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【完結済/毎日20時】おまけの兄は異世界で騎士団のお世話をします  作者: 凪瀬夜霧
1章:おまけのお兄さん?
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22話 魔力測定(5)

「あの、それなら今まで製品化とかしなかったんですか?」

「出来なかったが正しいかな。あの魔法は複雑で、道具で再現しようとするともの凄く難しい。魔道具は誰もが扱い、安定した効果が得られることが条件だ。魔法をそのまま閉じ込めるようなことはできない。動きを再現しようにもね」


 確かにあの水球を道具で作り出すのは大変そうだ。


「そこで君のアイディアだ。過去の聖女様もそれぞれ元の世界の知識を私達に与えてくれていた。私は大いに期待したいのだけれど?」

「あっ、えっと……俺もそこまで詳しいわけじゃないんですけれど。では、見た目とか使い方とかから」


 キラリと光る視線が少し怖い。期待って、ちょっと圧力なんだよな。

 そもそも俺は電気系の学部を出たわけでもないし、電気屋でもない。だから詳しい構造を知っているわけじゃない。

 それでもとりあえずの見た目を紙に書いた。


「こう、縦に長い箱のような外見で……中は丸い金属のドラム? というのがあって。この、中の金属の水槽に石けん水と洗濯物を入れて、中の水槽を回すんです」


 実際は単純に回すわけじゃなく、右に左に揺するように回ったりする。


「回す意味は?」

「えっと。この水槽を回すと水流が生まれて、洗濯物同士が擦れて汚れを落とすっていうのと、遠心力で強く石けん水が衣服を通り抜けるのでその勢いで繊維の汚れを落としているんだと思います」


 具体的に見せないと分からないかな?


 辺りを見回し、丁度桶があるのを見つけてそれを手にする。ここにクナルにお願いして水を入れてもらい、俺は手で木枠ギリギリをクルクルかき回した。すると徐々に中央に渦が出来て、ほんの少し水面が窪んでいく。


「こんな感じで、外を回すと中央辺りに渦が出来るんですよ」

「なるほど。これを金属の水槽部分で再現しようってことだね?」

「はい」


 伝わっただろうか。水から手を引き抜くとリンレイがタオルを貸してくれる。そして熱心に紙になにやら書き込み始めた。


「そうなると、内側の金属水槽は水漏れしないようにしないと。動力はただ槽を回すだけなら無属性でいいな。水を入れるなら上部に水の魔石を取り付けて、あわ玉石を通り抜けるようにして」

「あの、可能でしたら普通の水も出るように出来ますか? すすぎも出来るように」

「!」


 ついでに言ったら、更にキラキラした目が此方を見た。


「動きは同じですよ。石けん水で洗って一度排水して、あわ玉石を通さない水を入れて同じように回して何回か濯ぐと洗濯物についた泡が洗えます。これを適当にすると臭いの元になるので」

「そうなのかい?」

「はい。皮脂の残りは勿論ですが、すすぎが甘く石鹸が残っていると菌の増殖原因になって、その菌が嫌な臭いになるんです」


 乾燥が甘い場合もそうなる。あの臭い、なんとも言えず不快なんだよな。


「菌……というと、一部食品にも使われてるって奴か。こっちでは主にいいことをする目に見えないものという認識だね」

「酒の実やイストの実に住んでいるんだろ? かなり昔の聖女が伝えたとかいう」

「一応、菌が何か分かるんだね」


 これにはちょっとほっとした。


 なんにしても出来るとのこと。制御盤とボタンで水の流れる経路を変えれば大丈夫らしい。下にも排水用の穴を開け、管を通して下水に流れるようにするそうだ。


「他に欲しい機能はあるかい?」

「脱水が出来れば」

「あぁ、いいね。水魔法が得意じゃないとギャザーウォーターは使えないから」


 やっぱりあの魔法、そう簡単に使えないんだ。

 隣のクナルは何でもない顔をしている。でもこの人が優秀なんであって、誰もがあんなんじゃないってのが分かった。


「でも、どうするんだい?」

「俺の世界だと、この槽には小さな穴が開いていて、水を入れずに槽を回す事でこの壁面に洗濯物が押しつけられて水が切れていたと思うんです」

「遠心力だね。高速で回すことで外側に水を押し出して穴から排水させるんだ」

「はい。完全には乾きませんが、あとは天日干しで」

「なるほど、全て回転という動作で出来るわけか。無駄がないな」


 書き留めたものを見つめ、リンレイはニッと笑って膝を叩いた。


「とりあえず試作を作ってみるよ。制作費は金貨20枚」

「えっと……それって高いんですよね?」


 俺で支払うことができるだろうか……。

 不安な俺の肩を叩いたのはクナルで、此方を見て緩く笑って頷いた。


「妥当な金額だし、なんなら安い。条件があるだろ?」

「勿論。もしこれが商品化できるレベルになった時には、私の方でアイディアを買い取り専売の権利を貰いたい」

「え? えっと……」


 つまり、一般商品化したいってこと?


 ふと昨日のデレクの言葉を思い出す。レシピ一つが命に関わりかねない。

 サッと血の気が引ける気がした。これがもし商品化して、発案者が俺となったらやっぱり狙われるのは俺なんじゃ。

 でも、クナルがポンと頭を撫でてくれた。


「此方も条件がある。まず、発案者の名前は伏せておいてくれ」

「いいよ。発案者の安全のために名を伏せたり偽名を使うことは多いからね。それと、商品が一つ売れる毎に純利の二割をアイディア料として支払う。これでどうかな?」

「どうかなと言われても」


 何が適性価格なのかが分からない。寧ろこの世界の貨幣価値が分からないんだけれど。


「妥当な価格だな。受注か?」

「まずはね。設置するとなれば大型魔道具の分類になる。まずは欲しそうな金持ちやギルド、商会なんかに売り込みかけて受注生産。その後の様子を見て一般販売も考えるよ」

「だな。マサ、この契約は大丈夫だ。心配はない」

「あの、本当に?」

「本当だよ、マサ。私はこれで騎士だったんだ。秘密は漏らさないよ」

「昔から知っているが、信用できる相手だ。とりあえず任せてみないか?」


 クナルがこうまで言うなら、本当に信用できる相手なんだろう。何より俺は洗濯機が欲しい。なんなら掃除機も欲しいくらいなんだけれど、取り急ぎはこれだろう。

 信用できる相手を増やして、今後も欲しい物を作ってくれたら有り難い。今はその大事な一歩だ。


「お願いします!」

「こちらこそだよ、マサ」


 にっこりと笑った人と、俺は改めて握手を交わした。

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