第84話 世界の危機は唐突に始まった。
翌朝早くから稽古を終えた香織と如月先輩が俺の部屋を訪ねて来た。
「おはよう翔君、今日は私が朝食の用意をするからね」
「あ、おはよう香織、如月先輩もおはようございます」
「松尾君おはよう。凄いねこの東京のど真ん中でこんな生活してるとか……憧れの生活だよ」
そんな話をしてると綾子先生とアンナもやってきてみんなで朝ご飯を食べた。
「翔君、如月先輩も凄い素敵なんだけど又ライバルが増えちゃうの?」
と、アンナが言い始めた。
「そんな事有る訳無いじゃん。香織と稽古をする為に来てるだけだよ」
「私は、昨日と今日だけでもう十分に松尾君のお嫁さんになりたい! って思ってるよ?」
「ちょっ、先輩そんな事言うと場がカオスになるから勘弁して下さいよ」
平和な朝の光景だった……
「翔君今日は、二階のスポーツメーカーのパイロットショップがオープンだったよね? 黛さんと倉田さんは基本ここのショップに居る事になるんだよね?」
「そうですね綾子先生。倉田さん達もここのマンションに引っ越して来たし、何だかガッツリ関係者だらけになって来ちゃいましたよ」
「健人さんもこのマンションに住むんでしょ?」
「そうだよ、流石にトレーナーの人は此処の家賃は厳しいみたいだけどね」
「先輩も朝稽古来た時は、朝ご飯は毎日ここで一緒に取るでいいかな? 翔君」
「うん全然構わないよ。 ご飯は人数多い方が楽しいしね」
「でもそんな事、他の子の耳に入っちゃうと毎朝凄い人数が押し寄せてきそうな気がするよね?」
「先輩、一応それ系の話は学校ではしないで下さいね?」
「了解だよ、私もライバルが増えるのは嫌だし秘密は守るよ」
朝ご飯を食べ終わると、香奈たちも合流して学校へと向かった。
一応今日は防具と道着を学校の剣道部のロッカーへと置いておくことにしたので、香織と俺は大きな荷物を抱えての通学だ。
「香織ちゃんも翔君も、予備の防具とか持ってるって羨ましいな」
「うちは、実家が竹刀や防具も作ってますからね」
「そうなんだね、今度私の防具も香織ちゃんの所に頼んでいいかな?」
「はい、お安くしておきますよ!」
今日は、流石に絡まれる事も無く無事に学校に着いたぜ。
放課後を迎えると、今日は遊真はホープランドで難民支援の活動をするって言って速攻で帰って行った。
遊真は難民支援に真剣に取り組んでるよな……
俺も見習わないといけないけど色々忙しすぎるぜ。
GBN12のメンバーたちは、全員事務所との交渉も上手く行って翔の会社に所属する事になった。
それに伴って、流石に綾子先生だけじゃマネジメントも困るから、後二人程採用する事になったよ。
今日は、この間言っていた難民支援プロジェクトの応援ソングの件で、冬本さんと今泉さんと綾子先生が打ち合わせをして、冬本さんも計画に凄い興味を持ってくれたので、楽曲の提供を含めて一気に話が進む事になった。
全国の冬本さんの展開するアイドルグループの劇場でも支援を呼びかけ、各グループからも一曲ずつ難民支援を訴えかける楽曲が発表されて、それを纏めたアルバムやDVDが発売され、売り上げからも支援金が供出される等の企画が次々と上がって来たそうだ。
世界的な流れになればいいけどなぁ。
でも、支援はあくまでも一時的な問題解決にしかならないから、自立するための産業をホープランドで創出しなければいけないよね。
リンダや遊真がきっと形にしてくれるはずだ!
俺は、世界最大のサファリパークをオープンさせるための整備をしなきゃね。
とりあえず今日はボクシング部の部室へ向かった。
ボクシング部へ向かう途中で、相撲部の土俵が作ってある場所が有ったので、覗いてみたら高校生でもみんな百キログラムを超す巨体で、股割りなどの柔軟体操をしていたが、あんな巨体でもびっくりする程体が柔らかいんだなぁって感心したぜ。
あんまりガッツリ見てると、呼び止められそうだから早々にボクシング部へと向かった。
意外に校内だと文化祭の時みたいに騒がれる事って無いんだなぁ。
その方が助かるけどね!
ボクシング部に着くと輪島先生に挨拶をし、先輩部員やボクシングの特待で来ている一年生部員の人達を紹介して貰った。
去年のアンダージュニアの大会で見かけた様な人も居た。
階級が違うから、会話や対戦はして無かったけどね。
去年の文化祭の時に対戦した先輩は、今年は三年生で部長になっていた。
「先輩、よろしくお願いしますね」
と挨拶をして、一時間程一緒に汗を流させて貰った。
他の部員の人達にも、参加が中途半端にしか出来ない事をお詫びして「出て来た時はよろしくお願いします!」ってちゃんと伝えて置いたぜ。
結構大事な事な気がするしね!
