していました。
あ!
「風よ集いて敵を討て!」
剣を飛ばし、今にも兵士を殺しそうなカエルのような怪物に風矢が幾本も突き刺さります。刺さると言うより、打ち抜くと言いますか。
風なので当たれば当然消えます。
まぁ衝撃波ですね。
「日天流昇風破陣!」
ラザフォード君です。
学園入り口をほぼ一人で食い止めています。
今は長剣を使って技を放っています。
どういう事か、速度がカノン級。
つまり常人離れした速度で剣を操っているのです。
……これが気ですか。
気は身体エネルギー。
自身に作用する力は魔力の比じゃありません。
ですがそれを扱う才能は半端じゃない。いきなりやれと言われて出来るものなのかはわかりませんが、無理ですよね、普通。
「……烈線松緑針」
今度は2本の短剣で松の葉のように技を繰り出していきます。
ちょうどカノンも到着し、その凄惨さに身を硬くしました。
ですが、すぐに我に返ると、ラザフォード君の横に飛び、学園入り口を背にしています。
この双璧を抜くのはだいぶ厳しいでしょう。
「風よ纏いて敵を討て!」
私はせめてもの援護に、空中から風弾を雨あられと打ち込んでいきます。
ですが打っても打っても数が減りません。
先ほどのカノンの術を使えば楽ですが、あれには時間と大量の魔力を使います。
次発動したら、カノンの魔力は尽きるでしょう。
私が不殺を諦めれば簡単に乗り切れるでしょうが……
チラッと視界に入る限り、カノン達以外は明らかに押されています。
生徒は実戦にはなれてないらしく、大半の生徒は超遠距離、学園の中から攻撃しています。
当然殆ど当たりません。
頼みの先生も、ピンク色の服を着た、猫耳の人位でしょうか?
軽いフットワークで敵を翻弄し、鋭い爪で絶命へと追い込んでいきます。
主にこの人しかまともに近距離でしか戦えないようです。
……私も…………行くしかない……ですね……
女には戦わなきゃいけない時があるんですよ。
でも不殺は守ります。
そのせいで仲間が傷つくなら、私が代わりに傷つきましょう。
盾になりましょう。
例え、私の命が絶たれようとも……
覚悟を決め、蓮扇華を広げると、敵の真ん中に降下を開始しました。ヒュンっ……
耳元で風の切れる音。
最初に気づいた怪物が、弓で射てきた事を皮切りに、今じゃ滅茶苦茶に狙われています。
もちろん、蓮扇華でかまいたちや突風を巻き起こして、ある程度は防いでいます。
ですが、それらをかいくぐって腕に2本、脚に1本が突き刺さっています。
あと少し……あと少しで対等にやれる。
あと少し……
今だ!
地面に降り立ち、魔力を一気に練り上げ、解放。
それに伴う強烈な光で一瞬の虚を生み出せました。
ここです!
「烈風獅子憐華!」
近距離でかまいたちを起こしていくこの技。
蓮扇華自体、剣並に切れ味抜群。
ですが、剣は避けられれば終わりです。
その点、この技の凄いところは避けても当たるということ。
体力は使いますが、蓮扇華自体に魔力が込められているため、私の魔力は使いません。
少しずつ、本当に少しずつ周りの敵は倒れていきます。
矢を射かけられなくなった分、ある程度楽ですが……
じんわりと血が失われているのが、衣服の重みから伝わってきます。
思いのほか大きい血管を傷つけたみたいです。
矢は刺さったままですが、抜いたら血が吹き出るでしょうね。
「……はぁ!」
ちょうど猫耳の人が私の方に突き進んできて、何故か背中合わせに。
……武器持って無いんですよ。防具……まぁ私も着けてませんが、猫耳さんもです。
「ちょっとあんた!血ぃ出てる!」
猫耳さんはチラッと目の端で私を見ると、その大きな瞳を更に大きくさせました。
「……日常茶飯事なんでお気になさらず」
「そうは言って……もっ!」
強いですね、猫耳さん。
私と話ながらも、敵を警戒し、寄って来た者へ手を猛烈な勢いで突き出し、押し出された空気で吹き飛ばします。
単純な体術を極めるとこうなるんですかね?
「……強いですね、猫耳さん」
「猫耳?私はスワリスだ。
あんたもな!」
私はというと、かまいたちは止め、魔術無しで戦っています。
最初の魔力爆発。あれは失敗でしたね。
いくら魔力なしで良いと言っても、あの舞はしんどいです。私とは対称に、スワリスさんは軽いフットワークで自分の何倍も大きい相手を蹴りあげていきます。
蹴りあげ、自らも空中に跳びコンボを決めて地面に叩きつけ……
この人が味方で良かったです。
身軽な体を最大に使い、軽業師のような動き。
ガキィ……
「……あ……あっぶない……」
注意が薄れてきましたね。
振り下ろされた剣を閉じた扇をクロスして受け止めましたが……
押しが強い……
一人に構ってなどいられません。
そうこうしてたら、他の敵の良いカモになってしまいます。
「……ぐぼっ!」
私と鍔迫り合いを演じていた鹿みたいな怪物は変な声をあげ、呻きながら倒れました。
ゴトっ……
転がったのは赤ん坊の頭大の石。
「ぐはっ!」
「ぎゅ……」
「……かっ」
今や雨のように降り注いでいます。
一体どこから?
