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めたふぃくしょん  作者: 黒慎
2/6

38歳with工作員達


「いいからコレを外せ」


グスグス泣いてる母さんに要求すると、そのまま右手を高々と上げて、指を鳴らす。パチンと小気味良い音と共に、ガシャンと拘束が解除される。

解放されたことによる安心感に包まれたのもつかの間、不安がチクリと俺を刺した。


「……やけに聞き分けがいいじゃねぇか」


いつもの母さんなら、「まだだ、まだ終わらんよ!」とかほざきながら抵抗するはずなのだ。それが今日は、ほぼ二つ返事なのだから気味が悪い。何を企んでるのかとても不安だ。


「私だってね一応傷つくのよ……はぁ、まあもう慣れてきたからいつもの悪口言われたって、母さん泣かないけど」


なんだそのドヤ顔は、いやまあ顔の半分は仮面で隠れてるんだが。雰囲気がなんかイラっとした。


「いつものって、あれは1式だろ?」


「なん……だと……」


「俺の悪口は108式まである」


自分で言っといてなんだが、意味がわからんな。

だが母さんには効果があったのか、うわぁーんと泣き出した。38歳の仮面を着けた女性が、マジ泣きしているのは絵的にかなり痛い。いややったの俺だけど。


「グスン、あっ! そうそう、もう終わったからコレ給料ね」


相変わらず立ち直るの早いな。ふところから1万円を3枚取り出し、3人の工作員達にそれぞれ1枚ずつ渡した。


「日給かよ! しかも1万とか微妙に高いし!」


こんな下らないことに付き合って、1万円とは中々の収入ではないだろうか。


「バカにすんな! 3日で1万円に決まってるでしょ!!」


「あんたはこの人達をバカにしすぎだ!」


何? 3日って何するのさ、もしかしてリハーサルとかしちゃうわけ?


「い、いいんですよ息子さん」


工作員の1人が、間に入ってきた。


「俺達……じつは最近仕事クビになりまして、でも家族には打ち明けられず……」


そして、別の工作員が何か語り出した。え? 何これ? 聞かなきゃダメなの?


「公園のブランコで、3人そろって靴飛ばししてる時にサイコさんに出会ったんです」


お前ら仕事探さずに何やってんだ。


「ああ、『暇ならば、我が野望を手伝うがよい』ってな」


ヤボウじゃなくてヤボヨウの間違いだろ。そんなことより、今の話しで重要なのはそこではない。


「あのー、その時母さんは……今の様な格好を?」


「え? いや、ちがうけど……」


よ、よかった。一応母さんにも世間体ってモノがあったんだ! やったーー‼


「たしかあの時は世紀末な格好だったよな」


……汚物は消毒するべきだろ。


「なんかさ……俺達工作員やってる内に、こんなバカげたことでも全力でやることも、悪くないなって思えてさ」


へへッ、とか言いながら、人差し指で鼻下をこする工作員達は、正直気持ち悪かった。ていうか、バカげたことしてるって自覚はあったんですね。


「お前たち……」


いやいやいや、その反応はオカシイだろ。半分バカにされてるぞ。


「サイコさんには、本当に感謝しているんです。ありがとう」


そう言うと、工作員達は頭を下げた。


「バッ、やめなさいよ……まるで私がいい人見たいじゃない! …………ちゃんと家族には本当のこと話しなさいよ。つらいことを共有するのも、家族なんだから」


「「「ハイッ!!」」」


ちなみに、この会話中もあのコスプレ状態で進行中である。全くもってシュールな状況であった。



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