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【完結済/毎日20時】おまけの兄は異世界で騎士団のお世話をします  作者: 凪瀬夜霧
1章:おまけのお兄さん?
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58話 黒の森の奇跡(3)

 これを見たロイがうらやましがって「僕も!」と言って、結局二枚目を失敗するところまでがお約束であった。


 こうして美味しそうなホットケーキが四人前。皿に二段重ねにして真ん中に四角く切ったバター、そこにメープルシロップを掛けたら完成だ。


「マジで美味そう……」

「はい」

「ロイさんはどうしますか? マジックバッグがあるならお弁当箱に入れて持って行きますか?」

「あっ、はい! あの、帰って殿下と食べたいです」

「じゃあ、準備しますね」


 使い捨てのお弁当箱を二つ用意して、これにロイが焼いたホットケーキを入れる。それを渡すと彼はいそいそとマジックバッグへとしまった。


「本当に、ありがとうございます」

「いいえ」


 何度も頭を下げるロイを見送る俺。だがふと、ロイは何かを思い出したのか立ち止まり、真剣な顔をした。


「伝え忘れていましたが、マサさん。明後日の午前、お時間ありますか?」

「え? はい」

「殿下から話があるそうで、城に来ていただきたいのです。クナルとデレク様には通達が行っていると思いますので」

「はい、分かりました」


 なんだろう? 少なくとも真剣な話なんだろう。


 ぺこりと頭を下げて帰ってしまった人の背を見送って、俺は何だか胸の奥がザワザワするのを感じた。


「なぁ、マサ。これ、食っていいか?」

「え! あぁ、うん。食べよう」


 腹ぺこ熊が待ての状態でいる。俺は慌てて戻って席について、二人で「いただきます」をして食いついた。


「んぅ!」


 美味しい! ふっくら柔らかく、そして弾力もあるホットケーキを口の中でモチモチしながら頬張っている。程よい香ばしさもあってなんとも言えない家庭の味だ。

 なによりこのメープルシロップが美味しい! 凄く濃いんだ。あっちの世界で市販されているメープルシロップよりも色が薄くて蜂蜜みたいだと思ったけれど、その味わいは香りから違ってくる。サラッとしているのにしつこくない。


「メープルシロップが美味い」

「高いからな、これ」

「そうなの?」

「おうよ。魔物食材だし、取れるのがここから南下したエルフの国近くの森だからな」

「魔物食材なの!」


 俺の知ってるメープルシロップは勿論楓の木だけれど……魔物なんだ。


「植物系の魔物で、ギザギザの葉を付けるメープルトレントって魔物だ。デカいのだと直径七〇センチくらいになる。動けないが枝をしならせて鞭みたいにしたり、巻き付けて捕食するんだ。子供や商人が食われる事例もあるから、適度に間引くんだがな」

「食べるの! 人を!」


 なにそれ怖い! 俺絶対食われる!


 サッと青ざめる俺を見て、グエンはニヤリと悪い顔で笑った。


「マサならあっという間だな」

「もぉ、止めてよ!」

「だが、そういうのが美味い樹液になるんだよな」

「うぇぇ」


 そう考えると、今食べているこのメープルシロップにも犠牲になった何者かが……とりあえず食べちゃったから、お祈りして有り難く頂こう。


「それにしても、植物の魔物もいるんだね」


 俺はここにきてコカトリスくらいしか見たことがない。お世話にはなっているけれど、全部が食材の状態だ。


「そうな。蜂蜜もキラー・ビーっていうデカい蜂の魔物のもんだ」

「会いたくないな……」

「まぁ、今じゃ改良されて小型化したベビー・ビーってのがいて、味は薄いが流通が安定してるってことで出回ってる。味の濃さは全然違うがな」

「そういう、改良された魔物もいるの?」


 というか、魔物ってそんなに多種多様なんだ。


「いるな。乳牛用のモーモーも大昔は野生の草食魔獣だったらしいし、コッコもだ」


 そう言いながらホットケーキをペロリと平らげ厨房に戻り、卵をボウルに割り入れるグエン。今日はカツレツの予定だ。


「魔物って危険なものばかりだと思ってたけれど、意外と身近なんだね」

「まぁな。そもそも魔物は邪神降臨前からある程度いた。邪神が現れた後で凶暴化したり、変異種が現れたり、ダンジョン産なんてのが出てはきたが昔からいたんだ。中には人と共存したりするのもいんだよ」


 今日は美味しいボア肉が手に入ったので、これをある程度の厚さにして筋を切っていく。オーク肉よりも野性味がある、ようは猪肉だ。


「馬車を引くバイコーンや、海で船を引くケルピー、一部の騎士が乗る天馬なんてのはもう見慣れたな」

「馬の魔物は輸送に役立つんだね」

「他にも霊獣ってのがいるな。格が上だと意思疎通が出来てもの凄く強い。そんなのと契約できりゃ頼もしいってんで、冒険者が挑んでる」

「霊獣?」

「見た目は獣だが魔法を使ったりする、魔物と精霊の間にあるような奴等だ。強いのだとフェニックス、竜」

「竜!」

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