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【完結済/毎日20時】おまけの兄は異世界で騎士団のお世話をします  作者: 凪瀬夜霧
2章 おまけの兄→女神の使徒
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90話 海王国からのSOS(8)

◇◆◇


 海王国ウォルテラへ行くことが決まった翌日から、俺は毎日王城のレッスン室でクナルを相手にダンスの特訓をしている。


「ワン、ツー、スリー! ワン、ツー、スリー! マサ、足遅れる」

「ひぃぃぃぃ!」


 右手はしっかりとクナルと組んで伸ばし、左手は背中の辺りへ。クナルの片手は俺の腰をしっかりと支えてくれている。

 その状態でゆったりとした曲に合わせてクルクル回りながら室内を動き回るんだ。既に目が回って進行方向が分からない。

 更にはステップと言われても俺が今どこに足を置こうとしているのかまったく掴めていない。

 結果、今日だけでクナルの足を十回は踏んだ。


「おっと」

「わ!」


 いわんこっちゃない! また足を踏んでつんのめるように前に倒れた無様な俺をクナルは受け止めてくれる。手を二回鳴らすと自動演奏機なる魔道具は停止した。


「大丈夫か?」

「うぅ、ごめんクナル。俺もう何回も足踏んでる」


 彼の足元は革で出来たブーツだが、それでも踏まれれば痛いだろう。申し訳なくて落ち込んでくる。

 顔を上げられない俺の頭をクナルは撫でて、見たらとても優しい顔をしていた。


「不慣れなことを無理やり詰め込もうとしてるんだ、失敗は仕方がない。あんたは努力してるよ」

「でも、あまりに進歩がない」

「運動苦手そうだもんな。セナは上手かったらしいが」

「星那は昔から運動神経いいし若いから。俺はもうおっさんで、新しいこと覚えるのもやっとだよ」


 言いながら落ち込むくらいなら言わなきゃいいのに。とは思うけれど、これも事実。本当に運動に関してはからっきしだった。それにやっぱり体がついていかないんだ。


 そんな俺を、ジッとクナルが見ている。手が俺の頬に触れて、自然と上を向かされた。

 薄青い瞳が覗き込んでくるのは緊張する。でも綺麗で、目が離せない。恥ずかしいのに、俺もまた彼を見続けてしまう。


「あんた、言うほどおっさんじゃないよ」

「え? いやいや! おっさんだって! 三十二だよ?」

「ロイは三十四だぞ」

「……え」


 あの色気と若々しい様子と美貌で、三十四だって?

 思わぬ絶望。いやいや! あちらは現役で騎士とかしてるから普通のおっさんとは何か色々と違うってば!


「いや、でもさ!」

「俺はあんたをおっさんだなんて見てない。十分若いし、可愛いと思っている」

「かわ!」


 今日の衝撃発言はどうしたのクナル! まさか、変な物食べた?


「いや、あのね!」


 慌てて言いつのろうとして足に力がかかった。瞬間、足裏や足首に軽い痛みが走って動きが不自然に止まる。それを見たクナルが難しい顔をして、俺の体を軽々とお姫様抱っこにした。


「うわ!」

「足痛いんだろ。見せてみろ」

「いや、自分で歩けるってば!」


 どうしよう、もの凄く心臓に悪い。クナル察して! 恥ずか死ぬ!


 レッスン室の端にあるソファーに降ろされた俺はそのまま滑らかに利き足を取られ靴も靴下も脱がされ、ズボンも膝くらいまでたくし上げられた。


「靴擦れとかはないな。けど、脹ら脛はパンパンだ。それと足首と足裏が硬いな」


 踵のところを持たれ、左右に軽く曲げられたり足の裏を指でグリグリされる。硬いと言われるのは何となく分かる。これといったストレッチとかしたことがないから。

 それにしても足裏をグリグリされるのは痛気持ちいい。足裏マッサージとかってこんな気分なのか。人気あるの分かるな。


 クナルはもう片方の足も同じように見て、側のテーブルにあった呼び鈴を鳴らす。すると直ぐにメイドが来て、丁寧に頭を下げた。


「桶と香油、タオルが数枚欲しい」

「かしこまりました」


 静々と下がっていったメイドは短時間で戻ってきて、木で出来た桶と花の香りのするオイル、そして数枚のタオルを置いて出ていった。


 二人きりになって、クナルは手に香油を垂らして温めて、俺の足に触れる。ぬるりとした感触は慣れないけれど、そうして塗り込まれた部分が徐々に温もってきた。


「痛かったら言えよ」


 親指の腹でじっくりと足の裏を押し込み、流していく。両手でフニフニと揉んだりもして、足の裏がジワッとする。

 そして今度は俺の足の指一本一本を指で摘まんで、クリクリと緩く圧迫しながら伸ばしていった。


「ん……」


 なんか、血が巡っていく感じがする。ジワって広がる熱で体までぽかぽかしてきた。

 そんな俺を見上げて、香油をまた少し足したクナルが今度は俺の足の指の間に手指を差し込んだ。


「あ……」


 これ、変……かも。指の付け根を広げるように指が行き来していく。そこをぬるりとした指が滑る度、ゾワッとした感じが上がってくる。気のせい……にも出来るとは思う。でも一度意識してしまうとその感覚はよりはっきりしてきて、マッサージなのに恥ずかしい気持ちになる。

 俺、これ続けられたら変な気分になるかも。そんな予感に焦った。


「気持ちいいか?」

「へぁ! あっ、うん、気持ちいいよ」

「へ~ぇ、どんな風に?」

「!」


 僅かにすがめられる瞳、楽しそうな笑みが此方を鋭く見る。それはまるで俺の焦りやその裏にあるものを見透かしたみたいだ。

 手がスルスルと足の裏、足首をゆっくりと通って脹ら脛へと触れる。疲労で張り詰めた、その裏側を指がツ……と撫でたのが、俺の限界だった。


「もっ、もう大丈夫! 大丈夫だから!」


 足の疲労よりも俺の精神が耐えられない。心臓がバクバク音を立てて、体が熱くなって動けなくなりそう。恥ずかしいのに気持ちいいってどういう状況なの! 俺、クナルに変な気分になってない?


 思わず両手でクナルの頭を押してしまった。

 彼は少しムッとした後で、突然ニッと悪戯っぽい笑みを浮かべる。そして、押している俺の手を素早く取ってその甲に唇を寄せた。


「いぃぃぃぃぃ!」

「くくっ、リアクションでかい。あんた、そういうのマジで可愛いよ」

「も……クナル! そういう意地悪するなら今日の肉少なくするんだからな!」

「なに! ちょ、それは勘弁しろよ! 分かった、俺が悪かったって!」


 途端に鋭さが消えて子供っぽい顔で抗議をする。そんなクナルを見るとほっとした。


 でも、こんなことでドキドキした俺はなんなんだよ。しかもからかわれて……一番困るのは、こんなことをされて困惑はしても嫌だとは思わないってことなんだよ。

 この年になっても自分のことが分からないなんて、俺って情けないな……

メリークリスマス!

そして昨日、初めて日間700PVを超えました!

皆様に感謝を込めて、本日はもう1話更新します。

楽しんでいただけたら何よりです。

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