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神田先生  作者: KMY
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第03話 僕の前は何もない 僕の後ろはごみばかり

 羽生はせは、と絵を共同制作していた。羽生、卵共に図工が得意で、図工の時間は、二人の共同制作した絵に勝るものはなかった。


「おはよう」

 卵が教室に入ってきて、羽生に言う。

「おはよう。」

 羽生も返事をし、続ける。

「昨日の絵、卵の部分書き終わった?」

「えっ・・・?」

 卵は、それを聞くなり気まずそうな顔をした。

「ええと、それは・・・打ち切り」

「打ち切り?冗談じゃないわよ!」

 羽生は立ち上がり抗議した。

「きっちり最後まで描きあげなさいよ!」

「い、いや、だから打ち切りで…」

「何が打ち切り?」

 いきなり朝風あさゆうが羽生の後ろから声をかけたものだから、羽生はびっくりして後ろを見る。

「絵。」

「絵?」

「卵がいきなり打ち切りにするって。」

「打ち切り?」

 羽生はそっぽを向いて言った。

「ただでさえこの世には打ち切りがたくさんあるのに、卵まで…。」

「おおけざな…」

 卵が言い返すが、羽生は無視する。

「某元首相の、負債をゼロにしますとか!」

「ああ、それありますね」

 朝風も同調する。ほぼ同じ頃、教室の引き戸が開き神田先生が入る。神田先生が教壇に立つと、生徒達はみんな着席した。

「起立、礼。」

 羽生の合図で、生徒達も起立礼をする。

「あ、そうだ」

 朝風が思い出し、手を挙げる。

「はい、何でしょう?」

 神田先生が朝風を指名すると、朝風は立ち上がる。

「ええと、学級委員長の件はどうなったのでしょうか?」

 神田先生は一瞬びっくりし、そして昨日の件を思い出す。羽生の目が一番怖かった昨日の件。神田先生は、気まずそうに言った。

「ええと、それは打ち切りで…」

 羽生は眼を丸くする。羽生の後ろには、鬼に勝るオーラができていた。

「ひぃ!」

 神田先生は真っ青になる。

「打ち切りってどういうことですか!」

 羽生は、憤りをぶっ放すように怒鳴った。羽生は立ち上がる。

「とにかく、この世には打ち切りが多いんです!打ち切りなんかしないて、きっちり最後まで終わらせましょう。」

「で、でも…」

 こっちには学級委員長の指名が出来ない事情があるのだ。神田先生はそっぽを向く。

「何の話でしょうか?」

「とぼけないでください!」

 羽生はそう言い、つかつかと教壇の方へ歩み寄り、神田先生を蹴飛ばす。

「何するんですか!」

 神田先生は立ち上がり、羽生に問う。羽生は、神田先生に問い返す。

「打ち切りなんていけません!きっちり最後まで終わらせてください!」

「は、はぁ…」

 立っていた朝風が、再度手を挙げる。

「何でしょう、朝風さん。」

 羽生が聞くと、朝風は言った。

「この世には打ち切りが多いんですよね。三日坊主の書く小説とか」

「ああ、ありますね。」

 羽生も同調する。


 ・ハンカチで汗を拭く

 ・かってに改○

 ・神田先生

 ・大規模なソフトの製作

 ・某大辞典(納豆で…)


