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出戻り勇者は自重しない~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~  作者: TB


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第38話 健人さんの世界戦の交換条件

今日は陸上競技の千五百メートル走予選、二百メートル走の予選、準決勝を戦い、次のステップへと進み鉄板焼の銘店での夕食を楽しんだ。


 ここで、スペツナズから俺とのコンタクトを目的に来日している、アナスタシアとイヴァンがJCIAの長官である『土方斗真』さんと顔を合わせる事態になって少し心配したんだが、その心配は……


 俺が鉄板焼のお店から出て、選手村へと戻るとすぐに斗真さんから連絡があった。


「翔君、今日のカウンターの端に座っていたロシア大使館員は知り合いなのかな?」


 当然疑われた……


「知り合いじゃありません。と言っちゃうと嘘になりますから知ってはいます。でも現時点では日本や西側諸国に対しての敵意のない存在ですね。彼らはヤリマンスキーの行方不明から彼以上の能力者の存在を予想し俺に辿り着いたようです」

「そうか、十分に気をつけて欲しいな。何か国防に対する問題が起こりそうな場合は必ず連絡を欲しい」


「斗真さん、カーネル大将に頼んでおいて欲しい事があります。チェルノブイリ周辺の衛星写真情報を出来るだけ詳細に集めておいて頂けますか?」

「チェルノブイリ? そこに何か問題が在るのかい?」


「調べて頂ければ何らかの答えが出るかも知れません。まだ現時点では俺も確認はとっていませんので、あくまでもヒントとしての提案です」

「解った。翔君も無理して一人で抱え込んだりしないようにね」


「ありがとうございます」


 やっぱり当然斗真さんは気付くよなぁ。

 まぁ今は何も出来ないし、とりあえずはオリンピック頑張らなきゃね。


 ◇◆◇◆ 


 翌朝、相変わらず朝の情報番組は俺一色で賑わっていた。

 今日の出番は二百メートル走、決勝競争の一回だけだ。


 しかも、今日の一番最後の競争だから夜の十時近くのスタートになる。

 年齢的にその時間帯の競技参加はどうなの? と言う議論が朝からもっともらしく語られているけど、全てはテレビ局の都合で決めてるだけでしょ! っと盛大にツッコミを入れたくなるぜ。


 でもそのお陰で少なくとも競技終了後のインタビューとかは、出演しなくていいから気楽だよね。

 GBN12もその時間帯はメインの四人は応援参加は出来ないから、今日は完コピパフォーマーの応援だって言ってたしね。


 午前中は何をして過ごそうかな? と思っていたらボクシンクジムの加山会長から電話が掛かってきた。


「翔、ちょっと頼まれてくれねぇか」

「なんですか突然?」


「あのな健人の世界戦が決まりそうなんだが、そのチャンプの弟が五輪のボクシングに出ていてな、お前とスパーリングさせてくれるなら、健人との世界タイトルマッチ受けると言ってるんだ」

