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【完結済/毎日20時】おまけの兄は異世界で騎士団のお世話をします  作者: 凪瀬夜霧
1章:おまけのお兄さん?
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34話 黒い陰謀(1)

 異世界四日目ともなると少し慣れてきた。

 騎士団の皆が起きてくる二時間くらい前に起きた俺は大きく伸びをしてカーテンを開ける。今日も晴れそうな薄日の空を見上げて窓を開けて着替えたら、その足でランドリーへとまずは向かう。


 綺麗に使っている室内の簡単な掃除をして、ついでに洗顔や歯磨きをしてしまう。そうすると次は前日の洗濯物のつけ置きを確かめて、浴場から使用済みのバスタオルを回収しておく。こうすると洗濯が楽になるから。

 そこまで終わらせるとドアをノックする音がして、俺は首を傾げて声をかけた。するとドアの先には何だか怒った顔のクナルがいて、早々に俺はビクッと震えた。


「マサ」

「え? あっ、おはようクナル。どうしたの?」

「どうしたじゃないだろ! 俺が来るまで部屋に居てもらわないと困るんだ!」

「えぇぇ!」


 衝撃の事実! あっちの世界でも朝はこんな感じだったからつい。

 ビクつく俺を見てクナルは思い切り溜息をつく。黙って立っていればイケメンの雪豹獣人が少し老けて見えた。


「あのなぁ、あんたは護衛対象で、俺は護衛なんだって」

「あの、ごめん。なんかそういう感覚がまだ分かんないっていうか」


 なにせ生まれも育ちも一般人で、とても護衛を付けられるような人間じゃないから。

 でも一応は聖女の兄で、異世界の住人。しかも妙なスキル持ちらしい。正式にクナルが護衛に付くことも言われているから、俺の落ち度なんだろう。

 もう一度溜息をついたクナルは腰に手を当てて近付いてくる。そして俺の頭をワシワシと撫で回した。


「うわぁぁ!」

「慣れろよマサ。正直、部屋行って居なかった時は焦ったんだぞ」

「うぅ、ごめん」


 ボサボサになった頭を手で直しながら謝ると、彼はニッと男臭い笑みを浮かべた。


「まぁ、宿舎の中に居てくれればいいんだけどよ。それでも俺が心配だから、そのくらい待ってくれ」

「うん、分かった」


 こういうところ、クナルは優しいというか、甘いというか。怒られることには多少慣れているけれど、この対応はムズムズする。落ち着かない感じがして困ってしまうんだ。


「洗濯しちまうか?」


 ヒョイと俺の後ろにある回収直後のタオルを見てクナルが提案してくれる。朝食の準備までまだ少しあるけれど、クナルは一応仕事を控えるように言われている。二日前に怪我をしたから。


「仕事するなって、デレクに言われたのに」

「仕事にもならないし、少しくらい魔法使わないと変な気分になるんだよ。訓練とかはしないんだから、いいだろ?」

「えー、そんな感じなの? うーん」


 タオルだけでも終わらせれば後が楽だと思うんだけれど……。


「んじゃ、運ぶな」

「え! もぉ……クナル!」


 結構重たいタオルの籠を持ってさっさと外に行ってしまうクナルを追いかけて。開け放った裏口を出ると早朝の透明な陽が辺りを明るく照らし始めている。

 うん、今日もいい一日になりそうだ。


◇◆◇


 朝食も無事に終えて後片付けをしているとデレクが来て来客を伝えられた。

 洗濯を見てくれているはずのクナルも呼ばれていて、何だか物々しい感じもあって戸惑っている間に食堂に二人の人が入ってきた。


「あれ、ユリシーズさん?」


 一人は昨日も会った人だ。

 魔術科のユリシーズは蛇族の人で見た目は俺と似ている……造形は無性別な綺麗顔だけれど。俺の魔力測定をしてくれた人だ。


 けれどもう一人は知らない。

 綺麗に輝く白い髪に、切れ長で目尻の下がった金の瞳。細身で、身長は俺より少し高いくらいだけれど身のこなしが上品で着ているものも綺麗。

 顔立ちは少し幼いというか、整って綺麗なんだけれどちょっと可愛い。

 そんな人が俺を見て、にっこりと微笑んだ。


「殿下!」

「え? 殿下?」


 ここは食堂で、当然片付け中のグエンもいる。その彼が驚いたように声を上げたから、俺は目の前の人を凝視した後でハッと驚いてオロオロした。


「え! 殿下!」

「ははっ、正解だよ」


 えぇぇ!

 とても気さくな感じで笑った人の後ろでデレクが溜息をつき、クナルとユリシーズは苦笑している。その全部を面白がるみたいに、殿下と呼ばれた人は笑っている。


「あの、俺……何かしましたか?」

「ん? 何かした覚えがあるのかな?」

「え! いえ、そんな覚えは……」

「ルートヴィヒ、そんくらいにしてやってくれ。マサは正直者なんだ。困らせんでくれ」


 助け船を出してくれたデレクに感謝! 偉い人と話すなんて経験のない俺は何がなんだか分からない。

 目の前の人はそれでも楽しげに笑っていて、その後スッと手を差し伸べてくれた。


「初めまして、トモマサ。ベセクレイド王国王太子、ルートヴィヒだ。君の妹は気軽にルーと呼ぶよ。よろしく」

「あの、妹が大変失礼をいたしております。相沢智雅です」

「とても可愛らしいと思うよ。私には妹がいないから、彼女のような子がいたらきっと日々が楽しいだろうと思っている」

「重ね重ね妹がお世話になっております!」


 お願い星那、奔放なのも可愛いと思うけれど相手を選んでください。

 一気に胃に悪い思いをした俺は握手に応じたまま冷や汗が出るのだった。

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