頭のいいスケルトン 3
2回目、そう二回目だ。
雪のクッションに包まれて目を覚ますのは
しかし、一回目と明らかに違うところは体に矢が刺さっていないということだ。
痛みはない
ーーはずだった
頭痛。
それは突然やってきた。
アリアにかけられた呪いで感じなくなる痛みには例外が存在する。
それが頭痛。
今までに風邪をひいた時に感じることは少なからずあったが狩人となった今では無縁だ。
久しぶりに感じる感覚に驚きと苦しみを感じる。
その頭痛はただの頭痛ではなかった。
痛みが尋常ではなかったのだ。それは立ち上がることさえも阻むように。
とても長い夢を見ていた。眠っている間に見ていた夢が突然フィードバックする。
しかし、夢の内容など完璧に覚えるような人間は少ない。アリアもその例外ではない。
それは断片的で、曖昧だった。
思えば夢というには長く、とてもストーリーがしっかりしていた。
いささかこの表現はどうかとおもうが、しかしこの表現が適切だろう。
断片的にしか覚えていないが、ハッキリと思い出せるものがあった。
ロイマンという男、それから遺跡。夢の中でこの二つがハッキリと写っていた。
ロイマンという男が何をしていたのか、それがわからないが、遺跡については場所がハッキリとわかった。なぜならそこが「終わらない冬の森」だからだ。
果たしてそれは夢の中の幻想なのか、現実なのかわからない。けれど手に持っている赤い光を放っている魔石とスケルトンの頭蓋に書かれた文字がそれを現実だと認識させた。
「メールン、ロイマンの親愛なる妻」
夢で見た情報を頼りに遺跡を探して回った。
数時間たった頃にそれは見つかった。この森を庭としているアリアにとっては「こんなところがあったのか」と思わせる場所だった。
白い景色の中にポツンと立つ柱。屋根だった出来損ないの岩たち。
それらを雪が隠していた。しかし、書くられているのは地面近くだけで遠目でもそれを認識できた。
アリアはチェーンソーを片手に足を踏み入れる。雪は柔らかく、足は地面のゴツゴツとした岩達に当たっていた。雪の中を歩くのはもう慣れたものだ。狩人になったばかりのアリアはまさか未来の自分がアンデットと戦っているなんて思わないだろう。
もし、ここで大量のスケルトンが現れたら?
その問が脳裏に浮かんだ。スケルトンにやられたあの夜のことを思い出す。矢がか皮膚に刺さる異物感、恐怖、血の感覚。
ーー思い出すのをやめた。
アリアはエルシアや町長、バッキイ達の顔を思い浮かべる。恩師や友人、それらすべての守るべき者達。スケルトンがもし、街に攻めてきたら守れるのアリアしかいない。だからといってゴブリンの時のようにうまくやれるなんて思わない。だから今止めるしかない。
そう、自分言い聞かせて自分を奮い立たせた。
チェーンソーを握る力が増す。
手がかりはないか、と遺跡を見てまわった。しかし、めぼしいものは見つからなかった。
諦めたように深呼吸をする。それか真ん中に立った。
スケルトンの魔石から手に入れた魔力は思ったよりも多かった。なので出し惜しみなく魔法の発動が可能。
身体能力強化、エンチャントウェポン、跳躍力上昇、筋肉強化、再生能力上昇、
それら全てを発動してもまだ魔力は有り余った。
これだけの魔力でスケルトンは動いていたのか、と関心半分恐ろしさを感じながらチェーンソーを下向きに持ち替える。
ーー深い深呼吸。
体重と力に任せて地面にチェーンソーを突き刺した。とてつもない轟音と岩を削る感覚をピリピリと肌で感じた。
脆い。遺跡の硬い地面にしてはそこらへんに転がっている出来損ないの柱と比べて脆かった。
突然小刻みに感じる振動が消えるーー
周りの状況を確認する前にアリアの体は地面及び床と共に落下していた。
ビンゴだった。ただのカンだったけれど。
10m、いや15mそれぐらい落下した。事前に自分にかけておいた魔法のおかげで無傷だった。
周りを見渡すと、そこには20、それ以上はあるであろう骸骨達があった。
これだけの骸骨を集めるために一体どれだけの墓を荒らしたのだろうか。と思うほどにそれは無数にあった。
アリアは砂埃を払いながら立ち上がる。
カラン。軽い者同士がぶつかる音がした。それも一つ二つではない。それはこだまのように広がった。
スケルトンだ。骸骨達は自らを集めてスケルトンになった。
さしずめ侵入者を殺すための防衛システムとでも言ったところか。こんな大層で意味のなさそうなものを作る労力があるのなら魔導器を作っていた方がよっぽど有意義だと思う。
あっという間に数十とスケルトンが出来上がり、アリアの方に顔を向けた。
「魔石には困らなそう」
お読みいただきありがとうございます!
リアビリ半分で書きました。
なんとなく展開が早い感じが否めないですが……