第36話 アナスタシアの実力と陸上競技のスタート【前編】
昨日で競泳競技も終了して、俺は出場七種目の全てで金メダルを獲得して日本中を沸かせた。
朝のバラエティ番組でも繰り返し俺の七回の金メダル獲得シーンを放送していて、街頭インタビューとかでも沢山の人が応援メッセージやお祝いの言葉を掛けてくれる映像が流れてたが昨日のお昼のテレビ出演中に、体調不良でその後の番組出演のキャンセルをして帰宅した事が心配される報道もあった。
俺はバラエティタレントではないから失礼な扱いに対しては媚びるつもりも無いし、それで番組に呼ばれないなら全然構わないしね。
どうせ出演するなら、気持ちよく出演したいから好意的な番組なら全然嫌じゃないけどね。
でも、俺の昨日の体調不良の原因は、お昼の番組の大物司会者の心ない発言に在ったと、ネットでは実しやかに書き込まれてあったけど……事実だよ!
でも公式には発言しないから、そこの局が今後どんな対応するかは、じっくり見定めさせてもらおうかな。
当然番組オファーは今現在何処の局からも凄い数が来てるんだけど、同じ時間帯のかぶりだと、基本他の局を選ぶ事にはなるけどね!
それよりも問題はアンナと香織だ。
昨日は午後から同じ番組に出る予定になってたんだけど、俺が機嫌損ねて体調不良って言って帰った後に凄い心配してくれてて、でも俺は個人用のスマホ持たずに外出してたから全く気にすること無く、のんきに綾子先生とデートしてたんだよね……
帰ってから二人に弁解のメールを送ったら直ぐに電話が掛かってきて結局二時間以上電話で話してたりしたから余計に疲れちゃったよ。
でも今日はGBN12も一日だけ応援活動はOFFだから、俺はアンナと香織の二人と一緒に一日付き合う約束した。
俺は明日からの競技の確認で午前中は国立競技場に顔を出して、明石さんと打ち合わせだけどね。
でも結局打ち合わせにも、アンナ達も付いて来ちゃったんだよね。
俺が国立競技場に姿を現すと当然のようにテレビカメラが俺達三人を捉え、競技場の大型プロジェクターにでかでかと映し出された。
すると、これまた当然のように競技以上に凄い大歓声が巻き起こって一瞬競技が中断しちゃうハプニングになっちゃったよ。
よりによって、今行われてた競技は男子走幅跳の決勝だったから、世界記録保持者の俺に対しての歓声はチョットしょうが無いのかな?
俺は、明石さんの居る場所へ行って明日の予定の確認をしてから「これ以上居ると会場の収まりが付かないから帰りますね」と言って、観客席の方へ手を降って競技場を後にした。
俺がチョット離れた間にアンナと香織はサイン攻めに在って大変だったらしいけど、ついて来なければ良かっただけだから自業自得だよね。
その後は銀座のデパートに行ってショッピングを楽しもうとしたけど、俺達は中学生だから銀座じゃ何だかアンナ達の好みには合わなかったみたいで渋谷まで移動した。
綾子先生と違って、この二人は俺の特殊能力とかは知らないから転移を使うわけにも行かないし電車で移動したから、とにかく目立ってしょうがなかった。
何処に行っても写真撮られまくりだし、でも健全交際をアピールする側面も在ったから殆ど対応したけどね。
握手した数だけでも三百人以上だったよ。
渋谷の有名なファッションビルで、今どきの若者が選びそうなコーディネートをアンナが選んでくれたけど、既に有名モデルになってるアンナのチョイスは直ぐに話題になって同じ組み合わせのスタイルが凄い人気になったらしい。
俺はお礼に香織とアンナにも一通りの服を選ばせて買ってあげたよ。
最初は凄い遠慮してたけど「俺、今回の競泳競技だけでメーカーからの追加報奨と、水連や国の金メダルと世界記録の報酬合わせると、十億円以上の収入になっちゃってるんだよね」と言って無理やり納得させた。
金額は本当だけどね。
お昼御飯はイタリアンにしたけど、中学生だし高級なお店じゃなくて少しお洒落なパスタ屋さんって感じの店を選んだ。
気配を探知したらアナスタシアが居たからそばを通ってトイレに向かうと俺にだけ聞こえるような声で「昨日は牛丼」っとぼそっと呟いた。
やっぱりスペツナズは給料安いのかな?
