第95話 十六歳になったぜ
俺は陸上競技の記録会で十種競技において圧倒的な世界記録を達成して再び世界中の注目を集める事になった。
競技を終えてテレビ局で生出演番組にも参加して愛想を振りまいて来たぜ。
この局での話題は既に来年の二月に迫っている、北京での冬季五輪への出場に関しての質問が飛び交った。
実際競技として経験した事のある物が無いので何とも返事がしにくいよね。
局側がご丁寧に北京冬季五輪の開催種目を一覧にしたパネルを用意していて、俺に興味のある種目を問いかけて来た。
俺は、興味があるだけならと前置きをした上で、スピードスケートとフィギュアスケート
アルペンスキーとスノーボードクロスの四種目を上げた。
それ以降の番組展開は、もう俺が出場するのが既成事実のようになっちゃって少し困った。
誘導尋問かよ?
きっと検察庁が犯行の認否を聞くときにも同じような流れなんだろうな? と関係無いけど思った。
それも有るけど後二週間に迫った十六歳の誕生日の当日に正式にプロ宣言して『プロゴルファー翔』が誕生する事は、番組内でアピって置いたよ!
俺の四大大会挑戦を追いかけるドキュメント番組は、この局では無いけど今のテレビ局で俺が参加する競技に関してアンチ発言を出来る局もほぼ無いからね。
実際国内キー局でも一つだけ俺が全く出演しない局が有るんだけど、その局には当然俺関係のCMを流すスポンサーも一切CMを出さないし、営業的にかなりヤバい状況になってるそうだ。
俺は別に断って無いけど今泉さんが徹底してそこ関連の話は避けているんだよね。
まぁ歌番組系ではGBN12は流石に出演を断って無いから、きっとそのうち出演する事もあるかもね?
◇◆◇◆
ゴールデンウイークを終えた初登校の日に、朝食を如月先輩を交えたいつものメンバーで食べていた。
「ねぇそろそろインターハイの地区大会が始まるけど日程上は問題無いの?」
「ええ大丈夫ですよ。俺と香織が参加するからテレビ局絡みの案件になってるそうですから俺達に出演料とかは一切ないですけど、剣道協会なんかは地区大会から高額の番組放映料で結構喜んでるんじゃないかな?」
「ふーん、何だか住んでる世界が違うよねぇ。こうやって一緒に朝ご飯とか食べれてるのが嘘みたいだよ」
「先輩は去年はインターハイではどうだったんですか?」
「三位だったよ。今年は優勝は香織に持ってかれちゃうのはしょうが無いから、二位は取りたいかな?」
「それでも十分凄いですよね」
「私の今年の順位はトーナメント表との戦いだよ。香織との対戦さえ決勝までなければそこそこの自信はあるんだけどね」
「恐らく大丈夫な気はしますよね?」
ゴールデンウイーク明けの学校では、この高校の所属として初の大きな大会での世界記録での優勝を全校生徒の前で表彰された。
少し照れくささはあるけど、まぁ頑張ってスピーチもしたぜ。
「瀬古先生と先輩方の協力の下で成しえた結果です。勿論皆さんの応援も力を与えて頂きました。更に上を目指して世界陸上でもセンターポールの日の丸を目指して頑張ります」
我ながら無難な言葉だぜ。
この一週間でのグーグル検索ワードでは世界中で『デカスロン』が一番検索されたんだって。
テレビ局も少しでも俺絡みの番組を作りたくて、先日のシューズプレゼント企画の当選者への商品の受け渡しも、たったそれだけの事なのに、当選者を番組招待して、その場でサインをして一緒に記念撮影をすると言うイベントになってた。
なんだか、当選者が全員テレビ局の出演依頼に快諾して東京までシューズ貰いに来るだけの為に集まるとか番組の都合上としか思えない策謀を感じちゃうよね?
お陰で俺モデルのこのシューズは、全国的にどころか世界中でバカ売れで、メーカーさんは大喜びらしいと黛さんが言ってたよ。
俺のマンションの二階にオープンした、このメーカー直営のショップは当初ゴルフグッズを専門に扱う予定だったけど、フロアを三階まで広げて、俺絡みのモデルはどの競技の物でも扱うパイロットショップへと改装されていた。
まことしやかに、ここで買い物すれば俺と会える可能性が高いとか、SNSでも拡散されて連日凄い人で溢れかえっている。
そう言えば記録会の時に行った募金活動でも総額三億円にも上る寄付が集まり、更に俺が世界記録を出したことに拠る賞金を、全額寄付したことで難民支援活動も世界的な流れになっている。
インスタなんかでもハリウッドセレブ達が、次々と活動への協力を表明し難民支援ソングの外国語バージョンなんかは、GBN12とアメリカのミュージシャンとのコラボバージョンの制作発表も行われたので、世界陸上までには、全米ビルボードもトップランキングが確実と目されてるよ。
その発表が行われたら世界中の音楽産業も次々タイアップを申し込んで来て、ディズニー映画みたいに各国バージョンが作られる事になった。
GBN12のお姉さん達も十二か国語にも及ぶ外国語バージョンの歌詞を覚えるのに必死だったよ。
テレビ局の凄いのは、その各国語バージョンを覚える様子でさえ、ドキュメント番組に仕立て上げちゃうところだ。
香奈が覚えるの面倒とか言って、香織とアンナと遊真を引き連れ、チェルノブイリでポイントを稼ぎ四人とも言語理解スキルを獲得したのは内緒だけどね。
「あーあ、でもこれで香織の出演ドラマや映画の外国語吹替の仕事で私が代役するのが出来なくなっちゃったね……」
とアンナだけは少し不満そうだった。
そんな風に俺達は忙しく過ごしながら、今日は五月十八日だ。
俺は、学校の講堂で放課後にメーカーさんの企画によるプロゴルファー転向の合同記者会見を開いていた。
俺の両隣には黛さんと倉田さんも座り、ゴルフ協会の理事長なども同席する中での発表だった。
来月六月には初戦となる全米オープンに参加する事も正式に発表された。
高校生の間は長期休暇期間以外では、国内などのトーナメントには参加しない事も報告したので、ちょっとテレビ局側は残念そうだ。
今年の八月は予定一杯だから休暇期間中も殆ど無理なんだけどね。
一日でも早く、免許を取得しに行きたいんだけど、妙に顔と名前が知れ渡っている現状だと高校生な俺が平日にしか行われない免許試験に行けば炎上案件になりそうだし、少し待って欲しいと今泉さんに言われちゃって、ちょっと悲しかったぜ。
記者会見が終わった後は、俺の誕生日会が開かれる事になってた。
遊真が幹事で、クラスメートと部活関係の人が集まって、マンション四階の共有スペースで開かれた誕生日会は高校生らしくてなんだかいいなと思ったぜ。
それでも俺やGBN12のメインの四人が居る誕生日会の会場は、凄い盛り上がったけどね。
節度を持って十九時には誕生日会は終了した後は、今度は伊豆の別荘で内輪の二次会になった。
『カラーレンジャーズ』のメンバーで集まって、そこそこ楽しんだ。
リンダがカーネル大将と、ジョージからのメッセージカードも持って来ていて、スクリーミングイーグルの俺の誕生年のボトルの差し入れもあった。
アンナと香織には少し睨まれたけど美味しくいただいたさ。
来週はボクシングの試合だからボクシング部で少しトレーニングしないとね。




