第十四章 王都〜セントラル〜
はい、所変わってセントラルです。
あの後、つまり戦いの最中に私は意識を失ってから、先程まで寝ていたそうです。
約10日間も……
寝る子は育つと言われますけどね……
今はまだ私はベッドの上で警備の衛兵さんが、カノン達を呼びに言ってる所です。
例によってムーンはいますが……
では、衛兵さんに教わった、セントラルの予備知識をご披露致しましょう!
まず、外観からですかね?
セントラルは光の国のほぼ中央にあるラリー砂漠の中心に位置しています。
つまりこの大陸の中心ですね。
あぁそもそも、この国は四方を海に囲まれ、東には山脈があるらしいです。
そんなセントラルの中央に、今いる王宮があり、それを取り囲むように円形の街並みが広がっています。
街は迷路のように入り組んでいるそうです。
ですが、緑を残そうという運動が盛んで最近では植林がブームらしいです。
まぁ、あとはドデカい公園があるとか、私の元いた世界と殆ど変わりませんがね。
それにしても……この部屋……
ハンパじゃないですね。流石は王宮……
至るところに彫刻が施され、床は大理石。
そして、天井の高さが普通の家の2倍、広さは……止めましょう。
貧乏な庶民には恐れ多い場所です。
あっ……
外が騒がしいですね。カノン達が来たんでしょうか……?
ムーンがその騒がしさで起きてしまったようです。
耳をピーンと立てて周囲を伺っている……フリをしています。
ガチャッ……
扉が開くと、王冠をつけた威厳ある人を先頭に、色んな人がなだれ込んで来ました。
私のベッドのすぐ近くまで来ると……
突然、カノン以外が片膝ついて平伏してしまいました。
カノンも一瞬遅れてユー爺に引き倒されましたが……「……失礼致します。突然のご無礼をお詫び申し上げます。
私、この国を預からせて戴いております、ティーク・ド・ヴァインと申します」
やはり、王様ですか……
王様に、いえ沢山の人に、それも明らかに目上の方に平伏されると……やりづらいですね。いろいろと……
「……あの……王様、他に言葉が思いつかないのですが……面をあげぃ!」
言った後、激しく後悔し、顔を下に向けてしまいました。
きっと、怒られるだろうな……
しかし……
「ははぁ!」
私がズッコケたのは言うまでもありません。
「……なんか……すみません……」
何故か謝ってしまいました。
でも……
「……は?」
王様を筆頭に、皆さんの頭上にクエスチョンマークが浮かんでいるように見えます。
一同揃って首を傾げ、間の抜けた顔を……
うっ……イメージが……
唯一?まともなユー爺とカノンはサッと立って私の方へ。
ユー爺は王様に耳打ちし、カノンは私のすぐ横まで来ました。
「……大丈夫か?
なんか体に異変とか……?」
私の顔の高さまで屈んでいるカノン……
ちょっとドキッとしちゃいまして……
「……だ、大丈夫ですっ!」
声が裏返っちゃいました。
まぁ、実際、ちょっと頭痛と吐き気と体のだるさを除いて、いたった健康体ですから。
だから……だから……そんなに涙ウルウル目で見ないで下さい!
すると、カノンの後ろに2本の猫の手が……
「……ルルに何するニャァ!この、変態!!」
ガリガリガリガリッ
カノンは噛み付かれ、ひっかかれの大惨事です「……おぉ、そうでした、そうでした」
ユー爺に耳打ちされていた王様はポンッと、手を打ちながら言いました。
「……では皆の者、ルル様がお疲れになってしまう。そろそろ、お暇しては如何かな?」
にこやかに皆さんを見回して言いました。
「そうですね」「では、ルル様」「お大事にです」
皆さんが口々にお見舞いの言葉を掛けて出ていきました。
「……さて……」
皆さんを見送り、こちらを向いた王様の顔にハッとしました。
先程までの間の抜けたアホ面からは到底想像出来ないような、威厳たっぷりの顔だったからです。
結局今部屋にいるのは、私、カノン、ユー爺、王様、そしてムーンだけになってしまいました。
しばしの静寂の後、王様が口火をきります。
「……まず、ご無事で何よりです。
義父から伺った所、ルル様は……ご両親を……蘇らせたいとか……」
「はい。でも、それは禁忌だと……
……今、“義父”って言いました?」
すると王様は困ったような顔をして言いました。
「……そうです。
うっかりバラしてしまいましたね……
ここにいるカノンは私の息子です。
そして、私の妻の父が……
まぁ、あとでゆっくりと……
話しを戻しますよ?