ボクシング部の部室を後にしたタイミングで斗真さんから着信があった。
『翔君、今大丈夫か?』
『どうしましたか?』
『ちょっと電話だと都合が悪いな。拠点の方で話そう』
『了解しました』
俺は転移で拠点へと移動すると、斗真さんも転移門をくぐって拠点へと現れた。
「何があったんですか?」
「沖縄で米兵が基地内で銃を乱射して死亡者が出ている様だ。ちょっとお願いできるかな?」
「解りました。原因などは解っているのですか?」
「俺の所にも、カーネル大将から一報が入っただけで詳細が全く分からないんだ」
「とりあえず行って来ます」
リンダに連絡を入れ、直ぐに伊豆の拠点に呼び寄せると俺はTBと入れ替わってリンダと共に現場のキャンプハンセンへと転移した。
リンダはすぐに、カーネル大将からの特使としてこの基地の司令官のアンダーソン大佐に状況を聞きに行った。
俺は、TBの姿で事件現場に向かった。
こいつらヤバイ……
俺が不思議に思っていたのは一人にしろ複数犯であったにしろ、軍内部で銃を乱射したならすぐに射殺なり爆殺なりの対応が出来る筈なのに、それを出来ずに俺に話が回って来た事だった。
犯行グループは四人の軍人だった。
何処か視点が定まっていないような気がする。
結構な大きさの爆弾が四人の側にあったが、あれは……
俺には見覚えがあった。
この間エリア51を解放した時にヤンキー原発の跡地に運んだ核爆弾だ。
あんな重い物をどうやって運んで来たのか凄く気になるし、明らかに何かに操られている米兵が何故ここで騒動を起こそうとしているのかも気になる。
しかしこの状況では海兵隊の部隊は反撃も出来ないよね。
状況はまったく分からないが、俺は猫の姿のまま近寄り爆弾に触れてアイテムボックスに収納した。
とりあえずこれで危機は回避できたはずだ。
いきなり爆弾が消えたことに拠り焦った実行犯が、側に居た黒猫の俺に対して銃撃を行って来た。
しょうがないから四人の身体に次々と触れて着衣や武器もアイテムボックスに収納して、素っ裸のガチムチ四人をその場に放置して俺は姿を消した。
まぁ何も持っていない状態の実行犯なら後は海兵隊内部で対処するだろう?
リンダに念話を入れる。
「対象は無力化した。俺は先に拠点に戻っているから、後で拠点に戻ってきて話を聞かせてね?」
そう伝えて拠点に戻り自分の身体に戻った。
斗真さんに連絡を入れる。
『ミッションコンプリート』
『翔君ありがとう。まだ原因が掴めていないから俺はしばらく本部に籠って対応できるように待機しておくけど、何かあったら連絡をするね』
『了解しました。カーネル大将に連絡を入れるのは構いませんか?』
『ああ、それは構わない。何か重要な情報があれば教えて欲しい』
『はい、内容によりますが日本にかかわりがあると判断した内容は連絡します』
『頼む』
念話を終えて情報がネットなどではまだ流出していない事を確認した頃に、転移門を使ってリンダも帰還して来た。
「リンダ、カーネル大将に連絡して、今から行ってもいいか聞いてくれ」
「了解」
アメリカ時間では早朝だったが、既にホワイトハウスの執務室で状況把握に努めていたカーネル大将にリンダが連絡を取り執務室へと転移した。
部屋の中には、副官のオズワルト大佐とカーネル大将の二人だけだった。
「カーネル大将、状況はどうなっていますか?」
「翔君、ありがとう。現在翔君が無力化してくれた犯行グループを拘束して尋問中だが、四人とも完全に狂っているとしか考えられない言動を繰り返してるそうだ」
「カーネル大将? 恐らくこの爆弾ヤンキー原発跡地に持って行ったエリア51のですけど、全部で十二個あったのは数の確認できていますか?」
「おい、ここに核持って来てるのかい? ホワイトハウスだからジョージも居るんだが? だが、ヤンキー原発跡地は厳重に部隊が警戒しているから、あそこから持ち出すのは不可能だと思えるが?」
「とりあえず至急数量を確認してください」
「解った」
それからすぐにヤンキー原発跡地の守備部隊に連絡を取り内部の確認を行わせると、四発の核弾頭が消失している事が確認された。
「翔君、困った事になった。緊急のミッションを要請したい。消失した四発。残り三発だな、それの現在地の確認と回収を頼みたい。報酬はジョージが弾むはずだ」
「了解しました。とりあえずヤンキー原発跡地から何者かが現在のセキュリティをくぐり抜けて持ちだしているので不安があります。これ以上の消失を防ぐ為に一度俺が回収していいですか?」
「緊急事態だからそれが一番安全であろうと私も思う。よろしく頼む」
一体何が起こり始めたんだろう……




