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【完結済/毎日20時】おまけの兄は異世界で騎士団のお世話をします  作者: 凪瀬夜霧
1章:おまけのお兄さん?
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1話 おまけのお兄さん(1)

「お兄ぃ!」

「星那!」


 突如真っ白い光に包まれていく妹の悲鳴に、俺は手を伸ばした。けれどその手は虚しく空を掴むばかりで妹に届かない。

 その間にも光は妹を包み込んで収束していき、やがて彼女ごと消えてしまった。


「何が……っ!」


 何が起こったのかも分からない俺は、それでも妹の行方を捜さなければと走り出そうとしていた。その時だ、突然真っ暗な穴が足元に空き、俺は真っ逆さまに落ちていく。


「うわぁぁぁぁ!」


 底が見えない。落ちているリアルな感覚が肌にある。浮き上がるような内蔵の気持ち悪さに意識が遠くなりかける。しかも穴はどれだけ深いのか、落ちても落ちても底が見えない。

 妹が謎の光に包まれて消えて、俺は穴に落ちて死ぬのか! 不運どころの話じゃないだろ!

 意識があるのか無いのかも曖昧になるくらい落ちた俺は、突然下が光ったのに気を取られた。真っ白な光の中へと吸い込まれるように落ちた先は、硬い石の床だった。


「あで!」


 すっ転んだくらいの衝撃で石畳の上に落ちた俺は、それでも命があることに驚き今更ながら心臓バクバクしている。普通助からない。


 そこは見た事もない外国の教会とか、神殿みたいな場所だった。床も壁も白っぽい石造りで、凝った装飾をした柱が円形に建っている。その内側の円は一段低くなっていて、床には何か模様が描いてあった。

 ここはどこだろう? 少し痛む体をさする俺の耳に、突然聞き慣れた声が聞こえた。


「お兄ぃ!」

「星那?」


 ハッとして声のする方を見た俺は呆然とした。

 さっき光に消えていった妹がその時のままいるのはいい。無事に見つけられたんだ。


 けれど、彼女を取り囲んでいる人達が問題だった。


 皆背が高くてスラリとした体型をしている。白に金糸の、アニメに出てきそうな騎士の格好をして腰には剣を差している。そして彼等の頭には動物の耳がついていて、お尻の辺りからは尻尾も生えていたのだ。


「え?」


 ここは……どこだろう?


 突然目に飛び込んできた異世界な光景に思考が鈍る。へたり込んだまま呆然としていると、その中の一人が此方を見た。

 波打つような長い金色の髪に尖って大きな金色の耳。尻尾は太いがシュッとしている。

 あ、これ狼だ。図鑑とかで見た事ある。

 そんな事を呆然と思っていると、整った顔立ちの金髪狼人間は不機嫌な様子でツカツカと近付いてきてへたり込む俺を見下ろし、鼻で笑ったかと思えばいきなり腕を強く掴んで引き上げられた。


「いた! 痛い!」

「余計な事を言うな! 誰か、こいつを牢にぶちこんでおけ!」


 牢? 牢って、牢屋ってことか? なんで突然知らない場所に来て、何も分からないうちに牢屋になんて入れられなきゃならないんだよ!

 怖くなって腕を引くけれど力が強すぎてびくともしない。無理に引っ張ったらこっちの肩が抜けてしまいそうだ。


「お兄ぃに乱暴な事すんな!」


 星那が大声を上げて暴れている。昔から気の強い妹で、兄なのに助けてもらう事も多かった。

 でもここで抵抗は危ない。気が強くても彼女は十代の女の子なんだ。


「星那、あぶない!」

「聖女様、こちらへ。お部屋を用意しておりますので」


 先ほどの金髪狼人間はぱっと表情を変えて俺の腕を放す。ドタンと再び床に尻餅をついた俺を見て今度こそ星那は青筋を立てた。


「お兄ぃに乱暴したらぶっ殺す!」


 あぁ、可愛い女子高生がそんな言葉を使うもんじゃないって前から言ってるのに。

 腕は離れたけれどまだ痛い。その部分を庇うように摩る俺に、今度は妹の側にいた白い騎士服の奴等が数人こっちにきて俺を見下ろした。


「そいつを牢に入れて尋問しておけ。決して聖女様に近づけるなよ」

「はっ!」

「っ!」


 捕まったらもう逃げられない……。そんな不安と焦りに足だけで後退る。その俺の背が突然トンと何かにぶつかった。

 見上げた先にいたのは大柄な虎耳虎尻尾の男の人だった。黒い制服に腕まくりをしたワイルドなその人は俺を見て、次に目の前にいる白い制服の人達を睨んだ。


「スティーブン王子、これはどういうことかねぇ」

「……デレク」

「王太子殿下からは、準備が整ってからだと言われてませんでしたかねぇ?」


 眼光鋭く睨んだ虎獣人に金髪狼は怯んだようだった。明らかに表情が変わる。だがどうやら身分的にはあちらが上なのだろう。腕を組み、フンと笑った。


「ぐずぐずして居られなかったのだよ。父上含めてどうにも悠長に構えているが、事は深刻だ。一刻も早く聖女様をお迎えせねばと思い儀式を行った」

「あのねぇ、準備が整っちゃいないんだよ。聖女様を迎えるとなれば部屋やメイドの手配、聖女である認定をするには神殿の神官長が立ち会わなきゃなんねぇのにそれも居やしない。いっちゃん悪いのは、ここに陛下か、陛下の名代が見届け人として同席してないことだろうが。それがなきゃ聖女だって認定できねぇんだぞ!」

「彼女は確かに異世界より招いたのだ! ここにいる者全員が証明」

「たかが取り巻きの騎士と魔道士が証明したって何にもなんねぇって言ってんだよ」


 ドスの利いた声で一歩前に出た虎獣人の迫力は凄い。今にも襲いかかっていきそうな様子に俺も緊張する。

 だが王子様は諦めていなかった。


「そんなもの、後ほど教会に連れて行き能力やスキルの鑑定を行えば分かることだ! それに聖女様の部屋は私自らが整えてある。騎士風情が大口を叩くな!」


 そう言って王子は星那の肩を抱き……思い切り叩き払われていたがめげずにいる。そして此方を見て近づいてきそうな星那を半ば強引につれて行ってしまった。


初めまして、凪瀬と申します。

本日より始めさせていただきましたので、節目だけごあいさつを。

実妹の異世界召喚に巻き込まれた兄:智雅が、そこで騎士団宿舎の家政夫をしながら知らない間に授けられたチートスキル「祈り」を使い、世界を救っていく物語です。

チートといっても攻撃力皆無なので、無双できたりはしないんですけれどね(笑)


初回はこのまま一気に4話更新です。

そして初日20時から、更に6話更新です。

固定20時更新予定ですので、今後ともよろしくお願いします。

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