食事を終えて渋谷の街を三人で歩いていたら、今どきまだ居たんだぁって思うようなチーマー系の連中が何処からともなく現れた。
「お、有名人のお出ましじゃん。お金いっぱい持ってるだろ、俺達恵まれない子供だから募金して貰おうかなぁ、嫌って言ったらそこの売れっ子アイドルがテレビに出れなくなるような凄い撮影会に強制参加させるだけだから、それでもいいけどな」って突っかかってきた。
コイツラ馬鹿だよね?
でも、今は俺たち三人とも結構な有名人だから、あんまり目立つことしたくないなぁどうしようかな? と思ってるとイヴァンとアナスタシアの二人が偶然を装って「オウ! ワンダフル‼ あなた達は渋谷名物のチンピラチーマーですか?」と声をかけてきた。
「何だこの外人、邪魔だからさっさと消えろ」
「そうは行きませんYO、こんな面白い見世物見逃したら日本旅行の思い出が減っちゃうじゃないですか」
「面倒くさいからこの外人から片付けるぞ」
と、チームのリーダーみたいなのが声を掛けると十人ほどの半グレ君達が、意外に統率の取れた動きでアナスタシアとイヴァンを囲んだ。
俺達三人にも見張りの感じで三人が付いた。
やっつけるのは簡単だけどスペツナズの実力も見たいしアンナと香織に手を出さない間は放置するか。
「やっぱり東京は怖いなぁ、早く名古屋に帰りたいよね」と、普通に香織たちに話しかけて安心させながら展開を見守る。
チマ男君達が、一斉にイヴァン達に襲いかけると、そこからは瞬間勝負だった。
イヴァンもアナスタシアも躊躇なく襲いかかってくる半グレ君達の腕や足を面白いようにポキポキ折って倒して行った。
俺達を囲んだ三人も慌てて後ろから飛びかかっていったが、アナスタシアの回し蹴りが頬を直撃して盛大に歯を吹き出しながら転がって行ったのが一人と、イヴァンが裏拳で顔面を直撃させて明らかに鼻骨が折れた感じで、鼻血をダラダラ流したのが二人、結局三分も掛からず十人のチマ男君達を制圧した。
目立ちすぎだろ? それで良いのかアナスタシア。
と思ったが、その頃に近所の交番から警官が駆けつけてきて現場を確認するとイヴァンとアナスタシアを拘束しようとした。
俺は「その二人は絡まれてた俺達を助けてくれただけです」と一応言ったが警官は融通が利くタイプの人では無かったようで応援を呼んで拘束をしようとした。
そこでアナスタシアは手を両手に広げて少し残念みたいなポーズを取った後、大使館員の身分証を出し「証言があったにも関わらずロシアの正式な大使館員である私達に嫌疑をかけ拘束しようとした事実は重大な国交問題になります。私はロシアを代表する立場として貴方の行いに拠ってこれから起る国交問題を憂慮します。残念ですわ」と発言した。
一気に青褪めた警官は自分の対処がどれだけ重大な間違いだったかに気づいて、オロオロしだしたが後の祭りだ。
でも、この感じだとこの警官は半グレ君達から何らかの利益供与受けてた確率高いよな後で調べてみようかな?
