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帰省

森から少し離れた街、そこは都市から都市へと繋ぐ宿場町、主に多くの商人が訪れては珍しい宝石、魔物の角や牙、ここでは取れない食べ物なんかをやり取りしていた。

時刻はまだ日が登ってきたばかりの時間。だが、街は多くの人で賑わっていた。

今日は半年に一度来る商業ギルドが店を開いているからだ、この雪国ではお目にかかれない果物、生きたままの食用の鳥、宝石、アクセサリーなどなど、

我先にと買いにくる人々で溢れかえっていた。


その中に少女もいた。

「これ、いくらで買う?」

目線を合わせずに昨日の昼間倒した魔物の角を手渡す。

「こ、これは」

虫眼鏡を取り出し角を見始めた。

少し見た後かん高い声を上げる商人。

「これをどこで?」

よほど高価なものなのか、大切そうに角を抱えていた。

「昨日狩った魔物から」

クイッとメガネを光らせた。

「あなたはあの狩人ですか!」

大声を上げたせいで周りの人達が一斉にこちらを向く。

口は開かずに頭を下に傾ける。

「あら、さぞお辛かったでしょうに」

哀れむ目を少女に向けた。

「こちらの角は加工することで光り輝きます、多くの金持ちがこれを欲しがる代物です。

お代は300万ゴルドでどうでしょう」

そうなに高価なものだったのか、と驚く少女。

出された書類にサインし、袋に詰められた300万ゴルド、金貨300枚を受け取る。


その後、ポーションを何本か購入し、武器屋へと向かった。

武器屋は閉まっていたが、玄関を叩くとこじんまりとしたおじいさんが現れた。

「そろそろ来る頃だと思ったよ、あんたぐらいしかうちの店を使うやつはいねぇしな」

おじいさん顎でに入るように促される。

「そこに腰掛な」

奥にあった椅子に座る。

「早く出しな」

コートからチェーンソーとフックショットを取り出す。

「メンテして」

「ああ、わかってるよ」

おじいさんは流れるような手つきでチェーンソーを分解する。

「ん?」

チェーンソーの刃をみてまゆを寄せた。

「おい、いったい何を切ったんだ?ソウルイーターが刃こぼれしてるぞ」

若干怒り混じりだ。

「……たま」

「あ?」

「魔物の頭に…」

呆れた表情のおじいさん。

「あんたも無理するねぇ、わし特性のチェーンソーじゃなければ魔物の頭蓋骨なんて切れなかっただろうぜ。刃は新しくして、予備の刃もつけとくから」

このおじいさんは若い頃に魔導器士になりたかったらしい、だからただの武器だけでなく、チェーンソーや銃なんかの製造も出来る。

マテリアルの概念を独学で学び、狩人が体に埋め込んだマテリアルを利用して使用する武器を開発することに成功。

その1例がソウルイーターだ。

「他になにかあるか?」

葉巻に火をつけた、完全に仕事モードに入った。

「フックショットのメンテもお願い」

「あいよ、お代はいつもどうりだ。そこらに置いといてくれ」

テーブルの上に金貨を1枚置き、店を出た。


狩人は魔物を狩る職業だ。

なるためには必要な条件がある。

ひとつは狩人になるための手術を受けること。

魔物と違い魔力を持たない我々人間が魔物と同じ土俵にたとうなんてたかが知れている。

では魔物と戦うためにどうするか。

答えは魔物と同じように魔力を持てばいいという答えだ。

手術では魔力を生成する宝石、マテリアルを注入する。

一般的にマテリアルは魔物の魔力の源、それを取り出し人間に注入する。

とても危険は手術だ、魔物のマテリアルを注入することによって魔物と近い存在になるのだから。

体が耐えきれずに魔物になってしまう狩人も数多くいる。

そして、この手術において最も大事なことは代償があるということ、代償は視力、聴力、感覚、人それぞれだ。

少女は味覚を失った。

どんなに美味しいものを口にしても味を感じない、食事は作業と化す。

人間の楽しみの一つ食事を楽しめなくなってしまった。


少女は朝食のために店に来ていた。

朝食と言っても少女にとってはただの作業だ。

「一番安いの3つ」

店員がそれを聞くとそそくさと厨房に戻っていく。

周りを見ると客はあまりいない。

「お待たせしました。」

店員が料理を運んできた。

そこにはこの店で一番安いパン3つと頼んだ覚えのないサラダとハムエッグがあった。

「これ…頼んでないんだけど」

店員の女性はクスッと笑い

「いつもそんな栄養のないものばかり食べていたらお仕事できませんよ?、これは店からのサービスです。」

「でも…」

すると奥から大きな声が聞こえた。

「あんたには食材の調達なんかを手伝ってもらってんだ構わないさ」

店長のおばさんの声だった。

「だ、そうですよ。アリアス・ブラッドさん」

パンを口に放り込む。

「その名前で呼ぶのやめてエルシア」

ハムエッグとサラダを息を呑むようにあっという間に食べ終わった。

「よっぽどおなかが空いていたのね、アリア。ねえ、時間あるんでしょ?お話してかない?今ならお客さんアリア以外にいないし」

「別に構わない。その前に」

懐から金貨を1枚取り出してエルシアにわたした。

「き、金貨なんてどうしたの?」

おどろくエルシア。

「今は金貨しか持っていない、お釣りはいらない」

掌に金貨を乗せたエルシアはそれをどうしていいかわからずにおどおどしていた。

「だ、ダメだよアリア…お釣りはちゃんと」

その声を遮るように店長の声がした。

「もらっときな」

「え、え、でも…」

「今日は商業ギルドが来てるんだろ?その金で2人で買い物でもしてきな。」

こちらは向かずに料理をしながら言ったその声はどこか頼もしさを感じた。

「でもお店は」

「こんな日に来るやつなんていないよ」

困ってこちらを向くエルシア。

無言で頭を下に傾ける。

「あ、ありがとうございます!」

そそくさと奥に走っていった。

数秒の無言。

「魔石ならあんたの家に置いといたよ。」

「ありがと」

そういって店長に金貨を投げる。

店長は料理をする片手間に手で受け取る。

「まいど」

狩人が魔力不足に陥らないようにする道具、それが魔石だ。

魔石は普通の店では売ってない、魔石は魔力を内に秘めた宝石だ。

魔石は基本手に錬金術師によって作られる。

この店の店長の旦那は錬金術師だ、普段は刀剣や道具を作っているが主に魔石を作っている。

魔石は普通の人にはわからないように販売するのが相場だ。

だからこうして店長と2人だけの時に取引をする。

「お待たせー」

かわいいフリフリの洋服を着たアルシアが奥から出てきた。

「じゃあ行こうアリア」

手を引っ張られる。

「行ってきまーす」

「ああ、いってらっしゃい」

「…いってきます」

「いってらっしゃい」

そう言って2人は街に繰り出した。





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