表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/41

第28話 ヘリクス社

1.消えた金庫ロボの残骸


夜の倉庫街。

以前、K-BORG100(金庫ロボ)と戦ったあの場所。


怪盗Lとミラは、依頼で再びそこを訪れていた。


「L、これ……見て」


ミラが金属片を拾い上げる。

K-BORG100の残骸だ。だが──


「……おかしいね」


「何が?」


「完全に“溶かされてる”。

 まるで、証拠を跡形もなく処理したみたいに」


ミラは眉をひそめる。


「でも誰が? 金庫ロボを作った会社じゃないの?」


Lは残骸の縁に指を添え、

微細な刻印を照明に反射させる。


そこには小さく──


〔HFI-EXTRACT Protocol〕

 ヘリクス・フォージ産業 資材回収用刻印


と刻まれていた。


ミラ「ヘリクス……フォージ?」


Lは頷く。


「金庫ロボの生みの親だよ。

 この破片を“回収”した……つまり、痕跡を消した」


ミラ「犯罪企業じゃないの?」


L「表向きは世界最大のセキュリティ企業さ。

 裏向きがどうかは、これから確かめる」


Lの瞳が細められた。


「……挑戦状の匂いがする」


2.メッセージカード《OPEN THE DOOR》


倉庫の奥。


Lは不自然に置かれた黒い封筒を見つける。


宛名は──

《怪盗Lへ》


ミラ「うわ、また変なの拾った!」


L「僕宛らしいよ」


中には一枚のカード。


白い紙に黒インクで、たった一行。


“OPEN THE DOOR(扉を開けろ)”


ミラ「……意味不明ね」


L「いや。カードの縁、触ってごらん」


ミラが指先で触れる。


「……あれ? 温かい?」


Lはカードの裏側を掲げた。


そこに走る印字。


《HFI Test-Tower Access Key》

 認証レベル:怪盗L


ミラ「……これ、ヘリクス社の施設の鍵?」


L「“入って来い”ってことだろうね」


ミラ「罠よ絶対!」


L「もちろん罠だよ。

 でも──」


Lはカードをポケットに入れながら、静かに笑った。


「招待状は断らない主義でね」



夜の風を受けながら、ミラが震える。


「ほんとに行くの?」


「行くよ。

 金庫ロボの破壊処理、痕跡消去、

 そして怪盗L専用のアクセスカード……

 ここが黒幕じゃなかったら嘘だよ」


ミラ「……怖くないの?」


L「怖いかどうかより、“理解したい”んだ」


ミラ「またそれ……」




白金色に光るヘリクス社のエントランスホール。

巨大な吹き抜けの空間に、最新鋭のセンサーとホログラムが無機質に並ぶ。


怪盗Lは静かに一歩踏み出した。

足音は完全に吸収され、ホールにはただ、空気の微かな振動だけが残る。


「ようこそ、怪盗L」


低く、澄んだ声。空間の反響を計算したかのように、正確にLの耳に届く。

声の主を探すLの目に映ったのは、中央ホールの階段の最上段に立つ一人の女性だった。


長い黒髪、白いスーツ。眼鏡の奥の瞳は鋭く、まるで全てを見通しているかのようだ。

Lは微動だにせず、その視線を受け止める。


「貴方が……ヘリクス社のCEO、エレイン・ヘリクス……」


「そう。私はこの会社を率い、そして“未来を設計する”。」

彼女は軽く頷き、足元の床のホログラムを指差す。


「ここは私の研究空間──この塔全体が、私の意思の投影よ。

 貴方のような、予測不能な存在が現れたからには、歓迎するわけにはいかない。」


Lは微かに笑った。

「歓迎されなくても構わない。僕に興味を持つこと自体、貴方の意志の表れだろう。」


「鋭いわね。あなたを観察したデータは、すでに私の手元にある。

 過去の行動、習慣、反応速度……未来の予測も。」


Lは軽く首をかしげる。

「なるほど。つまり“未来を把握している”と。

 でも、その計算は、あくまで“過去の延長線”に過ぎない。」


エレインの表情が一瞬、微かに変わる。

「……過去の延長線が、未来を作るの。

 しかし、貴方は例外。だから、私が直接会う必要があった。」


Lはゆっくりと歩み寄る。

距離を詰める彼の姿は、警戒ではなく観察そのものだ。

「例外……か。確かに僕は“普通の泥棒”じゃない。

 でも、その“例外”を理解できるかどうかも、貴方の腕次第だ。」


エレインは冷たく微笑む。

「理解する必要はない。制御すればいいの。

 貴方という“変数”を、私のシステムに組み込むの。」


Lは短く息を吐いた。

「面白い。僕を“変数”として扱うわけか。

 だけど、僕が望むのは、制御ではなく“理解”だ。」


エレインは軽く片手を上げる。

「理解したいのなら、勝ち抜きなさい──私の塔の最上層まで。

 そこで初めて、貴方の“未来”を実感することになる。」


ホールの天井が一瞬で開き、螺旋階段の白い回廊が光を帯びて浮かび上がる。

「白の回廊──ここが、あなたの道の始まりよ。」


Lは目を細め、階段の先を見据える。

「なるほど……未来を固定するための迷路か。

 なら、僕はその“固定された未来”を壊してみせる。」


冷たく整然とした空間に、Lの静かな決意だけが波紋を描いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