結局応援に駆けつけた他の警官たちに半グレ君が全員連れて行かれ、慌てて駆けつけた渋谷署の幹部警察官であろう人がペコペコ頭を下げていた。
更に俺達の方にやって来て俺達が誰なのかに気付くと更にヤバイと思ったようだ。
いくら中学生であっても現状日本で一番有名人と言っても間違いない俺と、アイドルの二人だ。
マスコミへの露出度の高さは今更言うほどまでなく、状況的に明らかに巻き込まれた被害者で、それを助けたヒーローはロシアの大使館員で、それを拘束しようとしたとか言い逃れが出来ないどころか、署長クラスの首が簡単にすげ変わるほどの事態だ。
もうどうしようも無い程焦ってる。
俺は貴重な時間をこんな、しょうもない事で使いたくないのでロシア語でアナスタシアに話しかけた。
「派手にやり過ぎだろ、俺は時間が勿体ないから、さっさと場を収めてくれよ」
「うーん少し懲らしめたかったけど、翔が言うならしょうが無いわ。警察の連中は許してあげるわ」
その会話の後で「今日の事は後日大使館から正式に話が出るかも知れませんが、私としてはこのようなギャングもどきの摘発に力を入れると約束してもらえるなら事を荒立てる必要もないかと思います」
と、日本語で幹部警察官らしき人に話しかけると「それは必ず約束致しますので、何卒穏便によろしくお願い致します」と平身低頭でその場を離れていった。
俺は再びロシア語で「でも助かったよありがとう。俺がやっちゃうと今はマスコミが余分な騒ぎにしたかも知れないからね」と伝えた。
「そう思ったなら夜は高級レストランを頼むわね、今日はフレンチの気分だわ」
と言ってきたが、どんだけ高級レストランが好きなんだよ……
俺はアンナと香織に「もう大丈夫だから行こう。次は何しようか?」と言って渋谷を後にした。
さすがスペツナズと言う所か、きっと今回のオリンピックの空手の代表たちよりは強いな。
まぁドーピング検査とか通らないかも知れないけどね。
その後は三人でカラオケに行って夕方には二人をホテルに送り届けた。
「明日からの陸上も頑張るから、応援してね!」
ちなみに遊真は陽奈と二人でデートに出かけてたらしいよ!
◇◆◇◆
俺は一度選手村へ戻り、念話で香奈に連絡を取ったあと一緒に拠点へと向った。
マー達に最近の状況を確認するためだ。
ヤリマンスキーに「スペツナズの二人は俺とのコンタクトが目的だったぞ、チェルノブイリの件はお前は聞いてなかったのか?」
「いや、何も聞いて無いが何があった?」
「チェルノブイリでバチカンや兵馬俑と同じ様に魔物が湧いている。しかも溢れ出して近隣の村を壊滅させたようだ。ロシアからも兵を出して現状は何とか閉じ込めてるそうだけど、事は急を要するからオリンピックが終わったら早急に対処したいと思う。マーも先に兵馬俑をやりたいとは思うけどまだ溢れていないから、チェルノブイリの対処に協力して欲しい。ビアンカとヤリマンスキーも一緒に頼みたい」
「そんな事になってるんだね、私達じゃ役に立たないかも知れないけど能力を取り戻せるチャンスがあるかも知れないし異存はないわ」
「最低限、戦えるように俺の方で魔道具と武器を作っておくから頼む」
と伝えると、香奈が「私は鑑定が使えるから、弱点だけは解るし結構なんとかなるかもね」と言ったので恐らく大丈夫そうかな?
「他の連中には魔道具の存在を教えるわけにも行かないしな、実質ここに居るメンバーだけが頼りだ。スペツナズの連中はヤリマンスキーに関しては、そこまで執着してるような感じはなかったから俺と一緒に居る限りは大丈夫だと思う」
そこまで進んだところでビアンカが意外にまともな発言をする。
「でもさぁ、軍隊で包囲して倒せないっておかしくない? 向こうに居たときでも弱い魔物は棒で叩いても倒せてたじゃない、軍隊の武器で倒せないような高レベルの魔物が対象ならかなり厳しいはずだわ」
「俺も可能性は少し考えたんだが、倒せないだけで封鎖は出来てるみたいだし、高レベルじゃ無くて特性上、通常武器が効かないタイプなんじゃないか? ゾンビやレイス系とかなら可能性が高い」
「なるほどね、それなら浄化系のポーション類で対処できそうね」
「そうだな、その辺りの数を用意しておきたいと思う」
「ビアンカと香奈は賢者と魔王だったなら知識は残ってるよな? 能力がないだけで」
「そうね、素材と魔道具があれば何とか出来るとは思うわ」
「解った、後一週間は動けないからその間は引き続きテロの監視を頼むな」
「あー翔、ホイホイもう一個作ってもらっていいかな?」
「まさか?あれ一杯になってきたのか?」
「人数的にはまだ入るけど、女性とか子供とかもいるからね。今はホイホイの中に檻入れて別けてるけど、それじゃビアンカが搾り取りに行った時に、精神衛生上悪影響があるでしょ?」
やっぱりビアンカは恐ろしいな……
「解ったそれは今から設置しに行く。じゃぁ後は頼んだぞ」