ルル様、あの術の制約は御存知ですね?ですから……」
「大丈夫です。私は別の方法を探します。いえ、探し出して見せます!」
「………」
王様は口をポカンと開き、私の言った内容が理解出来ていないようでした。
「……ホホッ、それでこそルル様じゃわい。わかりました!わしもお手伝い致します!」
ユー爺は善は急げとばかりに準備に行ってしまいました。
「……私らも、国を挙げて御支援致しますよ。
ただ……」
思わせぶりな王様の台詞です。
「……ただ?」
「……恐らく、魔界の者達との戦いは必至。しかし街の警護もあります故、余りルル様の護衛に兵を割けないのです……」
なるほど……そうですよね。
「……大丈夫だ。
ルルは……俺が守る……」
カノンの言葉って、かなり……
しかし、カノンの方を向いてみると、言葉とは裏腹に複雑そうな顔をしていました。
「……立派になったな……」
王様は目頭を押さえながら言いました。ここで、ふと思いついた疑問を王様にぶつけてみます
「……あのぉ〜、魔界って“開いた”んですよね?」
「……はい、ですから護衛が……」
「いえ、そうではなくて。
すごくバカな考えですけど、“開いた”んなら、“閉じれ”ばいいんじゃないですか?」
ピシッ……
なんだか空気が……
「……あの……そんなに変な事ですか?」
王様はただ一言言いました。
「……今すぐ議会を開きます……」
そして、そそくさと出て行きました。
その後……
「……ルル、すげぇな。天才だな……」
「凄いニャ!ルルは凄いニャ!」
2人?に褒められると、照れますね、はい。
でも……こんな簡単な事に気づかない人達って……
それに、先程からの国会って……
その後の王宮は大変な騒ぎでした。
まず、偉い学者さんが呼ばれ、魔界を閉じる方法の話し合いです。
これにはユー爺も呼ばれました。
まだまだ若い者には負けんと、意気込んで会議室に向かったそうです。
それから、私がシャインに帰ってきた、という事も一大事件のようでした。
それもそうなんですよね。
だって元々、“境の国”は伝説だったんですから。
“伝説が現実となり、また新たな伝説が生まれた”が、今年の流行語に間違いないと、カノンは熱弁を奮っているのを、私は幾度となく目撃しました。
ムーンは街中や王宮を探検するのが日課で、様々な噂話に精通しているようです。
そして、会議が開かれている約5日間、私が何をしていたかと言いますと……「……ハァハァ、ちょっ、ちょっとタイムです……」
「何を言っとりますかぁ!ほら、立つのです!」
魔法の本格的な訓練です。
指導して下さるのは、ユー爺の昔の同僚さんだそうで、名前はトニー・ピースさんです。
自称76歳のお爺さんですが、20年ほど前からずっと76歳と言い続けてる変わり者です。
体は筋肉質で若々しいのですが、白髪はどうにもならなかったようですね。真っ白です。
この国の王に仕える、公務員のような方々は皆さん同じローブを着ています。
ユー爺の愛用ローブと一緒のヤツです。
「何度も言いますが、風のマスターの基本魔法は3つです。“飛・天・見”ですぞ!