「あーそう言うことなんですね、いつなんですかそれ?」


「今日頼みたいんだが無理か?」

「いきなりすぎでしょ‼」


「このチャンス逃すと世界戦が半年は遅れそうなんだよ頼む」

「解りましたよ、今から出ますけど何処に行けばいいですか?」


 都内のボクシングジムを指定され、俺は他の人に連絡すると絶対面倒なことになると思ったから一人で向かう事にした。


 指定されたジムを尋ねると、先日俺が大御所タレントと折り合いがつかなくて、途中で帰ってから一度も番組には出ていない局のクルーがカメラを構えていた。

 なんか色々面倒くさそうな気がするけど怪我しないように気をつけて軽めに相手しよう。


 加山会長も当然来ていた。


「翔、悪いなこれを受けてくれれば健人の世界戦が決まるから勘弁してくれ」

「しょうが無いですね。今回だけですよ? こんなのは、で、誰の相手をすれば良いんですか」


 と訪ねたら、二人の欧米系のいかにもボクサーって言う感じの人が現れた。

 より強そうな気配を出した人が手を差し出してきた。


「Hello カイザー・スミスだ。今日は弟のスパーリングパートナーをして貰えるんだって? 二百メートル走の決勝が無事走れるようならいいけどなHahaha」


 カイザー・スミスか……WBA・WBCの統一バンタム級王座を二年間防衛し続けるチャンピオンだったな。


「相手はカイザーさんじゃ無くていいの? 俺に一発でも当てられるなら夜は棄権でも構わないよ、弟君じゃ無理だと思いますよ」


 と手を握り返しながら挑発をし返してやったぜ!


「俺がやっちまったら、悪役扱いされちまうだろ『JAP HERO』心配しなくとも、約束は守るから俺は健人を半殺しにするだけで我慢してやるさ」


 弟くんはライト級のアマチュア全米チャンプで、五輪終了後のプロA級デビューも決まっているボクシング一家らしかった。

 テレビカメラが回ってるからヘッドギア付けなきゃ色々言う連中でてくるなと思って付けたけど弟くんはつけようとしない。


 完全に舐めきってるよな。


「会長、スパーって当てていいんんですか? まだ準決勝と決勝残してるんじゃメダル無しで帰国しなきゃいけなくなるかも知れないですよ?」


「あーそりゃ可愛そうだな、でも本人がそれでいいって言ってるんなら、構わんのじゃないか? 三分二ラウンドの予定だから、翔が疲れない程度で相手してやってくれ」


 出来るだけ相手に聞こえるように会話していると、一応スミス側の通訳が伝えたようで、余りのこちら側の余裕のある様子に少し慎重になりヘッドギアを付けた。


 その判断は正しいと思うよ!

 ゴングが鳴りスパーリングは始まった。


 最近のスパーは、俺は健人さんか真司さんしか相手して無かったけど、やっぱりアマチュアってこんなもんなのかな? 真司さんもこの間の試合で日本チャンプにはなったけど、金メダル間違いなしって言われてるこの弟君の動きは、真司さんにも遠く及ばないかも。


 最初のラウンドは三分間一発もパンチを出さずに全て避けきった。


「どうした避けるのに必死で一発も手が出てないじゃないか」

 

 と、カイザーが俺を挑発してくる。

 こいつ本当にそう思って言ってるのかな? だとしたら試合さえ実現したら健人さん間違いなく勝っちゃうな……

 だって健人さんとのスパーだと流石にこっちも反撃しないと三分避けきる自信はないし。


 まぁ弱いやつに合わせて時間を無駄に使う必要もないな。


 「ちゃんと避けろよ」


 一応アドバイスをしてやったぜ! 二ラウンド目のゴングがなると弟君のパンチの全てに、いつも健人さんとしてるのと同じ様に全部カウンターを合わせた。


 全然対応できずに半分以上のカウンターがヘッドギアの上から突き刺さり尻餅をついた。

 結局大事を取って、そのままスパーは終わりになった。


 外傷は無いと思うけど精神的に立ち直れるかな?


 会長は、とってもしたたかなので、テレビカメラが構えている前で、健人さんとカイザーの世界戦をはっきりと約束させて、一緒に昼ごはんを食べに行った。


 勿論会長の奢りだ。


「翔、すまねぇな。俺ん所じゃどうしてもジムとしては弱小だからな、世界戦を決めるためには、パフォーマンスも必要だったんだ」

「まぁ会長の頼みだったらしょうが無いですけどね、でも加山ジムのレベル、会長が思ってるより全然高いかも知れませんよ? あの弟くんが金メダルレベルって言うなら、四回戦の二人でも今なら同じレベルだと思います」


