スハル街
3話の投稿に合わせて少々1話と2話を改変しますので、もう一度読み返して読むことをお勧めします。(露骨なアクセス稼ぎ)
アクセス解析を見て、数は少ないけど私の作品を読んでくれている人がいるってことの嬉しさを感じました。
不定期更新ではありますが良かったら読んでいただけると幸いです。
セトリチア大陸の最北に位置する狩人達の絶好の狩場「終わらない冬の森」の近くにはスハル街がある。
コルト街は大地に流れる魔力で一年中季節が冬の「終わらない冬の森」の影響で1年を通して寒い日が多い。
その為、作物は育たない。しかし「終わらない冬の森」ではそこでしか生えない貴重な薬草や、寒さに強い毛皮を持った魔物などが多い。それらを欲しがる商人達が毎日のようにスハル街へとやってくる。
特に高値で取引されているのが、豚が森の魔力によって変貌し魔物になった「終わらない冬の森」の固有種「クレイジー ピッグ」だ、元が豚ということもあり、そのまま焼いて食べるもよし、厚い革で服を作るもよし、特に高値で取引されるのは角だ。
角は加工することで宝石の様な輝きを放つ。この魔物を一体倒すだけで400万ゴルドになる。
しかし、この魔物は沢山いるわけではない。1ヶ月周期で数を増やすが、多くて森に20体。しかも「クレイジーピッグ」は並の狩人では倒すことは出来ない、一流の狩人でさえ苦労する魔物だ。一攫千金を狙ってこの街にやって来る狩人は多い。しかし、森に行って帰ってこなかった狩人は少なくはない。
今日はメンダル大陸から商業ギルドが来ている。まだ太陽が日を出してから数時間しかたっていないというのに街は人で溢れかえっていた。その中に二人の少女もいた。
「エルシアはぐれないで」
「う、うん」
せりが行われているところがあれば、行列が出来ているところがある。そのなかで2人は人の圧に押しつぶされそうになっていた。
目を離してしまったらばお互いを見失いそうだ。
「アリアちゃん」
エルシアはアリアの手を握った。冷たい。まるで凍りついているかのように。スハル村は一年中寒い。夏であろうと半袖を着るとこはない。今の季節は冬、毎日気温は冷夏を下回る。今日は特に寒い。
見ればアリアは薄地の長袖の服にスカート、その上にボロボロのコートを着ていた。
「アリアちゃん、なんでそんな格好なの!?」
朝ごはんを食べていた時もこの格好だったのだが、なぜ気付かななかったのか。自分の不甲斐なさを実感する。
「だって動きやすい」
「ここは森じゃないよ!そんな格好していたら風邪引くから服買いに行こ」
「大丈夫、私は寒いの感じないから」
「そういう問題じゃないよ!」
エリアスに連れられてアリアは服を販売しているスペースへとむかった。
「アリアちゃん、この前買ったコートはどうしたの?」
「魔物と戦った時に破れた。家にあるけど着てない」
エリアスは呆れてため息を漏らす。まあ、いつものことかと思った。しかしながら自分のことが全く出来ないアリアに心配をするエリアスだった。
アリアに服を選ばせるとろくなことがないと知っているエリアスは慣れた手つきでアリアに似合う服を選んだ。下着からコートまで、必要な衣服を買った。価格は5万ゴルドになった。
「あちゃーお金足りるかなー」
エリアスがそういうとアリアは朝早くに角と交換して手に入れた金貨が入った袋を取り出す。
懐から取り出すだけで金属同士がこすれ合う音がなった。
「そのお金どうしたの?」
アリアは普段狩人の仕事で手に入れている収入を知っているので大量の金貨に不安を覚えた。
「クレイジーピッグを狩った、その角のお金」
思わず大声を出した。アリアはまだ駆け出しの狩人。エリアスの知る限り武器の性能の良さもあるけれど到底クレイジーピッグなんて狩れるような経験は積んでいないはずだ。
「たまたま小さな奴を見つけたから」
「どれくらい?」
「3mぐらい」
通常、大人のクレイジーピッグは10mを超える、その巨体さ故のパワーに多くの狩人は悪戦苦闘してきた。しかし、ごくたまに大人のクレイジーピッグでも3mほどの小さな個体が産まれるそうだ。おそらく運良くそれを見つけたから狩ったのだろう。しかし、駆け出しの狩人がクレイジーピッグを狩ったというのは驚くべき快挙だ。
「すごいよ!」
「そんなことは無い」
無愛想なアリアはそれを否定した。けれど、エリアスにはアリアの顔がほころんでいるように見えた。
立ち話をしていると、目の前でまだかまだかと待っている店員の目が怖くなってきたので、そそくさとお金を払った。
2人がそこを離れると時間はお昼ご飯の時間でほとんどの人が家や飲食店に集まっていて、周りに人はあまりいなかった。
「エリアス、ちょっとじいさんのところよってもいい?」
アリアが買った大量の衣服を持ち、アリアがよく利用している武器屋へと向かった。
武器屋の思いドアを開けるとそこには朝にも会ったじいさんがタバコを吸いながら座っていた。
「そろそろだと思っていたところだ、整備なら終わったから、持ってけ」
「いつもありがとう」
「やめてくれこちとら商売なんだ」
チェーンソーを回し、動作を確認する。耳を痛めるような轟音と共にとてつもない速さで刄が回転した。
「心臓に悪いからやめて!」
後ろでエリアスがビクビクしていた。この手のものはエリアスは苦手だ。
「ごめん」
「わざとでしょ!」
そんな痴話喧嘩を始めた時だった、遠くの方で女性の悲鳴が聞こえた。微かに耳に入る程度の声、それはどれだけの距離かを教えてくれた。じいさんとエリアスにはわからなかったが、狩人であるアリアには方向までわかった。
その声が聞こえ、次の行動を考える必要はなかった。考えるより先にチェーンソーとフックショットを手に取り、店を飛び出した。