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【46】  作者: 反兎
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居眠り教授との出会い2



湊は悩んでいた。


このまま進むべきか、それともここで引き返すべきか−−−


研究室のドアには研究分野と研究者の名前の書かれたプレートがあり、湊はそれを読む。


 夢科学 一 梓 教授研究室


「ゆめかがく…?いち?はじめ?何て読むんだ??」


湊は名前の読み方が解らない。

下の名前は「あずさ」だろうが苗字が読めない。何て読むのか気になるが、それよりも気になるのはドアにかかっている【おやすみ中】と書かれたヒツジ型の札だった。


(おやすみ中−−!?お休み中って何だ…?休憩中って事か?)


湊は何だか不安だった。


あまりにも不安要素が多過ぎて…研究室の前まで来てみたのはいいが、湊にはドアしかないように見えた。

変な言い方に聞こえただろうが壁にドアがついているだけで、どう見てもドアの向こうに部屋があるようには思えない。

どこにも窓はないし、あるのはドアの横にインターホンと掲示板だけ。


(何でインターホン−−!?)


湊の不安は益々つのる。


何だか騙されているような気がする……

大学なんて行った事ないから解んないけど、研究室ってこんなもんなのか?何かふざけてるようにしか見えないんですけど…、てか夢科学って何だよ!?もしかして頭の中いじったりとかすんの?それで690円とかありえねーだろ!3食昼寝付きでも割に合わねーぞ!!


もしかしたらヤバイ人体実験とかをされるのではないかと思うと、湊は前に進めなかった。

それでも湊には他に行く所がない。藁にも縋る思いでインターホンを押す。


ピンポーン−−−…


いくら待っても応答がない。

もう1度押そうかと思ったが【1回以上押すべからず】と書かれたシールが貼ってあった。


どうしようかな…?と、湊は腕を組んで悩む。

こういう時、何故か「本当に居ないのかな?」と確認したい衝動にかられ、ドアを開けようとしてしまう人がいる。


湊もその一人だった。


取っ手を掴み回してみると、ドアは簡単に開いた。どうやら鍵がかかっていなかったみたいだ。

げっ…開いた!ヤバイどうしよう−−−まさか開くとは思わず湊は少し焦ったが、まあ、いいやとそのままドアを開ける。

するとそこには部屋はなく、下へと続く階段があった。

どうやら研究室は地下にあるみたいだ。


階段は所々に間接照明がついているだけで薄暗く、不気味な雰囲気が漂っている。怪しさ大爆発なのだが、何故かそういうものに人は惹かれる。

湊は荷物を持って、恐る恐る階段を降りて行く。階段を降りきると右にしか行けず、少し行くとまたドアがあった。


今度はドアに【土足厳禁】と書かれた紙が貼ってある。

さすがにここにはインターホンはないか(笑)と、少しバカにしながら湊は一応ノックをしてみるが、やはり返事はない。

さすがにこれ以上先に進むのは止めるべきかな?と思うが、この先がどうなっているのか湊は好奇心がわく。

「ドアが閉まっていたら引き返そう」と決めて取っ手を回すと、簡単にまたドアは開いた。


無用心だな…無用心過ぎるだろ!!と思いながらも靴を脱ぎ、小声で「お邪魔しま〜す」と言って部屋に入る。


部屋は真っ暗だった。


勝手に入るのだから湊は疚しい気持ちでいっぱいで、ドアを静かに閉めようと神経を集中させる。

こういう時、音を出さないように気をつけても何故かやけに音が響くものだが、ここのドアは全く音がしなかった。


持っている荷物を全て入り口の所に置いて、湊は部屋の中に入って行く。

部屋の明かりをつけようかと思うが勝手に入っている手前、ケータイの画面の照明だけで進む。いい絨毯が敷いてあるのか踏み心地がとても良かった。


研究室というよりは、こじんまりとしたちょっと豪華な探偵事務所みたいな感じだな…と、湊は探偵事務所なんて見た事はないが、想像でそう思う。

ガラステーブルを挟んでソファーがあり、その奥に少し大きめの豪華な書き物机と書棚がある。

湊が部屋の中をもっと詳しく見ようとしたら、足音が聞こえてきた。

どうやら誰かが階段を降りて来ているみたいだ。


湊は焦ってとっさにしゃがみ込み、隠れる場所を探す。

とりあえず机の下に隠れようと、四つん這いになって進む。慌てていたのでケータイで照らすのを忘れていた湊は書き物机の端に頭をぶつけた。


(いってぇ−−−…)


あまりの痛さに頭を押さえてうずくまっていると、足音は段々と近づいてくる。

頭の痛みを我慢しながら今度はケータイで行く先を照らすと、椅子がクルッと回って湊の方に正面が向いた。

椅子が回った事に驚き、気のせいだとは思ったが怖いもの見たさで気になり、湊はゆっくりと座席を照らす。


「何かようかい?」


まさかこんな真っ暗な部屋に人が居るとは思いもよらず、それに照らしだされた顔が幽霊みたいで湊は思わず叫んだ。


「ウギャーーーーー!!!?」


幽霊から逃げようと慌てた湊は、驚いて後ろ手をついたまま後ずさって背中を思いっきり壁にぶつけた。

逃げ場がないと思った湊は、頭を抱え込んでその場にうずくまる。


「大丈夫?」


椅子に座っている人物が聞いてくるが、湊は答えられない。

すると湊の悲鳴を聞きつけ、階段を降りて来ていた人物が慌てて部屋の中に入って来る。


「大丈夫ですか!!教授!?」


入って来た人物が明かりをつけ、全体が見やすくなる。

この部屋の照明は眩しすぎないようになっているみたいで、部屋が真っ暗だったのにいきなり電気がついても目が平気だった。

そして湊が入り口を見るとそこには天使が居た。

その天使が湊の方を見て叫ぶ。


「キャーー!!ゴキブリーー!!!!」


天使の叫びを聞いて湊は自分の周りをキョロキョロと見回しゴキブリを探す。

ところが何処にもゴキブリは見当たらない。

すると天使が湊目掛けて走って来た。湊は意外な展開にドキッと淡い期待をしてしまう。

だが天使は湊の期待とは裏腹に、そのまま湊の顔面を蹴りあげた。


そして湊は気づく。


(ゴキブリって…俺ですか−−−?)


天使は容赦なかった。

記憶が途切れる寸前、湊は思った。


(黒だ−−−天使が黒なわけない…)



そして湊は、人生初の気絶を味わった。







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