透明なオーケストラ
恋に落ちるのって突然で、なんだか世界がキラッとして見えませんか?
甘酸っぱい高校生の日常を少し覗いてみてください。
ぱらぱらぱら…
…ぽちょん…
かこん、、かこん、、かこん、、かこん、、…
ゲロゲロゲロゲロ…
ぶーーーーん、ザーーーーーーーッ!!!!!
目の前に座る幼馴染を見る。
真剣な面持ちでノートを見返している。
外の雨でなかなかな騒音の中、彼はとても集中していた。
雨で仄暗い部屋の中で真っ直ぐな瞳が余白を捉えている。
ぱらぱらぱら…
…ぽちょん…
かこん、、かこん、、かこん、、かこん、、…
ゲロゲロゲロゲロ…
ワンワンワンッ!!!!!
真面目な彼とは対照的に集中力の切れた私は外を見る。
どうやら隣の犬が脱走したようだ。
「…また脱走したんか。」
「そうみたいだね。」
「雨だからすぐ戻るだろ。」
「そうだね。」
ノートから目を離しもせずに適当に話題を振ってくる。集中力が切れたことがバレている。
「おやつ休憩しない?持ってくるよ。」
「しょーがねぇなぁ…。俺が行く。座って音でも聞いてろ。」
こうやって彼が立ち上がるのもいつものこと。
渡された鈴を持って、鳴らす。
リーーーーーーー…
なんだかヒヤッとしたこの音がジメッとした雨の日には心地よい。
ぱらぱらぱら…
…ぽちょん…
かこん、、かこん、、かこん、、かこん、、…
ゲロゲロゲロゲロ…
リーーーーーーー…
周りの音に混ぜて鳴らしてみる。
ぱらぱらぱら…
…ぽちょん…
かこん、、かこん、、かこん、、かこん、、…
リーーーーーーー…
彼に渡された鈴を鳴らすだけで今まで騒音に思えてた物が全て形を持ってキラキラと輝き出す。
ぱらぱらぱら…
…ぽちょん…
かこん、、かこん、、かこん、、かこん、、…
リー…
「どう?新しい鈴」
「とてもいい音。これ好き。」
「そうだろ?なんかキラキラして聞こえるんよな。」
そうか、これが彼のキラキラなのか。
「キラキラの音、鳴らしてみてよ。」
まずは雨が葉っぱに当たる音…ぱらぱらぱら…
次は葉っぱから水たまりに落ちる音…ぽちょん…
それからししおどしがぶつかる音…かこん、、かこん、、かこん、、かこん、、…
最後はカエルの声…ゲロゲロゲロゲロ…
ここまできたら、キラキラひかる、鈴の音…
リーーーーーーー…
最後まで聞いて目を開ける。
先ほどまでノートの余白を見つめていた茶色い瞳が真っ直ぐにこちらを見ていた。
「綺麗な音だな。」
「…そうだね。」
その瞳が一番キラキラ輝いていて綺麗だったことは、30年後くらいに伝えてあげよう。




