7・お願い小川主任!
モニターの青白い照明を浴びながら、青い男が近づいてくる。くどいほど青い。
「ジャファルは今日も夜勤か?」
今や総務の陣野として周知されている、ジンだ。
「変なあだ名で呼ぶな」
「嫌か?いい呼び名だと思うけど。」
どこが良い呼び名なのか。邪悪な印象しか受けない。いや、そんなことより、
「彼女は?」
ニヤァとジンが笑う。
「あ、聞いちゃう?……風呂だよ、ふ・ろ。あーダメダメ、不埒な想像はダメです小川主任!」
いろいろイラっとして、思い切りジンを睨みつける。
「何しに来たんだ。ちゃんと夕飯食べさせたのか」
「そりゃもちろん。香辛料控えめで作ったよ」
「香辛料? そういやお前、中東生まれ……。いや、彼女が元気になれば、それで良い」
ジンは大げさに溜め息をついた。
「あぁダメダメ、そんな見守りセンターみたいな態度。それじゃ始まるものも始まらない!彼女はますます俺にハマって、ご主人様なんて、気になる人リストから転落どころか未記載のまま試合終了になるぜ?いいのか、それで!?」
「……。」
何も言い返せない。それで良い訳などないと、歯軋りで歯が抜けそうなくらい承知している。
「それで、だ。新たな難問が発生してる。ご主人様、何とかならない?」
新たな難問とは、今週から導入した管理番号システムが原因だった。
「今まで管理番号なんて無かったろ?担当者がいたからな。ところが今週からの依頼分は管理番号が付いたけど……。」
「今までの分には付いてない、と」
「そうそう。付けようと思ったら、いちいち全入力しなきゃいけないんだよな。それがすごい手間で。
だからご主人様、総務に出向してタイピスト、どうだ?愛しのマツリちゃんの隣でお仕事出来るぜ。向かいでもいいけど」
提案が甘すぎる。詰めが、じゃなくて文字通り甘い……城野さんの隣……。
「それなら適任者がいる。来週から出向扱いで行けるようにしておく。」
「キャー♡小川主任さすがー!と言いたいけど、なんで他の人!?」
「……主任が出向したら、ややこしいんだよ」
「主任ねぇ……」
ジンが馴れ馴れしく顔を覗き込んでくる。好きで主任やってるんじゃねぇ。入社歴はわずか3年である。思わず顔を背けた。
「オッケー。じゃあ陰で頑張るご主人様のために、来週末は適任者?とご主人様と俺とマツリで飲み会な!夜勤入れるなよ!!」
そんな夢みたいな飲み会……。
にわかに気持ちが上向くのを感じる。自分のチョロさが腹立たしい……が、出来るな、ジンのやつ。冷静さを装って、来週からの布陣を仕込むことにする。
“夜中にすまん。来週から総務に出向を頼みたいんだが、どうだろうか“
“小川先輩の頼みとあれば、喜んで!“
“恩に着る。インコなら、大丈夫だ“
次回、新キャラ登場。




