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【完結済/毎日20時】おまけの兄は異世界で騎士団のお世話をします  作者: 凪瀬夜霧
1章:おまけのお兄さん?
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77話 黒の森の奇跡(22)

 目の前にある光を手に取ることは、少し怖い。未知のもので、これを受け取ることで俺自身がどうなるか分からない。

 でも、進み出さないと動かないものがある。今回、俺は進むことを選んだ。その結果、クナルを失わなくて済んだ。

 現状維持が難しいなら、せめて大事なことは自分で決めていきたい。選べる選択肢を増やしていきたい。

 大事な人を失わない為の力は、やっぱり欲しい。


 手を伸ばすとふわっと光って俺の中に溶けたものを呆然と見ている。

 女神はにっこりと微笑んで、一つ俺の頭を撫でた。


『最後に一つ。貴方も幸せになって。伸べられる手を取ることを躊躇わないで。心が求めるものを、手放さないでね』


 俺の周りがほんのり明るくなっていく。間延びした感覚と急激な眠気にクラクラする。そんな俺の頭を女神は撫でて、軽い感じでバイバイをした。


◇◆◇


 ぽやっとした感じで目が覚めた。緩く目が開いて、天井が見える。そして左手がとても温かい。


「マサ!」

「クナル?」


 声に反応して左側を見たら、今にも泣き出してしまいそうなクナルがいた。握っている手にも力が入って、次にはガバリと寝たままの俺に覆い被さるようにして抱きついてくる。

 うん、温かい。ほとんど死んでいたなんて思えない強い力にホッとして、俺はゆるゆる右手を持ち上げて彼の背中に置いた。


「お前、死にかけてたんだぞ」

「うん」


 ごめん、心配させたよな。俺も分かんなかったし、必死だったんだよ。


「実感なさすぎるだろ」

「そうかも」

「……俺が、ちゃんと守れなかったから」

「それは違うよ。守ってくれただろ、クナル。来てくれて、それだけで俺凄く嬉しかった」


 絶望しかなかったあの時に見た背中は、凄く心強かった。安心して、泣きたくなったくらいに。

 ポンポンと緩く背中を撫でていると、クナルは少し落ち着いてきたのか体を離して側に座る。心なしか白い肌が染まって見える。もしかして、恥ずかしかった?


「あの、クナル。俺、どのくらい寝てたのかな? なんか体にあまり力が入らなくて」


 さっき腕を動かそうと思って気づいた。痛いとかではなくて、感覚が鈍い感じがする。動けって命令しているのに反応はゆっくり。力も思うように入っていない。

 ちょっと驚く俺に、クナルは溜息をついて教えてくれた。


「三日だ」

「え?」

「三日も寝てたんだよ、あんた。魔力の枯渇で一時は死にそうになってたんだ。しかも他からの魔力供給も合わなくて、殿下を含めて大パニックだったんだぞ」

「え? えぇ? そんな? あっ、じゃあこれもその影響?」


 思った以上に事態は深刻だったらしく、聞かされた俺も今になって慌てる。私的にはワタワタしているんだけれど、緩くしか力が入らないから動きにならない。

 そして今更ながら喉の奥が張り付いて咳が出た。

 そんな俺を見てクナルは丁寧に起き上がらせてくれて、背中に枕なんかを宛がってから水差しの水を持ってきて飲ませてくれる。自分で飲もうと思ったけれどコップを持つ手がプルプルしたから危ないと判断した。


「ありがとう」

「どういたしまして。ほんと、気が抜けるな」

「心配させてごめん」


 緩く笑う俺を見てまたもや溜息。そして次には頭をポンポンと撫でてくれる。それだけで、日常が戻ってきた感じがして落ち着いた。


「えっと、まず心配かけてごめん。魔力の枯渇? って、そんなにまずいことになるんだ」

「異世界人じゃ危機感ないか。本当に危ないんだぞ、魔力の枯渇は。自分の実力を上回る魔法を使うとなるんだ」


 じゃあ、今回はかなりまずかったんだろうな。女神の話じゃ森を一つ浄化再生させてたらしい。むしろよくそんなことできたよ。


「魔力は日常生活の中で生命力が一部変換されてストックされていく。それが一気になくなっても魔法発動中は中断が難しいんだ。そうなると不足分の魔力を引き出そうと生命力を無理やり魔力に変換する。これが今回のあんたの状態だ」

「……へ?」


 呆れ半分のクナルの説明を大人しく聞いていたけれど、内容は青ざめるものだ。生きるための力みたいなものを無理やり魔力にして放出してたってこと? そりゃ死にそうになるよ!

 今になってアワアワする俺を見て、今度こそ盛大な溜息だ。その後は少し強めにグリグリ頭を撫で回される。わーわー言う俺は……この時間があるだけ感謝しないといけないんだな。


「あの、魔力供給ってのは?」

「あぁ。足りなくなった相手に魔力を分けることもできるんだ。ただ相性があって、合わないと逆にダメージになる。ロイがやったら受け付けないし、ユリシーズや殿下だと寧ろダメージ食らってた。セナなんて一時心臓止まりそうになってた」

「ひぇ!」


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