ある成人式の記憶
「ざわざわガヤガヤ」
音を立てる色鮮やかな人の波。
それを見下ろす空には、私たちを祝う気もなさそうな曇天が広がっていた。
今日はひとりで成人式に来ている。
一応言い訳をしておくが、”ひとりで“というのはぼっちだからではない。
私の性格や中学生の3年の夏に隣の県から転校してきたことが要因で友達がいないだけである。
当初は出席の予定ではなかったのだが、バイト先で盛大にやらかしてしまい、気分転換と自分への励ましの意味も込めて急遽参加を決めたというわけだ。
会場前の広場には、開場1時間前にもかかわらず、成人を迎えた多くの人々が広場に集まっていた。
着物や袴,ドレスが目立つなか、何も調べずにスーツで来てしまった私は、少し身が縮む思いだった。しかし、見渡してみるとスーツ姿もちらほら見かけたので、これで正解だったようだ。
それにしても、目の前の人全てが同じ年齢だということになんだなぁ。
不思議な感覚を味わうと同時に、先日の出来事もあり少しナーバスになっていた私の心に影が覆う。
(この人たちと同じ時を過ごし、共に成長してきたと考えると、私だけ遅れているのではないか)
はぁとため息をつく。
気分転換に来たのに逆に不安になってしまった。
開場の時間。アナウンスがかかる。
(式に参加することで自分は変われるだろうか)
薄っぺらい希望と今しがた抱えた不安を胸に、未来に向けて足を前に進める成人の日の記憶であった。




