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【完結済/毎日20時】おまけの兄は異世界で騎士団のお世話をします  作者: 凪瀬夜霧
1章:おまけのお兄さん?
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78話 黒の森の奇跡(23)

 クナルは笑うけれど、俺は笑えない。血液とかの拒否反応みたいなのがあるのかな? そういうことも俺、何も知らなかった。


「まぁ、俺との相性がいいのは分かってたからな。俺が渡してた」

「え?」

「間に合って良かった」


 ほっとした様子で撫でられる。そしてまた左手を握られた。

 ふわりと温かいものが流れ込んでくる。心地よくて、落ち着いて……やっぱり少し気持ち良くなる。


「んっ」

「……相性良すぎるのがまずいんだよな」

「え?」

「いんや、なんでも。寝てる間なら平気だから安心しろ」

「? 痛いとかないから大丈夫だけど。むしろ、ゾクゾクする?」

「それが大問題なんだよ」


 溜息一つで手を離し、ポンと撫でて立ち上がったクナルが「他に知らせてくるわ」と声をかけて出ていく。

 一人残されたのがほんの少し寂しくて、俺はまだ温かい左手をにぎにぎした。


 程なくして部屋の中は大賑わいとなった。

 黒の森であれこれ事後処理をしている星那とユリシーズ、デレクは居ないが、ロイと殿下は直ぐにきて起き上がっている俺を見て怒ったり心配したりだった。


「本当に危なっかしい!」

「すみません、殿下」

「私が怒ることではないし、むしろ申し訳なくて謝らなきゃならないのに危機感ないのかいトモマサ!」

「今し方、事態の大きさを知り青ざめました」

「まったく」


 腕を組んで怒ったように言う殿下は、その分沢山心配したようだ。万が一俺が起きない時は王族の末席に入れてこの奥院で一生面倒を見るつもりだったらしく、他にも方法がないかなど探ってくれていたとか。

 そんな殿下を諫めるロイもまた、とても心配してくれたことが分かる。


「何にしても、目が覚めて良かったです」

「心配をかけてすみませんでした」

「……僕は責められるべきです。攫われるなんて事態になったことがまず、此方の不手際です。申し訳ありません」

「そんな! ロイさんのせいじゃありませんよ!」


 折り目正しく深く頭を下げるロイに慌てる俺の側では、クナルも落ち込む。


「それを言えば俺が一番責任がある。プライベートな時間でも付いていけばよかった」

「この年で連れションとか俺嫌だからそこは自重してくれていいから!」


 落ち込む二人を前にどうしろと。

 アタフタする俺を見て殿下は苦笑して、俺に代わって二人を落ち着かせてくれた。それでも空気はなんかどんよりしている。


「まぁ、此方の責任は大きいから二人がこうなるのは仕方がないよ。綺麗にしたはずだったのに、とんでもない穴が開いてたんだから」

「あの、どうしてこんなことになったんですか? スティーブン王子はどうなりましたか?」


 苦笑しながらの殿下に、俺はことの顛末を求めた。

 あの森の中、スティーブンは一人で逃げてそれっきりだ。もしかしたら他の魔物の餌になってしまったのかも。

 でも、俺の心配は直ぐに否定された。


「スティーブンは事件直後に見つかって、今は幽閉されている。多分、重い処罰になるよ」

「……」


 何かを言わなければ、と思うんだけれど、何も出ない。

 あの森での怒りが不意に戻ってきた。それを、ここに居る人に言うつもりはない。この人達はこの世界で俺や星那を助けてくれた人だから。

 でもスティーブンに関しては、俺はまだ許せていないんだ。


「今は凄く静かに、自分が犯してしまった罪を反省している」

「反省?」


 あのスティーブンが?

 そういう気持ちが伝わったんだろう。殿下は寂しげに苦笑した。


「信じてもらえないかもしれないけれどね。スティーブンは元々、とても控えめで責任感の強い子だったんだよ」

「え?」

「本当なんだ。二十歳を境に、人が変わってしまった。むしろ家族はそちらの方に驚いたんだ。心優しいスティーブンがどうしてって」


 言いながら徐々にうつむいていく殿下を、ロイが気遣わしい様子で肩に手を置いて見つめている。その様子を見たら、本当なんだと感じた。

 俺は本当に数日前の彼しか見ていない。その言動や行動はとても相容れないものだったけれど。

 でも、何かが原因で変わってしまったのだとしたら……原因は、なんなんだろう。


「最初は、二十歳を機に第一騎士団の統括を任せたことで人間関係や付き合う相手も変わり、影響を受けたのかと思っていた。貴族派の家の者も多いから、そちらに傾く様子もあったしそのせいかと」

「違ったんですか?」

「違った」


 途端、殿下の雰囲気が完全に変わった。ロイが傷つけられた時に似た、押し殺した怒りのような空気を感じてピリピリする。

 怒っているんだ。それも、もの凄く。そしてその原因を知っている。

 見つめる先で、殿下は暗く冴え冴えとした目をしていた。


「様子があまりに違ったから、解析魔法を使って状態を調べたんだ」

「解析魔法?」

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