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誕生日には、白詰草のかんむりを

作者:

閲覧頂きありがとうございます!!

期待しないで読んでみてくださいね…(震え声)


雨の中にいた。

私は、ビニール傘を近くのコンビニで買い、豪雨が少し落ち着くのを待っていた。

一向に止む気配はない。

「これだから嫌なんだよね、本当に」

ビニール傘をしっかり持ち直し、スマートフォンをいじる。


ザーザー…

雨が止まない。

また暗雲を見上げる。

人通りの無い道に、ベヂャベヂャ目立つ音が聞こえた。


「やっと見つけた」


走りながら来たのは、私の兄だった。


*

よく、ここが分かったものである。

下校の時、私はかなり寄り道や遠回りをして家に向かうものだから、意図的に見つけるのは至難の業だ。

しかし、兄は見つけてくれた。きっと町中を探し歩いたに違いない。

実に素晴らしい兄である。

「あのさ…たいやき買うよ 」

「なんで?」

「迎えのお礼だよ」

100円を握り締め、たい焼き屋さんに向かって歩いた。

兄は、歩くのが遅かった。

たい焼き屋さんにそろそろ私がつく、という時にも、兄はまだ30メートル前を歩いている。

兄の着ている服の具合で、どのくらい外にいたか分かった。

肩あたりがびしょびしょに濡れて、顔も少し青い。

後悔しながら、たいやきを注文し、兄に手渡した。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「うん…平気」

手にとったたいやきを兄は黙々と食べ進めていく。

私はそんな兄を見つめて、幸せを感じた。

この瞬間の幸せを。


*

そろそろ家というところで、兄は私に何かを渡した。

「はい」

…今日は私の誕生日だった。

それは、白詰草のかんむりで、雨に濡れていた。

私は、それを喜んで貰おうとした。


10回目の、6歳の誕生日。


私は、6歳の誕生日の日に、兄に雨の中迎えに来てもらった。

小学校に入学して間もなかったから、道に迷い、更に雨が振り、私は泣いていた。

ここが何処かも分からない状態で、ただ、待つしかなかった。

その時に

「やっと見つけた」

兄は、びしょ濡れになった自分なんて知る由もなく、ただ私を探してくれていた。

私は、お小遣いの100円で兄にたいやきを買った。

兄は、黙々と食べた。


家にもうすぐ着くというところで、兄は私に誕生日プレゼントをくれた。

それは、白詰草のかんむりだった。

兄は手先が器用だった。

そして、身体が弱かった。

病弱な兄は、私が泣いているとよく白詰草のかんむりを作ってくれた。

かわいくて、兄の作ったかんむりが大好きだった。


私の誕生日に、雨の中私を探し回ったことがなければ、幸せな誕生日になったのに。


兄は雨に濡れたせいで熱を出し、病院に入院した。

その後、兄は帰ってこなかった。


母や父は何も言わなかった。

だけど、私のせいで死んだのではないかと、毎晩悩み、泣いていた。


その後の誕生日からだ、兄の幻覚を見るようになったのは。

私の誕生日には、絶対雨が降り、私は雨宿りし、兄に見つけてもらう。

こんな幻覚を見ていた。

でも、怖くて、私はいつも逃げた。

幻覚でも、自分が殺したという現実を見たくなかったから。

兄に拒絶されたくなかったから。

だから15年間、自らの幻覚から目を背けた。


でも、今日は逃げたくない。

兄の為にも、自分の為にも、前に進まなきゃいけない。

それが、どんなに杜撰な結末でも。


雨が少し強くなる。声が震える。

「お兄ちゃん」

聞こえているのだろうか。ちゃんと。

「話したいことがあるの」


「僕も、話さなきゃいけないことがあるんだ」

…え?

私の幻覚は、いや、はたまたこれは成仏できていない兄の霊か分からない。

でも、聞かないといけないと思った。

「先に、話して良いよ」

私は口を切った。


「ごめんなさい」

兄は、私の前で、礼をしながらそう言った。

「これは、全部僕のせいなんだ」

「お前の幻覚じゃない」

ということは…

今まで誕生日に現れていた兄は、幽霊だったらしい。

「てっきり、吹っ切れてない私の幻覚だと思ってた」

「違うよ、僕が成仏できないだけ」

ああ。

兄の幽霊は、あの時と同じくらいの見た目だったが、兄と言う程あって、やっぱり言うことは私を包む優しさがあった。

安堵と愛しさがこみ上げ、泣きそうになったが、こらえた。

「僕、あの後すぐ入院したでしょ?あれは、持病が原因だったんだよ」

「…持病?」

聞いたことがなかった。

私も親の心情を察して、聞いたことはなかったし、親も兄の話をする事は無かった。

知らぬ間に暗黙の了解が成され、家族内のタブーになっていたのだろう。

「治ることがない病気だったよ…妹のお前にも、この病気のせいで、遊んでやることも出来なかった」

兄は、伏し目がちに呟いた。

お互いに、擦れに擦れ合った解釈は、逆に互いを傷つけ、遠ざけていた。

「…そんなことない」

私は、我慢がきかず、目から大量の雫を流し始めていた。

「私は、お兄ちゃんの白詰草のかんむりが好きだった!」

兄は、唖然としていた。

「お兄ちゃんは、優しかったよ…私が逆に無理させてるんじゃないかなって、思ってた」

「お前…」

ようやく、繋がった気がした。

兄と妹の、10年ぶりの会話で。

「お兄ちゃん…私、ずっと言いたかった」

「でも、お兄ちゃんが、死んじゃったから、言えなかった」

「その後の誕生日のお兄ちゃんの幽霊からも、逃げてた」

「だけど…」

私は、息を大きく吸って笑顔で言った。

「お兄ちゃん、ありがとう」

これが、言いたかった。

これを、言えないままでいた。

もう時効が過ぎてしまったと思っていた。

だけど

兄は変わらず、私の兄だった。

「…僕が死んでから、お前が泣いているのは知ってたよ」

「だから、謝りたかった…でも、そんな悲しいお別れ、嫌だよな」

「だから、僕からも…」

「ありがとう」

「僕の妹でいてくれてありがとう」

「死んだとき、泣いてくれてありがとう」

「ろくでなしの兄のかんむりなんて、必要ないと思ってると思ってた」

「もう、白詰草のかんむり、編めないけど…」

「お前なら、もう一人で編めるよな」

兄は、そう言って、徐々に姿を薄くしていった。

成仏だと察し、悲しみがこみ上げた。

でも、その代わりに、本当の思いを聞けた。

言えた。

二人には、世界の堺をも超える、深い絆が出来ていた。

「またね、お兄ちゃん」

「ああ、またな」

そんな、他愛のない別れを交わした。

だって、兄は、私の兄は、ずっと私の心の中で生き続けるから。


*

17歳の誕生日の日、兄は現れなかった。

「当分あえないなぁ」

そう言いながら、私は白詰草を編んだ。

実を言えば、兄に編めるだろうと言われた時、私は白詰草のかんむりの編み方を知らなかった。

だから、練習した。兄の作ってくれた白詰草のかんむりに近づけるように。

まだまだ汚い白詰草のかんむりだけど、いつかまた兄に会う日までに、私から白詰草のかんむりを送りたいと思う。

読んで頂きありがとうございます。

ぱぱって書いたので、色々おかしいかもしれませんすいません…

次はもう少し鬱っぽいのも書いてみたいですね〜文章力が無いから無理かな、、、( ̄▽ ̄;)

では!改めてありがとうございました!

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