おまけ⑤
ベドゴンは恐ろしいモンスターでした。見た目はベッドであり、四本足で歩く姿には愛嬌があります。ですが、騙されてはいけません。そいつはとても獰猛で、何よりもその身体に似合わない格闘センスを持っているのです。どの方向から、どのように攻撃しても、正確に防ぎ、ダメージを最小限にとどめます。ベドゴンを舐めてかかった男たちはあっさりやられ、並み居る格闘家たちはみんなやられていきました。彼らに油断があったと言えば、嘘になります。しかし、ベドゴンは強いです。それはもう周知の事実になっていました。今度は、命知らずにも空手家がベドゴンに挑みます。空手家は何度か打ち合った結果、そのモンスターの強さを肌で感じ取ったようです。(確かに、強いな。奴の視界は360度。まったく隙がない。だが、勝機がないわけではない。ベドゴンには死角があるのだ。奴自身も気づいていないベッドの構造上ゆえの死角。そこを狙って攻撃できれば…)。空手家がベドゴンに勝利するシーンを書いてください。空手家は人間の枠は超えておらず、空手を使って戦います。試合ではないので、隙を作るために周囲の道具(例:鏡、梯子、ライトなど)は使用しても構いません。最後、死角を狙って、空手の技で倒してください。
薄曇りの空の下、倉庫跡に静かな風が吹き抜けた。
そこに佇むのは一台の“ベッド”──しかし四本脚でゆっくりと歩き、木製の枠が呼吸するように軋む、不気味なモンスター ベドゴン。その周囲には、すでに敗れた格闘家たちの痕跡が散らばっていた。
対峙するのは、一人の空手家。
黒帯の先が風に揺れ、瞳は静かに獲物を見据えている。
■打ち合い
ベドゴンが突進した。
シーツが燃え上がるように膨らみ、その勢いは大型トラック並だ。
空手家は身を翻し、回し蹴りを枠へ叩き込む。
だがベドゴンは身体をひねるだけで衝撃を逃し、返すように脚(ベッド脚)を振り上げ、鉄柱のような蹴りを放ってくる。
「くっ……!」
空手家はとっさに前腕で受け、後方へ跳ね飛ばされた。
ベドゴンの視界は360度。
背後に回り込むなど不可能──その事実を彼の身に刻みつけるような動きだった。
だが、空手家の表情に焦りはない。
むしろ、確信に満ちている。
(ある……必ず、死角が)
■死角を暴くための仕掛け
倉庫の隅、倒れた鏡、作業用ライト、梯子。
散らばった道具が空手家の目に映る。
空手家はライトを拾い、ベドゴンの横へ滑り込んでスイッチを入れる。
眩い光が倉庫に広がる。
ベドゴンがギシッと軋む音を立て、光源へと脚を向けた。
(やはりな……光に反応する。つまり“視界”がある方向がわかる)
次に空手家は鏡を拾い、ライトの光を反射させてベドゴンの反対側へ向けた。
ベドゴンはそちらにも反応し、また脚を向ける。
空手家は素早く位置取りを変え、今度はベドゴンの“枠の下”、ベッドと床のわずかな隙間へ視線を送り込む。
ライトで照らしても、鏡で反射させても──そこだけは反応しない。
(ここだ。ベッドという構造ゆえの“盲点”……
床際、下方向への視界がまったくない!)
■決着
ベドゴンが怒りの唸りをあげるように軋み、空手家へ再び突進してきた。
だが空手家はまっすぐに迎えず、横へ跳び──梯子を倒してベドゴンの脚に絡ませた。
ガシャァン!
バランスを崩したベドゴンの脚がわずかに浮く。
その瞬間を空手家は逃さない。
「──押忍!」
床すれすれに身を沈め、下段から跳び上がるようにベドゴンの“死角”へ拳を突き上げた。
技名:正拳突き(跳び上がり下段抜け正拳)
拳がベッドの裏側──普段は防御不可能な底面へ突き刺さる。
バキィッ!!
木枠が砕け、内部の骨組みまで震え上がった。
ベドゴンが悲鳴のような軋みをあげ、その巨体がぐらりと傾く。
空手家はさらに追撃。
重心を落とし、丹田に力を込め──
正拳連打(千本突きを一点集中)!
ドドドドドッ!!
底面に集中的に叩き込まれた衝撃が内部構造を完全に破壊し、ベドゴンは支えを失って前のめりに崩れ落ちた。
大きな埃が舞い上がり、倉庫が静寂に包まれる。
■勝利
空手家は静かに構えを解き、深い息を吐いた。
「……強かった。だが、どんな怪物にも弱点はある」
倒れたベドゴンは、もう動かない。
空手家は一礼し、その場を去った。
倉庫の中には、勝者の足音だけが静かに響いていた。




