第56話 変わりゆく世界の始まり【後編】
朝早くから斗真さんの電話によって起こされた。
「お早うございます。何か起こったんですか?」
「まだ公式には発表していないんだけど済州島で魔物が発生しているみたいだ」
「規模とか解りますか?」
「今第七艦隊から偵察ヘリが出ているんだけど詳細は不明だね。ファンタジー系の本に出てくるようなゴブリンやオークが発生しているようだ。半島国家が壊滅して以降済州島は人口が増えていただけに被害の規模が心配だ」
「恐らくゴブリンやオークなら下位種であれば通常兵器でも対処出来るはずですが、相手はモンスターですから迷わず人を食料として襲ってきます。更にこの二種類の種族は雌であれば種族を問わず繁殖用の苗床として襲う習性がありますので第七艦隊の空母が近くにいるなら住民の避難を急いでください」
「解った。カーネル大将に連絡を取って伝えるよ。出来れば翔君も出動をお願いしていいかな?」
「解りました。取り敢えず『COLOR RANGERS』で招集をかけて向かいます」
念話で全員に連絡を取りホープランド内の拠点に十人全員が集まった。
なぜか香奈はピンク色のウサギの着ぐるみのパジャマ姿だった。
その姿を見た、アナスタシアが『COLOR RANGERS』のコスチュームを着ぐるみに変更しようとか言い出した。
「動きにくそうだし却下」
「動きやすそうならいいのね、私がかっこかわいい着ぐるみを提案させてもらうわ」
アナスタシアがどうやら諦めきれないらしい。
「半島国家の済州島に魔物の発生が確認されたみたいだ。敵はゴブリンとオークが今の所確認されてるけど、強くは無くても一般の人には十分に脅威になる。既にアメリカ第七艦隊の海兵隊が対処に向かってるけど、もし上位種が出現した場合は恐らく対処できないと思う『COLOR RANGERS』として出撃する」
十人揃っての出撃は初めてだから派手に行こうぜ!
「「「了解」」」
綾子先生が学校に休みの連絡を入れていたけど、俺は一緒に連絡をするわけにもいかないので香奈と俺はブッチになっちゃうな……
済州島に転移した俺達は一番の繁華街になるカジノが立ち並ぶ地区に展開した。
「どこから湧き出しているのかの発生源を突き止め結界で封印するまでがとりあえずの任務だな。魔物は見つけ次第に殲滅で一般人を見つけた場合は出来る限り保護だけど、それは基本海兵隊に任そう」
方針を決めて二班に分かれて動き出す。
俺の班はパープル、サクラ、オレンジ、シルバーで残りのメンバーはブラックに任せた。
街中での銃声が聞こえてくる。
現状では索敵ができるのは俺と香奈の他に『スカウト』JOBを獲得した美緒の三人だけだ。
オークとゴブリンの対処では銃火器も有効なので俺のアイテムボックスのストックから全員に自動小銃を渡した。
銃弾も大量にストックがあるので各自のマジックバッグに収納させている。
銃撃に関してはリンダのソルジャーJOBが武器威力アップの特殊スキルを有している。
オレンジの銃撃を受けたゴブリンは爆散したように倒れていく。
スプラッターは苦手だぜ……
地上に現れた魔物のドロップは期待できないがゴブリンが所持するナイフなどを使えばチェルノブイリのゾンビにもダメージが入るようになるから軍の人たちのレベルアップも現実味を帯びてきたな。
俺は索敵スキルで発生源を探るがどうやら中心部の火山の火口のようだ。
山肌を降りてくるゴブリンとオークの姿を確認できた。
人が居ない事を確認して殲滅系の魔法を使いながら火口に近寄る。
火口を大規模結界で封印してとりあえずの封鎖を終え斗真さんに連絡を取る。
「斗真さん、発生源は中央部の火山の火口でした。火口の封鎖はしましたがどれだけの魔物が溢れているかは把握出来ていません。被害状況はどんな様子ですか?」
「翔君ありがとう。済州島は元々六十六万人以上の人口を抱えていて、半島国家の壊滅以降は更に島に流入した人口を合わせると八十万人にも上る住人がいる。市内中央部の惨状から考えれば被害は一万人を超えそうだ」
「解りました。索敵を行いながら完全な殲滅まで行動を行いますけど一つお願いがあります」
「なんだい?」