人や物を飛ばす魔法。
天候を変化させる魔法。
遠くの物を見、伝える魔法。
心に従うのは当然ですが、自分で従うべきモノも創らねばならぬのです」
簡単に言うと、考える前に行動できるようにするって事らしいです。
確かに、いちいちシルフを呼ぶのは大変ですし……
「……ルル様は自分や、自分の魔力を飛ばすのは既に出来ています。後はその応用です」
今、私がやっているのは、物体を浮遊させる事です。
やり方は幾つかありますが、今は物体が浮くイメージを強めて、浮かすという、一番初歩的なやり方なんですが……
「……まだまだ、思いが足りません。もっとイメージを強くするのです」
はぁ……
やってはいるんですが……
「……わかりました。じゃぁ別のやり方でいきます」
私が半日かかっても小石一つ浮かべる事が出来なかったので、遂にピースさんは言いました。
「……やり方はまだ有りますから……」
溜め息混じりの声が、グサグサと突き刺さります。次のやり方は、かなり難しい理論でした。
物体の周りの気圧を魔力で下げ、その時に発生する風で浮かせるという、なんともわかりずらいやり方です……
ですが……
「……一発成功ですか……」
「……一発成功ですね……」
小石はフワフワと浮いています。
半日かけた私達の努力は……
泣きそうなピースさん。それもそうですよね。
私も泣きそうです。
「……ルル様は“天”もほぼ習得した、という事になりますね……」
ピースさんの言葉には何故だか棘があります。
きっと、自分が教える前にできてしまった事が悔しいんでしょうが……
「……何故ですか?」
聞きたい事は素直に聞くのが私のモットーです。
「“天”のタイプは、天候を変化させる魔法です。
天候の変化、つまり雲を操る力を指します。
雲のでき方を知っていますか?」
舐めないで下さい。雲は……
……あれ?
「……ハァ、簡単に言いますと、雲は先程やった気圧の変化により発生します。
低気圧の場合、雲が発生し、高気圧の場合は雲が消滅します。
後は、その応用です。温度変化で嵐になったり、吹雪を扱う事も出来ます。
ただし、自然を操るわけですから膨大な魔力が必要ですが……」
なるほど……
もっとしっかりと授業を受けておくべきでした。
「……この国にも科学はあります。だいぶ遅れていますが……
魔法と科学は相反する物と言われていますが、私は近しい物と考えているのです」今の言い方だと……もしかしてピースさんは……
「……ピースさんはこの国の人じゃないんですか?」
この時、いつも厳しそうなピースさんが私の前で初めて笑顔を見せました。
「……よく気づきましたね。私は元々、時空を旅する者でした。
あなたの猫、ムーンとは昔会った事もあるんですよ」
……時空って……何でも有りですね……
私の考えを見破ったのか、ピースさんはニコニコしながら、そうですね、と言いました。
「まぁ色々あるんですよ。主に私は過去から未来に向かって旅するんですが、たまにパラレルワールドに行ってしまう事もありますね……
今回はパラレルワールドと比較してって事です。あと、異世界の事はオフレコですよ?」
どこか悲しみを含んだ顔をしています。
私はこの話題に触れぬよう、今日は終わりましょうと提案しました。
「……そうですね。今日はもう終わりますか……
今日の事をしっかりと復習しておいて下さい」
辺りは既に暗く、コウモリが飛び交っています。
ピースさんに視線を戻すと、もういませんでした。
速すぎです……
さて、私も戻りますかぁ……
私は、のんびりと部屋への道を歩き始めてました。
部屋につく、そのすぐ前の角を曲がると、部屋の前にユー爺が椅子に座っていました。
どうやら寝ているみたいです。
コックリ、コックリ、船を漕いでいます。
起こさないように、そぉ〜っと扉を開けると、予想に反して、ガチャっと大きな音がしてしまいました。
「……うぉう!ドルフィンキック!
……はて?」
ユー爺は変な声を出して飛び起きてしまいました。
……一体どんな夢を見ていたんでしょうか……「……おやルル様、彫刻は終わりましたか?」
寝ぼけ眼で尋ねてきますが……無視ですね。付き合ってられません。
「……どうかしたんですか?会議は?」
ユー爺は辺りをキョロキョロ見回し、ようやく理解したようです。
「……あれまっ。
失礼しました……
会議の結果をお伝えしたく参ったのですが……どうにも眠くて……」
頭を掻きながら恐縮しています。
「……まぁ、ここで話すのも何ですし、部屋に入りますか?」
その言葉を待っていたと言うように、満面の笑みで是非っと元気よく言いました。
「じゃあ……邪魔じゃな。この椅子……ていっ!」
ユー爺は袖から鉛筆のような筒を取り出し、その先を椅子に向けました。
すると、バシュッという音がして、椅子が筒に吸い込まれました。
私が目を白黒させているのにも関わらず、ユー爺は気にも留めずにサッサと部屋に入ってしまいました。
「おや、ルル様、どうなされました?
