第01話 さよなら神田先生
えー、この小説には所々に濁点の間違いがありますが、そこんとこはご容赦ください。吐き気がしても慰謝料とかそういったお問い合わせには一切お答えしません。その事を承知の上で読んでください。また、もしよければ、濁点の間違いをメールしていただければすぐ直します。
この小説は、基本的に一話完結方式でした。(爆)1日がものすごく長いです。たまに「え?小説の中の今日って、もしかして先月から続いてる!?」と思ってしまうような冗長さもあると思いますが、そこんとこは我慢してくださいー^^;
この小説は、登場人物が非常に多く、いわゆる「空気キャラ」も多いですが、空気キャラは空気キャラとして忘れてください。
この小説は、新生「神田先生」です。旧「神田先生」の内容を修正加筆したものです。旧「神田先生」は、この小説の入口にあるリンクから参照できます。新「神田先生」では、「1.性的描写を大幅に減らす」「2.難読漢字の使用を避ける」「3.ライトノベルの文法にのっとる」この3つを基本としています。今回は女性読者もターゲットにしているつもりです。
一部時事問題について取りあげている部分がありますが、僕とあなたとでは見解が違い、それゆえにあなたに不愉快な思いをさせるかもしれません。でも、僕の出来事に対する見解はこうなんだ、と理解いただければ嬉しいです。また、初期では、魔法先生ネギま!を中心にした、週刊少年マガジン連載の漫画のいじりも多々ありますが、小ネタとして受け流していただければありがたいです。
第2話から第6話まではさよなら絶望先生に酷似した話の進行となっています。この小説は、もともとさよなら絶望先生の二次製作のつもりでしたが、第7話からどんどん話がそれていっています。第2〜6話が話の本筋なのに、いつのまにか第7話以降が本筋になっている始末。
桜の花びらの散りゆく2003年4月7日月曜日。一ノ谷中学校校門前。
その少年は、学校の門を眺めていた。
「この学校が、今から僕の勤める…」
その声は、いかにも少年しみていた。白いカッターシャツの上に茶色のスーツを着て赤いネクタイをしているその少年は、まばらに歩いている生徒たちの合間をくぐって、学校の運動場に入った。
「制服を着てください?」
いきなり後ろから声をかけられ、その少年はびくっとして後ろを見る。
「あ、あなたは?」
少年に声をかけたのは、背中の上部あたりまで届く髪の毛を真ん中できれいに分けた、一人の少女であった。論外だが、制服を着ている。
「あなた、あたしと同じ身長…、今年から中学1年生?それにしちゃ、あまり見かけない顔ですね?」
セーラー服を着ているその少女は、少年に声をかける。
「いえ、」
少年は、返事をする。
「あたしは羽生かおる。あなたは?」
いきなり少女に名乗られ、少年は困惑した。いや、この名前はどっかで聞いたような気がするのだ。
「あっ!」
少年は思い出した。自分の名簿に載っている生徒の名前であった。
「に、入学おめでとうございます」
少年は、羽生に話しかける。
「は?あなたもじゃないの。」
羽生は、少年に言う。
「名乗りなさい。」
そう言われ、少年は答える。
「ええと、神田進といいます。」
「神田?合格。」
羽生のセリフに奇妙な単語がついているものだから、神田は問う。
「何が合格なのですか?」
「一般的な名前はオッケーです。」
「はい?」
神田は疑問を残しながらも、右手首につけていた腕時計を見た。7時。7時集合だったのでぎりぎりの時間である。
「では失礼します!」
神田は焦った顔でそう言い、走って南校舎へ向かって行った。
「何でそんなに急ぐの?始業式は9時からのはずじゃ・・・。」
羽生は後ろから声をかけるが、神田の反応する気配はなかった。それだけではない。中校舎の真ん中にある児童玄関ではなく南校舎の端っこにある職員玄関に走って行っているのだ。
「児童玄関はあっちよ!あと、制服!」
羽生は思いっきり大きな声で神田に怒鳴るが、言い終わる頃には神田はもうすでに職員玄関に消えていた。
