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【完結済/毎日20時】おまけの兄は異世界で騎士団のお世話をします  作者: 凪瀬夜霧
2章 おまけの兄→女神の使徒
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109話 君の想いに触れたのは(8)

「反撃くるよ、クナル殿」

「あぁ、分かってる」


 思い切り体当たりしたにも関わらず沈まなかった船に、リヴァイアサンもまた疑問そうにしている。

 だが持ち直したのか一旦距離を置いた魔物の周囲に青い魔法陣が浮かぶ。


「魔法くるよ!」

「させるかよ」


 ニッと笑ったクナルが手を前に出す。すると同じように青い魔力が彼に集まってきて、それは徐々に氷の針……から、槍に……って!


「何この数!」


 クナルを中心に数十本の槍が浮いている。それでもクナルは余裕そうだ。


 リヴァイアサンが一声鳴くと青い光線のようなものがこちらへと放たれた。それを見て、クナルもまた発動の呪文を唱えた。


『アイシクルランス』


 無数の槍が放たれた光線めがけ一斉に飛んでいくさまはロボットアニメとかに出そうな光景だ。数十の槍が一斉に高速で飛んでいくのだ。

 それらは光線の一つ一つに的確に当たり相殺していく。空中で爆発する魔法の振動で海は波立ち風が吹き荒れている。


「これはまた壮観」

「はは、だよね」


 遠い目をするシルヴォと半笑いの俺。これを成したクナルは満足そうだが、それでも足が止まらない。


「とにかく足回りを狙って! 奴の足を止めないと大砲が使えません」

「分かってるよ!」


 でも、実際どうしたらいいのか。高速で、海の中を飛ぶように動く巨体を捕らえる術はあるんだろうか。


 苛立つ様子。リヴァイアサンは一度上空へと高く上がると海に突き刺さるように入っていく。


「くっ! マズい、水の中は!」


 船からは死角になる。何処からくるか。あんなのに船底からこられたら船が真っ二つになってしまう。


 慌てて探って、でも見えなくて。

 それが見えたのは本当に、最悪の事態の数秒前だった。


 ズドォォォン! と大きな水しぶきが船団の真ん中辺りでする。

 リヴァイアサンは深い海から一気に加速してそこへと出たのだ。鋭角な頭部はカジキとかと同じで突き上げたものを貫き破壊する。船が一つ巻き込まれ、残骸がバラバラと一部上空へも舞い上げられて落ちていく。人や、物も。


「……っ!」


 まただ、また犠牲になる。このままじゃ沢山の人が死ぬ。

 ベヒーモスのことを思い出していた。あの時生き残った人は本当に少しだったんだ。

 ドクンドクンと心臓が音を立てる。クナルは飛び出すようにリヴァイアサンへと向かっていき、船から船へと飛び移っていく。


 祈るしか出来ない自分が嫌いだ。無理をしてでも早期に弱らせられないか。


 そんなことを考えていた時だった。


「皆様、少し下がってくださいませね」


 そんな柔らかな声と共にリヴァイアサンの周囲に幾つもの青い魔法陣が浮かび上がっていく。それは取り囲むように幾つも……。


「え?」

『アイスエッジ』


 うっとりと優しい声が断罪の言葉を告げた瞬間、魔法陣から無数の氷の刃が突き出しリヴァイアサンを串刺しにしていく。悲鳴を上げた魔物は上空で踊った後で海へと落ちてきた。


「紫釉さん!」


 俺のいる船の直ぐ近くで声がしたからそちらを見れば、丁度彼は甲板へふわりと降り立つところだった。

 にっこりと綺麗な服をはためかせた人は凄く満足そうな顔をして……あれをやったのか。


「マサ殿、遅くなりました。追い立てる過程で少々怪我人が多く、一時離脱していたのです」

「そうなんですね。あの……今のは……」


 随分エグい鉄の処女を見た気がする。

 けれど当人はとても満足そうである。


「マサ殿が直してくださったおかげで、以前よりも思うように魔法が使えるようになったのです!」

「あぁ……」


 それは、あれだ。魔力を放出する穴が少なくて、尚且つ小さいと女神に言われてそこをキリみたいなのでグリグリ抉ったからですね、きっと。

 あれ、良かったのかな? なんか、今見た感じ少し怖い気がするけれど。あれってさ、何かしらの意志が働いてこの人に存分に魔法使わせないためのセーフティーだったんじゃないかって気もしてきた。