そんな所におりますと、風邪ひきますぞ?」
既に我が物顔で、部屋の隅にある酒棚から一本取り出しているユー爺。
「……え……あ……はい」
とりあえず私も部屋に入ります。
まだ秋口とはいえ、夜は冷えますから……
実は私、寒いの苦手なんですよね。
そんな事より……
「……さっきのアレは何ですか?」
「アレと言いますと?」
はい?
「さっきのバシュッてなったヤツですよ!ポケットから出したヤツ」
「……あぁ、あれですか。
あれは“インスタント・ウィザード”と呼ばれる物です。
自分で念じるだけで、魔力を使わずに物の出し入れができるんです」「……魔力を使わないから、境の国にもあるのだと思っていました。
ちなみに、これは属性に全く関係なく使えます。後でルル様にも差し上げますね。
……そんな事より、“結論”が出ましたぞ」
私は思わず身を乗り出すようにユー爺に近寄りました。
「……まぁまぁ、焦ってはいけません。
“わしが”王立図書館のダブルSランクの棚から探し出して来ました。
それでは……」
ユー爺はここで切って、再びインスタント・ウィザードを取り出しました。
そして今度はポンっという音と同時に大量の資料が目の前に……
「……」
本当に半端じゃない量です。私の腰ぐらいまでの高さまで山積みにされた紙の束が20はあります……
「……え〜ゴホン、それでは分かり易くお教え致します」
話しが深夜まで続いてしまったので、要約してお話ししますね。
まず、図書館にはランクがあって、GからダブルSランクまであるらしいです。
Gは普通の小説、つまり一般の人でも読めるレベルです。
そして徐々に読めるレベルが上がって、Sランクになると国王でさえも読むのは難しいそうです。
ダブルSに至っては、国の存続を脅かす事態の時のみ、その国家主席だけが読める、そんな魔術がかけられています。
その膨大の資料の中から、絵本をユー爺が取り出して言いました。
これに世界最古にして最大の秘密が隠されていると……その絵本は何故か懐かしく感じられました。
でもきっと気のせいですね。話を戻します。
絵本は世界最古とは思えないほど綺麗に保存されていました。
ユー爺はゆっくりと本を開きました。
そして私に言いました。“さぁ、読んで下さい”と……
国家主席、つまり今現在、一番権力を持っているのは私らしいのです。
当然私は質問しました。国王より偉いというのは以前に聞いていましたが、私の親族はどうなのか、と……
解答としては、父は私が生まれる前に、母は私を産んですぐに亡くなったそうです。
視線を本に落とすと、絵と言うより図が描かれていました。
脇には今まで見た事ない字が綴られていましたが、不思議と“詠めた”のです。
そこには……
“魔、降りし時、王旅立つ。四精の下へ参ずるだろう。
縛りを解き、全てを解放せしめん時、大いなる光が……
王の魂、"ここ"に集まり、封印の……
……神……ユ……ル”
最後の方は殆ど読めませんでしたがね……
文字が“消えて”しまっていたので……
ユー爺に曰わく、この大地の4隅に精霊を祀った神殿があるらしいです。
そこに行けば何かしら解るかも、らしいです。
話の途中に出てきた“王”とは恐らくマスターを指すので、私とカノンはどうしても神殿へ行かなければならないそうです。
……と、まぁこんな感じですね。
カノンにはユー爺から話してくれるそうです。
その為に先程出て行きました。
手にはしっかり酒瓶握って……
準備が出来次第、明後日までには出発したいらしいですから、明日は準備に追われるでしょうね……
……あっ
……ピースさんの宿題……忘れてました……
今からやりますか……
只今午前1時です…………