おいでませ洞窟 2
魔法、それは魔力を使い普通の生き物にはできないことをする幻想的で、美しいものそして汚くて、非人道的な物。
世界でこれを使えるのは魔力を持つ者達だけ。世界では太古の昔から人間の一部の魔法使いがこれを使い、伝承してきた。
アリアはジョニーを引きずって洞窟を出た。ジョニーの腕からは大量の血が流れ出ている。
アリアはジョニーを川辺に寝かせた。幸い持ってきていた応急手当キットを使い、出血を止めた。ある程度応急手当が終わったところでアリアはジョニーに質問をした。
「貴方、今まで蛮族と戦ったことは?」
「戦闘経験は?」
「答えて」
ジョニーは口を開かない。
「答えて!」
アリアの、大声は周りの木々を揺らした。
しばらく水の流れる音が響いた。
ゆっくりとジョニーは口を開く。
「ジャイアントとジャイアントスパイダーとジャイアントスラッグ……蛮族との戦闘経験は…………ない」
薄々感ずいていたことだ。道中で聞かされた倒した魔物の自慢話で出てきたのはどれも好戦的ではない奇襲と弱点を突けば狩人でなくても倒せるものだけ。
それにゴブリンとの戦闘でロングブレードを扱えていなかった。
本当に狩人になって二年なのかと疑う。
「本当の狩人歴は?」
「二年ってのは本当だ」
「ではなぜ」
「家はそれなりの金持ちなんだ。都市で結構有名なんだ。俺はその家の次男で兄が家を継ぐことになっていた。俺は何をしようかと思った時にこの職業に憧れて、なろうと決めたんだ。けれど親の反対は強かった。でも兄は味方してくれた。で、俺は狩人になったけどさ。親はおれを危険な目に合わせたくなかったんだろうな。俺には薬草集めの仕事や弱い魔物の討伐しか回ってこなかった。それが二年続いたんだ。で、自分を変えてやろうと思ってスハル街に来た。そしたらこの仕事が来て、これしかない!って思ったんだ」
ジョニーは腕の痛みに耐えながら必死に話した。
「悪いな、迷惑かけちまって」
それを聞いたアリアは準備を始めた。洞窟に入る準備を。
「おい、何してんだ」
「行くんですよ洞窟」
懐からポーションを取り出し、それを飲み干した。これは暗視の力が一時的に手に入る。先程はジョニーに気を使って使っていなかった。
ポーションのもう一本をジョニーに渡した。
「これは」
「暗視のポーションです。飲んでください」
「でも…」
「今から後輩が先輩に狩りを教えてあげます」
ジョニーはその言葉に驚いた。そして、迷わずポーションを飲み干した。
「ありがとう」
初めて暗視のポーションを飲んだジョニーは驚いていた。
まるで昼間のように洞窟の中かが見えるのだ。
アリアが先頭を歩き、その後ろをジョニーが歩いた。洞窟の中間地点についた時アリアはジョニーに指示した。
「少し離れててて」
言われた通りに離れた。それを確認したアリアはマントの中から物を取り出した。
ジョニーはそれに驚いた。それは小型チェーンソーだった。チェーンソーを武器にするなんて聞いたこともない。大体チェーンソーの回転数じゃ魔物の皮膚に引っかかってしまう。
ジョニーがそんなことを考えているうちにアリアはエンジンをかけた。轟音が鳴り響き始める。ジョニーには耳を塞いだ。それから数秒後のことだった。数十体というゴブリンが右往左往からアリアに向かって現れた。同時に3匹のゴブリンがアリアに襲いかかる。
アリアは冷静に一番速く自分のところに突っ込んでくるゴブリンを一匹ずつ切り裂いた。それはまるでスプーンをプリンに突き刺すような感じでいとも簡単に切り裂いた。
アリアはあっという間に数十匹のゴブリンを処理した。
圧巻だった。こんな世界があったのか、と。
奥に進むとジョニーの腕に傷をつけたボガードがいた。
待ちくたびれたぞ。と言わんばかりに。
アリアは懐から宝石を取り出した。おそらく魔石だろう。アリアはそれを使った。
魔力の補給だろうか。
アリアは身構えていた手を下ろした。そしてゆっくりと歩いてボガードに近づいた。
ボガードは少し困惑していたが、すぐに好機と見たようで棍棒を振り上げた。
アリアは避けなかった。チェーンソーを持っている右手が血に染まった。アリアは一歩のけ反る。
アリアは諦めたのか、ジョニーはそう思った。自分より戦闘経験豊富なアリアでもボガードを倒すことはできないのか、と思った。
しかしアリアはチェーンソーを放していなかった。
すぐにボガードはもう一度攻撃を繰り出そうと棍棒を振り上げる。アリアは避けようとせずにボガードの攻撃を真正面から受けた。
轟音が洞窟に響き渡った。アリアに振り下ろした棍棒はチェーンソーの回転する刃によって二つに分かれていた。
ボガードは壊された自分の武器を見て一瞬よろけた。
狩人はそれを見逃さなかった。チェーンソーが出せる最大の回転数と轟音でボガードの横っ腹を切り裂いた。ボガードは背中から倒れた。
「治ってる」
攻撃を受けたはずの腕が元の綺麗な腕に治っていた。
「まさか魔法!?でも狩人で魔法を使えるようになるには何十年もの時間が必要な筈…」
アリアはこちらを向いた。
「あんたまさか魔法使いか!?」
その時、ボガードが叫び声を上げて起き上がった。
イタチの最後っ屁と言ったところか。最後の力を振り絞り自分の仲間と自分の血に染まったマントに拳を伸ばした。
しかし、所詮死に損ない。力はなく拳にスピードは乗っていなかった。すぐにチェーンソーのエンジンをかけて拳が狙う先にチェーンソーを向けた。
その時ボガードの腕は血を吹き上げて3本になった。その勢いでそのままボガードは倒れた。
「違いますよ。その血が混ざってるだけです。」
ジョニーは思った。こんな世界があったのかと。こんなことができるのかと。これが狩人だと。これが自分のなりたかった狩人だったと。
帰り道ジョニーはアリアの肩を借りながら歩いていた。
「俺さ、決めたよ。君みたいな狩人になる」
アリアは無言であるいた。
「薬草集めなんてもううんざりだ、魔物を狩っていろんな人に感謝される狩人になりたい。そういえば名前聞いてなかったね、教えてよ」
アリアはゆっくりと口を開く。
「アリアス・ブラッド」
目の前にスハル街が見えてきていた。気づけば太陽は昼間の強さは無く、やさしい夕日になっていた。
女ばかりで男がいなかったので作ったキャラがジョニーです。
案外はまり役で私結構気に入ってます。
感想とかとか頂けたら作者は嬉しくなって霊剣出します。