「……兄貴ぃ!ご無事でぇ?」
見た目、明らかに柄の悪い兄ちゃんが一段と高い屋根によじ登り、手を振っています。
「……裏の者達、全員が味方ですぜ!」
見回せば、周囲の屋根屋根には彼の仲間のような方々が。
手に手に石やら椅子、植木鉢など、とにかく重そうなのを持っています。
「……ウィーク!上から見て、あとどれくらいだ?」
カノンの吠えるような声。
周りの喧騒を貫いて届きます。
「1000もいません!
街の外に群がっていますが、軍が辛うじて止めています!」
1000!
それなら、この辺りにいるだけ。
一気に片付けますよ!
「スワリスさん!30秒時間を稼いで下さいますか?その間に完成させますから!」
「任せ……ろっ!」
スワリスさんがクルクルと私を守るように動きます。
スワリスさんの返答前に、私は呪文詠唱を開始していますがね。
「……光の導きたる扉、そこから生まれる聡明たる歌声、破邪の鈴の音。天空の使者、落ちる事なき太陽の力を。
エバーライトウィング、光の風矢!」
白い陣が私を中心に展開。
そのまま可能な限り、大きくしていきます。
「……おい!まだかっ!?もう経ったぞ!」
せっかちですね、スワリスさんは。
ですが、御安心を……
既にこの場所いっぱいに魔力の域を広げました。
「悪しき者を滅ぼせ……発動!」
両の手を地面につけ、一気に魔力を流し込みます。
すぐに体が、だるくなり、頭がクラクラしてきます。まるで強い貧血のように。
うぅ……視界が暗い。
ですが、術は成功です。
闇夜が白い光で割れ、そこから純白の羽根が矢のように降り注いできます。
およそ羽根では考えられない速いスピードで……
「……ぎゃぁっ!」
次々に羽根は的確に敵の心臓を射抜き、バタバタと倒していきます。
「……うらぁ!」
あ……マズい……
まだ無事な怪物が、私に剣を向け、振りかぶります。
とっさに目をつむると走馬灯が……
私には武器はなく、蓮扇華も術発動前に消してしまいました。
メキッ……
ドンッ…………
え?
目を開けると、そこには微笑みを浮かべたカノンが佇んでいました。え?
えぇ?
周りには倒れた怪物。
そしてある壁には巨大な穴。
「……軽く蹴っただけなんだけどな」
全く……あなたって人は……
どうやら大したケガもないようで、私の方が重傷なくらいです。
「……お前、不殺を貫くんじゃなかったのか?」
はっきり言いますね、まぁ良いですが……
先ほど私の頭に唐突にジュピターの声がしたんです。
「……光ならば、その者は天に導かれ、新たな輪廻を歩むだろう」
「……は?」
「わかんないなら良いです」
カノンに背を向け、スワリスさんの所へ。
スワリスさんは肩で息をし、だいぶつらそうです。
「大丈夫……じゃなさそうですね?」
「全くだ。私はここで、リタイアだな……」
猫耳には元気がなく、クタッとしています。
そのままスワリスさんもグッタリと横になりました。
よっぽど疲れたんですね。
目立った傷もないようなので、一旦放っておきましょう。
「さぁ、カノン、城壁へ行きますよ」
「つかれた……」
バカ言ってんじゃないっすよ!
私なんて、魔力爆発をして、上級魔術使ってんすよ!
「ラザフォード、行って来い」
鬼だ。あいつは鬼ですよ!
初めての戦闘で、ラザフォード君はアドレナリン出まくりで、全然元気ですが……
「……んじゃ、馬持ってきますよ」
ラザフォード君は怪物を飛び越え、城の裏手に走っていきました。
気が利きますね、彼は。
「……で?何でだ?」
ラザフォード君が見えなくなると、寝そべったカノンが唐突に聞きました。
「……何でって?」
「光がなんちゃらってさ……」
あぁ、その事ですか。
引きずりますね、あんたも。
「……殺したんではなく、魂を解放したんです。魂は天へと上り、新たな魂となり現世に戻ってくるのです」
これが輪廻。
その中で、光の魔法は魂をより良い形に昇華させます。
次に生まれるならば、異形ではなく、永久の幸福が得られますように……
「……まぁ、なんにせよ、助かったからいいか」
何なんですか、あんた……