「ですが、まだ足りませんね」

「え?」


 スッと紫釉の目が細くなる。その眼前で水が再び盛り上がりリヴァイアサンが姿を現した。しかも、ほぼ無傷だ。


「足止めをします。少し時間を稼いでください!」


 紫釉がパンと手を一つ打つと海面に青い光が幾つもの輪を連ねた形で現れた。それは綺麗な花文様にも見えるけれど、規模はもの凄く広い。


「こんな規模の魔法か!」

「下がれる者は下がれ! 魔法部隊、遠隔で攻撃!」


 シルヴォの指示で魔法部隊が一気に魔法を放つ。雷や炎の魔法をリヴァイアサンは煩わしそうにしている。その間に大砲による大型の雷魔法も展開された。


 海面の魔法陣が徐々に浮き上がり、同時に波が起こり始める。外へは押し出すように遠ざける波が、内には引き留めるように内向きの波が起こり、中心は渦を巻き始めている。

 この時点でクナルが俺の隣に戻ってきた。


「これはデカいぞ」

「クナル、発動したら動く。物理で殴るぞ」


 燈実の言葉にクナルは頷く。そしてその直ぐ後で、紫釉がスッと息を吸った。


『デッドエンド』


 青い魔法陣から氷の粒が舞い上がり、海面が音を立てて凍り付く。ただ凍り付くのではない。そこに一つ大陸が出来るかのように分厚い氷がリヴァイアサンを凍土へと閉じ込めていく。巨体の足元から氷柱が現れ、それがビシビシ音を立てながら凍り付いていく。

 凍土と化した海はまるで最果てにある絶対零度の世界のようだった。


 直後にクナルと燈実は動いた。船から船へと凄い勢いで飛び移りながら凍土へと降り立った両名は一直線に凍り漬けにされたリヴァイアサンへと迫る。

 クナルは先程の指輪から剣を、燈実も腕輪から大きな刀を取りだし平行になって走っていく。そして数多ある氷柱を足場に駆け上がったかと思えばリヴァイアサンの首めがけてクロスするように切り込んだ。


 確かに首が切れたような気がした。氷ごと彼等は切った……と、思ったのだ。


「……まだです」

「え?」


 でも今、倒したんじゃ。

 だが、紫釉が指差す先でリヴァイアサンの氷が割れていく。切り込みの入った首のところから砕けていく。

 そうして現れた化け物の首からは確かに血が流れていた。だがそれは直ぐさま消えてしまったのだ。


「なんで!」

「再生能力が高いのでしょう。これはこちらが不利です」


 再生って……それじゃこちらの体力が!


 それでもクナルと燈実は諦めず攻撃を繰り返した。徐々に氷は砕けるがまだ完全じゃない。その間に少しでも多くのダメージを与えようとした。が、攻撃をしてもそこからやはり傷が治っているように見える。


「これどうにかしないと詰むぞ!」

「弱点もまだ見つけられていない」


 やがて大きく息を吸ったリヴァイアサンの動きに紫釉はハッとする。俺もこれを知っている。


「皆逃げて! 攻撃がきます!」


 紫釉の言葉に反応出来た船もあった。だが、二隻ほどが間に合わなかった。

 青い光を口からレーザーのように出したリヴァイアサンの攻撃に間に合わなかった二隻が巻き込まれ真っ二つにされて沈んでいく。

 これをクナルと燈実は悔しく見つめ、次には更なる攻撃の手を加えたが、やはり相手が大きすぎて通用しない。


 このままでは……そんな焦りのある中、何かがリヴァイアサンの上空へ飛んで行くのを見つけた。手には重そうな何かを抱えたそれは奴の頭上へとくると手にしていた物をポンと落とした。

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