「んったく、もう…。」
羽生はそうつぶやき、中校舎の児童玄関に向かって行った。
入学式を兼ねた始業式。
校長先生の式辞が終わり、次いて職員紹介になった。
「では、まず1年い組には、去年3年ろ組を担当した岡田先生が就きます」
校長先生が、体育館の舞台の真ん中に立ち、手に持っているプリントから名前を読みあげる。
「次に、1年ろ組には、去年2年に組を担当した五十嵐先生が就きます」
校長先生は着々とプリントの視線を移してゆく。
「次に、1年は組には、新入りの新しい先生、神田先生が就きます」
その名を聞き、小学生のときに学級の委員長をしていた羽生は眼を丸くした。思わず体育座りをしているその腰が持ち上がりそうになった。
「次に、1年に組には、水上中学校から転任された西川先生が…」
校長先生が先ほど読み上げた意味不明な文章の内容が、羽生の頭をくるくる回っていた。まさかあの少年が先生?春の野原先生なら漫画の中だからなんとか我慢できたのだが、兄の読んでいる漫画が現実に起きたことを前にして、羽生はどうすればいいのか分からなかった。
もしかして某英語教師のような魔法使い?それとも・・・。そんなありえぬ憶測を胸に、羽生は、整列している1年は組の他の生徒達に混じって、廊下を歩いて教室へ向かっていた。
教育基準法違反の10歳先生?それともその10歳先生の揚げ足を取ってばっかりいるあの生徒のお兄さん?いろいろな憶測を胸に、羽生は不安な顔で教室に入り、机の上にセロハンテープで張られているたくさんの名前の中から、自分の名前を探してその机の椅子に座った。
全員の生徒達が着席し、雑談が始まった。
「ねえ、」
羽生も後ろから話かけられ、びくっと後ろを振り向いた。少女が座っていた。
「わたしは朝風まき。あなたの名前は?」
「羽生かおる。」
無愛想に、羽生は答えた。自分は今考えなければいけないことがある。なのに・・・。
「ねえ、ねえ、」
朝風とかいう輩にうるさく声をかけられ、羽生は後ろを振り向き、朝風の手をつかみ、
「耳を貸して。」
と言った。朝風が耳を羽生の口に近づけると、羽生はそっと、言ってやった。
「あたしね、今考えていることがあるの。」
「何?」
逆効果であった。朝風はついに羽生にせがみだした。
「何?何?」
「あのねぇ・・・。」
羽生がそう言い、拳を朝風の頭に軽くぶつけようとした瞬間。教室の引き戸が開き、少年が教室に入り、引き戸を閉めた。
「えっ・・・?」
教室は一瞬ざわっとなった。
「迷子?」
一人の生徒に声をかけられたその少年、神田進は、真ん中の教壇に立ち、言った。
「迷子ではありません」
そう言い、くるっと黒板の方を向き、白いチョークを持って黒板に字を書いた。
"神田 進 かんだすすむ"
それから再び生徒達の方を向き、言った。
「神田進、といいます。これから一年間、よろしくお願いします」
その一礼が終わると、羽生は手を上げる。
「あっ、今朝の羽生さん。何でしょう」
「とぼけないて。」
羽生はそう言い、立ち上がる。
「あなた、何歳なのですか?」
「15歳です」
「誕生日はいつですか?」
「9月17日です…」
神田先生が答えると、羽生さんははあっとため息をついた。
「教育基準法違反ぎりぎりってことですね?」
「まあ、そのようなものです。ただし15歳は数え年…」
「はい?」
羽生の目が一瞬、点になった。
「それって、14歳じゃないんですか?」
「はぅ、え、ええと、あ、あの人に指示されまして、」
慌てて弁論の言葉を探す神田先生の教壇へ、羽生はずしりずしりと一歩一歩近づいてきた。羽生は神田先生の肩をぽんと叩く。
「やっぱり失格。」
「…………」
神田先生は下をうつむいてしまった。
「まあ、いいんじゃないの」
生徒の中の誰かが、言った。その言葉に反射されるように、次々と同じようなセリフが飛び交う。
「ちょっと待ちなさいよ!」
羽生が生徒達の方に怒鳴る頃には、生徒達の目は許可を求めて羽生の顔を一斉に見ていた。
「それにかわいらしい顔じゃないの」