「そんなにか? 確かに前よりは強くなってると思っては居たが、毎日一緒に居るとどれだけ強くなってるのかが解らなかったからな、やっぱり翔の影響はでかいな」

「早くボクシングだけでご飯が食べていけるように、五人全員のマッチメークを急いであげて下さいね」


「おう、それは任せておけ、あいつら全員チャンプって呼ばれるようにしてやるぜ」

「健人さんは今でもカイザーといい勝負出来ると思いますが、あと一つ何か決め手が欲しいですね」


「ほう、翔が言うなら期待できそうだな。帰ってから健人と話して、世界戦までには必殺技考えるぜ」

「楽しみにしておきますね、会長さっきスミスがA級デビューの予定だって言ってたじゃないですか?」


「ああ、そうだが?」

「俺はA級デビューは難しいですか?」


「そうだな五輪金メダルかそれに準ずる成績が必要になるからな、アマの世界タイトル狙ってみるか?」

「そうですね、A級デビューなら二戦目で日本タイトル、三戦目で世界タイトルも夢じゃないですし、出れそうな大会あればお願いします」


 折角テレビ局が来ていたが、スミス側のアピール取材をしたかっただけみたいで、当て馬の俺ばかりが目立つ映像はそのままお蔵入りになった様だ。


 この局は敵認定で良いのかな? でもなぁ仲の良いタレントさんで味方を作って置かなくちゃ、この間の大御所タレントとかにも嫌われてるのは間違いないし、俺だけなら良いけどGBN12はマスコミを敵に回すわけにはいかないからね。


 全部と仲良くしなくてもいいのかな?


 こういう事は自分で考えるより、今泉さんとかの意見聞いたほうが良いかもね。

 あれ? そういえばさっきご飯食べた時にアナスタシア居なかったな。

 何か有ったんだろうか?


 ◇◆◇◆ 


 俺は夜の陸上競技が始まるまでの間に、両親と今泉さんと綾子先生の四人で集まって、マスコミへの対応とかを今後どうしていくべきか話し合った。


「そうですね、何処とも同じ様に仲良くするのは理想論ですが、それだと実際には出演料の交渉などでも差が付かなくて、こちら側サイドとしては何も利益がないのが事実です。何処か一つは敢えてこっちから無視する事で、他の局も出演すれば間違いなく数字が稼げる翔君を逃したくない気持ちが強く働いて、契約上も有利になると考えます」


 と、今泉さんが切り出した。


「でもネットとかで炎上しちゃったりしないですか?」

「それは一定以上の有名人には必ずアンチファンというものが湧き出してきます。逆に言えばアンチの居ない間は大して人気がないことの証明でもありますよ」


「そうなんですね、でも出来れば敵は少ないほうが良いな、何か有効な手段とかありますか?」

「それは、より力のある人を仲間に引き込んでいれば良いんですよ。具体的にはですね、仲良くしておいたほうが良いのは、まず私と同じ職業の人間ですね、法律家を経験してるタレントの人達は、いざという時心強いですから」


「狙って仲良くなるのって難しいですよ」

「普段どおりの翔君であれば問題無く、仲良くなれますよ。それだけの実績を持っていますし。こちらから弁護士が出演するようなバラエティ番組を幾つかピックアップして出演交渉しておきましょう」


「その辺りは今泉さんにお任せしますね。綾子先生は今後、今、俺と今泉さんが話したような事を、俺抜きで決定する権限を持って、テレビ出演のスケジュール管理をお願いする事になりますから、少しづつ慣れて下さいね。まだ半年以上は先ですけど」

「解りました」


「後は、政治経験者のタレントさん辺りも仲良くなっておけば、色々融通が効きますよ」

「その辺りは今泉さんが母さんと話して決めておいて下さい、大まかな方向性が解っていればそれに合わせて行動できるように努力はします」


 まぁ結局は俺の好きな様に行動して問題ないみたいだ。

 あくまでも俺はタレントじゃないから、媚びる必要は無いし、ただ保険的に仲良くして置いた方がいい人は居ますよ。


 って言う事みたいだ。


 ミーティングも終わって、いよいよ陸上最初の金メダルを狙っての出陣だ!

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