「とにかくこの世にはダメ打ち切りが多いんです!」

 朝風が言うと、羽生はうなずく。

「いっそのこと、自○党の政治も打ち切って野党に回したらいいのに」

 朝風がぼそりと言うと、羽生は反論する。

「打ち切りは反対です!きっちり最後までやってもらいます!」

「どうやって?」

 いざ朝風に言われると、羽生は戸惑った。

「い、いや、それは…」

「あのう、HRを始めてよろしいですか?」

 横から神田先生が、羽生に聞く。しかし羽生は神田先生の腹を殴る。ぽかりと一打。神田先生は腹を抑え、座りこむ。

「あぅぅ、僕、先生なのに…」

「黙れ。」

 羽生はさらに神田先生の頭を殴打する。

「警察です」

 いきなり教室の引き戸が開き、1人の警察官が教室に入る。

「なんですか?」

 羽生が返事をすると、警察官が問う。

「通報のあった先生はどちらでしょうか?」

「ああ、こいつです。」

 と、羽生は座りこんでいる神田先生を指差す。

「補導します」

 警察官が神田先生を見下ろして言うと、羽生は後ろから尋ねる。

「それって、先生を打ち切る事になるのですか?」

「え、いや、まあ…そういうことになりますね」

「あたしは打ち切りを許さない女!」

 羽生はそう怒鳴り、警察官を殴打する。

「帰れ。」

 羽生が言うと、警察官は逃げるように教室から出て行った。羽生は神田先生を見下ろして言う。

「あたしは打ち切りを許さない女です。」

「あのう…」

 神田先生が羽生に尋ねる。

「昨日は正反対のことをおっしゃっていたはずですか?」

「打ち切りは絶対許しません!きっちり最後まで続けてください!」

 羽生に怒鳴られ、神田先生は立ち上がる。

「それにしても昨日の通報で今頃警察が駆けつけるなんて。」

 羽生がぼそりと言うと、朝風が言う。

「警察官も、行くのがめんどくさくでたらい回しにしていたんですよ。一種の打ち切りです」

 羽生は激怒した。必ず、かの邪知暴虐の公共機関を廃せねばならぬと決意した。オーラは、さらに燃えさかる。

「携帯電話を貸してください!」

 神田先生が携帯電話を差し出すと、羽生はそれをぶん取り、かける。

「もしもし、警察ですか。14歳の先生を逮捕してください。」

「あの、言っている事がごろごろ変わっていませんか?」

 神田先生が言うが、羽生は無視して通話を続ける。神田先生は思い切ったように言う。

「打ち切りですね」

 羽生は、眼を丸くする。携帯電話をがたんと落とす。

「ああ!警察の打ち切り!こっちの打ち切り!どっちを選べばいいんだ!」

 羽生は両耳を塞ぎ、しゃがんで自問自答を繰り返しだした。

「ええと」

 神田先生は教壇に立つと、腕時計を見て生徒達に言った。

「ええと、今ので1時間目に入ってしまいました。しょうがないので、朝のHRは打ち切りで…」

 神田先生はそこまで言い、斜め下から入って来るあまりにも強すぎる邪気に気づいた。神田先生は、悪寒を感じた。

「ええと、その…」

「あたしは、打ち切りを許さない女。」

 羽生は立ち上がり、神田先生に迫る。

「あたしとあなたの恋も打ち切りますか?」

「何の話ですか?」

「打ち切る?打ち切らない?どっちだ?」

 これは明らかに、結婚の脅迫である。神田先生は退る。

「い、いえ、あの、その、ええと、」

 いつしか座っていた朝風が、横から口を挟む。

「神田先生は、この質問を打ちきりたかっていますよ」

 羽生の背中のオーラは、龍も匹敵する者と化していた。

「打ち切りは許さぬ!朝のHRを継続せよ!」

「えーん…席についてください」

 羽生が席につくと、神田先生は言った。

「では、これで朝のHRを終わります」

 生徒達が起立と礼をすると、神田先生は名簿を持って教室から出ようとした。

「待ってください!」

 零時れいじが、手を挙げて神田先生に言う。

「何でしょうか?」

「朝のHR、内容がありません。これでは打ち切っているのと同じです」

 同時に、羽生の目がきらりと光った。

「あたしは、打ち切りを許さない女。」

「ええと、この小説はホラーではありませんし、エロ小説でもありませんから」

 神田先生はそう言うが、羽生は怒鳴る。

「再開してください!」

 1時間目は自分の担当の国語ではなく、数学である。すでに教室の引き戸の向こうでは、足座あざ先生が待っている。神田先生は、やむなしと考えて言う。

「再開します。起立、礼。ええと、今日の予定は、1時間目が数学、2時間目が理科、3時間目が国語、4時間目が英語、5時間目が体育、6時間目が家庭となっています。ええと、これで終わっていいでしょうか?」

 羽生が手を挙げる。

「何でしょう?」

 神田先生が指名すると、羽生は立ち上がって言う。

「これでは朝のHRの時間とは言えません。もう少し伸ばしてください。」

「ええと、あまり伸ばしすぎると…、」

 ここまで言って、神田先生は気まずそうに続ける。

「1時間目が打ち切りになりますよ。」

 羽生のオーラは、さらに強くなった。羽生は頭を抱える。

「ああ、すごく迷う!1時間目か、朝のHRか!」

「帰りのHRの前にすればいいんですよ」

 朝風が言うと、羽生はうなずく。

「それもそうね。」

「帰りのHRの前に朝のHRをやるのあんまり意味ないですから!」

 神田先生が反論するが、羽生は聞いていない。

「これが打ち切りゼロの最もよいやり方ですね!」

「あわわ…ええと、地球温暖化対策のためのパイオの需要が増えて食料の耕作を打ち切ったアメリカの農家のつもりで言っていますか?」

「はい?」

 神田先生がつい言ってしまったセリフを、羽生はきちんと聞いていた。

「いいですね、神田先生、いいことをおっしゃる。あっ、食料と言えば…、第二次世界大戦の時集団疎開した子供達の畑作はどうなったんですか?」

「そ、それは…」

 まさか打ち切りとも言えない。

「ポツダム宣言の段階で打ち切りですか?」

 羽生の続言に、神田先生はその後を言えない。羽生は続ける。

「あなたも先生なら、きっちり打ち切らずに最後までやってもらいます!」

「あの、いつまてですか?」

「いつまでも!あと、1年は組の生徒達も全員参加します!」

「はい?」

 神田先生と、羽生を除く30人の生徒達は悪寒を覚えた。


 31人の生徒達と神田先生は、蔵井沢のある寺へ集団疎開する事になった。

 毎日の食事は粗末で、毎日空襲におびえながら32人の人間は、寺の近くの開けたところで畑作をした。

「これで今日の作業は終わりです」

 神田先生が言うと、生徒達はおてこを拭いて、

「ああ、今日もいい汗をかいたなあ…」

 と、次々に言う。

「おやじみたいに言うなあああ!」

 問丸といまるが生徒達に怒鳴る。

「たいたい今は戦争中じゃありませんよ!」

 問丸が神田先生に抗議するが、神田先生は後ろからの眼が怖くでなかなか返事が出来ない。後ろから声がした。

「戦争中じゃない?それはいけない。きっちり戦争中にしてあげないと。先生、携帯電話を貸してください。とれとれ、ブッシュさんですか。突然ですが、日本を攻めてください。嫌?コロス…OK?いいですが、ありがとうございます!」

「あの、そこまでしなくでも…」

 神田先生が横から割り込むが、羽生は例のあの眼をした。神田先生は真っ青になる。

 その時、空からミサイルが落ちてきた。

「空襲よ!」

 羽生が大きな声で言う。

「どんな空襲なんだぁぁぁ!」

 生徒達は突っ込みながらも逃げていく。

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