朝風が言った。確かに神田先生は、14歳とは思えないほどかわいらしい。
「それって、某魔法使い英語教師と同じ展開じゃないの!」
羽生が大声で反論するが、誰かが言った。
「教壇に立たせてもらってるから、校長先生も校長先生じゃないの?」
「うっ……。」
羽生は、しばらく目をつぶってから言った。
「ま、まあ、とにかく、労働基準法では15歳になった次の3月31日まで働けない事になっているんだけど、…………まあいいわ。」
羽生さんはそう言い、諦めたような顔をして席に戻った。後で校長先生に抗議しよう。その思いを胸に、席に座る。
「では、HRを始めましょう。その前に、出席を取りたいと思います」
神田先生はそう言い、机の上の名簿を手に取って開く。
「順番に読み上げます。読みあげられた人ははいと返事をしてください。いいですね、では、1番の糸色己美さん」
「はい」
糸色が立ち上がったので、神田先生は慌てて付け足しをする。
「ええと、立たなくでもいいです。はいだけでいいです。では、2番の公孫田胡桃さん」
「はい」
「3番の犬神毛子さん」
「はい」
「4番の一条隆君」
「はい」
「5番の生田万君」
「……」
返事がない。
「欠席ですね」
神田先生はそう言い、名簿にチェックを入れると続ける。
「6番の伊口男良君」
「はい」
「7番の呂麻男咲子さん」
「はい」
「8番の白黒鈍さん」
「はい」
「9番の花田土竜君」
「あは〜ん」
その花田君の姿を見て、神田先生は驚いた。
「名簿には男って書いてありますか?」
「あたし、男よ〜」
その容姿、頭には赤色のリボン、そして髪の毛もまとめているし、何よりも女の制服を着ているその少年を見て、神田先生は半信半疑の顔で続けた。
「10番の長谷川玲子さん」
「はい」
「11番の羽生かおるさん」
「はい」
「12番の火厘良子さん」
「はい」
「あれ?パーマは禁止ですよ?」
神田先生が火厘さんに言った。火厘さんの髪の毛は、パーマをかけたようなアフロみたいな、その区切りが言い表せないような、そのような髪型であった。
「遊んでいたらこうなったんです」
「左眼の眼帯は?」
「いろいろありました」
「……とにかく時間もないので、進めます。13番の蛍崎惇君」
「はい」
「14番の八月一日聡君」
「はい」
「15番の別所春君」
「はい」
「16番の問丸出汁夫君」
「はい」
「17番の有薬実さん」
「はい」
「18番の零時治君」
「はい」
「19番の謎十一男君」
「はい」
「20番の卵友礎理さん」
「はい」
「服が汚れていますね?」
「絵の具です
「はいはい、21番の掲門櫻さん」
「はい」
「22番の大馬馬子さん」
「はい」
「23番の冲本守人君」
「はい」
「24番の前後進君」
「はい」
「25番の前田渉君」
「はい」
「26番の是長読さん」
「はあい」
「本を読むのをやめてください」
「嫌です」
是さんは、本を読んでばかりで前を全く見ていない。机にはたくさんの本が積まれていて、天井まであと一歩という所に届いている。
「とにかく進めますよ。27番の赤木売生子さん」
「はい」
「28番の朝風まきさん」
「はい」
「29番の佐々木室治君」
「はい」
「30番の柳生利君」
「はい」
「パソコンを学校に持って来ないでください。明日持ってきたら没収しますよ」
「その時は弁償してくださいね」
柳生君は、パソコンをいじってばかりで前を全く見ていない。
「進めますよ。最後の一人、31番の龍山一君」
「はい」
「ええと、龍山君、服が水浸しだけれと風邪ひきますよ?」
「保健室には行きません」
「行ってください。新しい服を持ってきてくださいね」
「着替えるだけ無駄です。最初からすぶぬれの服がいいんです」
「は、はぁ…とにかく、これで全員ですね」
神田先生はそう言い、名簿を閉じて教壇に置いた。これから、この31人の担任をするのか。神田先生は、胸の鼓動を感じていた。しかしそれをぐっと抑え、言った。
「朝のHRを始めましょう」
1年は組。生徒31人。男子16人。女子15人。