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【完結済/毎日20時】おまけの兄は異世界で騎士団のお世話をします  作者: 凪瀬夜霧
1章:おまけのお兄さん?
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39話 黒い陰謀(6)

 案内されるまま行くと港のすぐ近くにある露店を見つけた。木製の台の上には明らかに鮮度のいい海鮮が輝いて並んでいる。


「美味しそう!」

「おっ、兄ちゃん見てってくれよ! 今朝取れたばかりのやつだ」


 食い入るように見るそれらは馴染みのある形状をしている。そして鑑定眼も馴染みの名称を表示した。


『ホタテ(品質:良)

海中に生息する二枚貝。可食部が多く貝柱は大きめ。噛めば噛むほどに甘みが出てくる』


「すみません! ホタテ二籠ください!」

「おう! 一〇〇〇レギンだ」


 一籠の中には殻付きのホタテが六枚くらい入っている。これが二つで約千円。絶対にお買い得だ。

 袋に入れて渡してくれた物をマジックバッグに入れようとして……何故か入らない。


「あっ、あれ?」

「生きてるんじゃないか?」

「生きてる!」


 そうか、生物は入らないんだ!

 でもこれは嬉しい誤算だ。生きている、その鮮度の良さ。戻ってすぐに締めよう。

 でも手持ちは大変なので、クナルのカバンに入れてもらった。こっちは時間停止がない分、生き物も入れられるらしい。


 他にもブルーロブスターという小型の海老の魔物を購入した。

 小型と言っても体長は三〇センチを超えていて、胴体は丸々と太い。今時期に大量発生し、ギルドで討伐依頼が出ることからもの凄く安かった。


 これらを買い込んでウハウハな俺は既に何を作ろうか楽しみで仕方がない。何せ海老からもいいダシが出る。ホタテだって旨味が強い。ロイの体調次第になるけれど、スープとしてもいい素材だ。


「他はどうする?」

「うーん……スパイスは見たいと思うけれど急ぎじゃないしな。他はバターとか、チーズとか?」

「乳製品はこっちだな」


 案内されながら市を見回す。食材を売る店も多いが、串焼きや網焼きの店も多い。食べ歩きをする人も多いみたいだ。


「朝食、加減しておけばよかった」


 流石にまだお腹が空いていない。少し心惹かれるけれど食べきれるかといえば疑問しかない。

 しょんぼりする俺を見て、クナルは小さく笑った。


「落ち着いたらまた連れてきてやるよ」

「約束な」


 それなら楽しみにしておこう。

 そうして最後、俺は乳製品を扱うという店に立ち寄り大量のバターと、チーズを少し購入したのだった。


◇◆◇


 戻ってきたらグエンが寸胴鍋一杯に基本のスープを作ってくれていた。鳥のガラから丁寧に作り、それに玉ねぎなんかの野菜を入れて煮込んでいくやつだ。


「マサ、これ明日持ってけよ」

「ありがとう、グエン」

「いいって。そのかわり、ロイのこと助けてやってくれな」


 その表情が、視線が俺に託してくれる思いがある。親しい人を心配している。これに応えられないのはあまりに情けない。


「頑張るよ」

「おう」


 いつもよりも力強いグータッチに、俺は力をもらった。


 その後、夕飯の準備もしつつ明日の為に予備のパンを焼いたり新作作ったりして少し遅くまで作業をして、俺の忙しい一日が終わった。


◇◆◇


 翌日ユリシーズが迎えにきてくれたのは朝食後のこと。その表情はあまり晴れない。


「おはようございます、トモマサ殿」

「おはようございます。あの、大丈夫ですか?」


 何かあったのだろうか。もしや、ロイの容態が急変したとか!

 そんな最悪を考えてしまう俺にユリシーズは苦笑した後、思い切り溜息をついた。


「国王一家は貴方を歓迎するのに、どうして外野があれこれと文句を言うのか意味が分からなくて精神的に少し。あいつら、べつに奥院に住んでないんですよ? 住民がいいと言っているのにその他が反対するってなんなんでしょう?」

「あ……ははぁ……なんなんだろうね?」


 なんか、ごめんね。内心で俺は彼を労うのだった。


 用意された馬車は黒塗りに金の装飾を施した立派なものだった。これに俺とクナル、そしてユリシーズが乗り込みいざ王城へ。中央の一番大きな通りを走っていくと徐々に建物がなくなっていく。そうして辿り着くのが大きな門だ。

 馬車が一旦止まり、御者が何やら門を守る兵士に紙を出している。それを確認し、もう一人の門番が馬車の窓を見ている。視線が合った気がして曖昧に笑うと目をそらされてしまった。

 重い音を立てて馬車は進んでいくけれど、途中で道が逸れた。


「正面じゃないんですね」

「そちらに付けると奥院まで遠いですし、人目に付きすぎますから」


 相変わらず抑揚のない話し方ではあるが、ユリシーズのこれは癖みたいなものだと思う。

 ただ、もの凄く緊張している感じはあった。


「トモマサ殿、先に一つお願いがあります」

「はい、なんでしょうか?」

「必ずクナルを側に付けていてください。どんな時でも、ほんの少しの間でも」

「え? えっと」


 戸惑って隣のクナルを見ると、彼も深く頷く。

 もしかして昨日話していた貴族派とか、そういうものなのだろうか。


「奥院は基本、王族の世話をするメイドや従者が多いのですが、同じように王族を守る第一騎士団の者がおります。彼等の大半は貴族派の子息。貴方に対し、良くない感情を持つ者もおります」

「あ……」


 思い出した記憶から体に力が入る。ビビリの俺はあの一瞬、本当に絶望しかなかった。

 膝の上で拳を固く握った俺の手に、不意に手が触れた。大きくて節のあるそれは温かくて、何もなくても力をくれるみたいだ。


「大丈夫だ」

「……うん」


 不思議だ、恐怖が溶けていく。この温かな手に触れられていると緊張した気持ちも解れていく。

 力が抜けた俺を、ユリシーズも優しい目で見ていた。

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