「俺と香奈は学校さぼって来ちゃってて、綾子先生は休みの連絡入れてたけど俺たちは一緒に連絡するわけにもいかないから、何か言い訳作っておいてください」
「それは難しい要求だね……何とか考えておくからそっちはよろしく頼むね。出来れば住民の避難も手伝って欲しいけど何か手段はないかい?」
「無いことはないですけど転移門を使う事になりますので俺たちの存在の追求とかいう事態になると今後動きにくいんですが?」
「そうだな、でも人命には代えられない。安全地帯の構築だけお願いできるかな? 」
「解りました。俺が魔法で隔離した地域を作ります。その内部の魔物を集中して討伐して安全地帯にしますから、そこに誘導させてください」
そして俺は、属性魔法をある程度取り戻したビアンカと協力して、二キロメートル四方を囲む安全地帯をセラミックの壁で覆い、その壁の内部にいる魔物を殲滅して安全地帯の構築をすることにした。
「思ったより数が多いな。隔離地帯だけでゴブリン百、オーク二十くらいの数がいる。上位種が十パーセントは存在するし、ジェネラル種も居るはずだ。現時点では俺以外のステータスではジェネラルの討伐は無理があるから発見次第連絡をくれ」
俺たちが隔離した以外の地域では第七艦隊の空母から発艦した戦闘爆撃機の攻撃も始まっていたが対応できたのはリーダー種までのようだった。
ジェネラル種の攻撃により戦闘ヘリ二機、戦闘機三機が撃墜された時点で米軍戦力は引き上げた。
隔離地域では怪我をした人たちをマリアンヌがエリアヒールで治療しジェネラル種は俺が討伐をした。
その後は島内全域を俺がジェネラル種だけに限定して討伐をして回り、とりあえず一度集まり今後の行動の指示を仰ぐ事にした。
「斗真さん全体の被害状況とかはどうなんですか?」
「予想よりひどい状況だね被害者は十万人を超える状況で米軍も他国のために少なくない被害を出して今後も救援を続けるかどうかでホワイトハウスでも判断が遅れている。当然日本としても正式に海外派兵を行う判断は出来ないし困った状況だね」
「済州島の住民を全員避難させる方針を決めてもらうほうがいいと思います。火口は一応結界で塞いでますが横穴を開けられたりすると簡単に湧き出してきますので」
「そうか、俺の独断での判断は出来ないが、それしか手はなさそうだね」
◇◆◇◆
『COLOR RANGERS』のメンバーはホープランドの拠点に戻り自分たちなりの方針を決める事にした。
「香奈の言う通りにゲームの世界が元になったとしても俺たちが居たイルアーダは既にゲームプレーヤーらしき存在は居なかったよな?」
「そうだね、あの世界に違和感はあったけどゲームプレーヤー風な生活感のない存在は居なかったわ」
「ヤリマンスキーはあの世界の歴史はどう認識してるんだ?」
「ああ、俺の先祖の記録からしてもあの世界の歴史は五千年以上は記録が残ってるな。ただのデータとして考えるのも不自然すぎるほどに多種多様な生物が存在していたしな」
「やっぱり鍵になるのは【邪神】と【創造神】か、今ある四か所の発生源の攻略を急いで、そこにつながるはずのビッチ姫と四天王に話を聞くしかなさそうだな」
俺たちはどんな状況になっても対処出来るように今は少しでもレベルを上げよう。
今日の討伐でも再認識できたけど地上でいくら魔物を倒してもレベルは上がらないし、どうせ戦うなら魔素のある場所で戦わないと勿体ない。
何だか忙しくなりそうだな。
◇◆◇◆
済州島に関しては半島国家は立ち上がったばかりの新政権では対処ができず米軍も実害が出たにもかかわらず現在の半島国家では補償も貰えないので第七艦隊は撤退を決めた。
島民は半島に生存者の移動を促し済州島は生活圏としては放棄される事になった。
そして今回の出動に関してはどこからも報酬が出なかったので、島民の避難が行われた後で隔離地域も元に戻して結界も解き放った。食料と苗床になる人類が存在しなければ爆発的に増加することもないだろうし俺たちの魔石採掘場にはなるな。
住人が戻ってきても困るのでゴブリンとオークは自由に徘徊させておくことにして俺たちは火口内の探索のみを行なう事にした。
魔石採掘場として活用すれば魔石を使った効率的な発電とかも研究できるし、まぁいいかな。




