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二人の場合
――半年後。
ダフネが迷宮の入り口へと立っている。
『そなたらが口にした果実は計六つ。よって、一年の半分をこの楽園で過ごさねばならぬ』
羊頭鬼が口にした言葉が脳裏をよぎる。
ダフネは隣に立つ人物へと目をやった。
「……どうした? やはり怖くなったか?」
そこに、〈赤の王〉――であった、ペンテウスが立っている。
彼はいつもの笑みをたたえて、ダフネを見た。
「……いいえ」
ダフネは首を左右に振った。
この半年の間だけでも色々あった。今さら、怖がることなどない。
――それに、隣にあなたがいる。それだけで充分。
ダフネは手を差し出した。それを受けて、ほんの少しの逡巡を見せた後、ペンテウスはその手を握った。
――あなたとなら。どこまでも。いつまでも。
二人が迷宮の中へと足を踏み出す。
先程まで暗闇であったその先には、今は見渡す限りの景色が、二人の眼前に広がっていた。
了




