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115 痛恨のミス

 そして次の日。


 オレはいつもよりも朝早く起きて、特別に与えられている学園の制服に着替える。そして、いつものようにソーセージマルメターノを朝食に齧りつつ、学園へと向かう。


 学園の門番に騎士見習いの証を見せて学園の中に入った。向かうはエグランティーヌが寝起きしている白い離宮だ。


 離宮の入り口では、大人の近衛兵二人と学生服を着た大柄な男が談笑していた。


「来たか、ジルベール。今日は早いな」

「少し用事があったもので……」

「そうか。少し早いが、護衛の交代を頼む」

「「はっ!」」


 大人の近衛兵二人からエグランティーヌの護衛任務を託され、オレはコルネリウスと二人っきりになった。


「おはよう、ジル。今日は早いね」

「おはよう。今日はちょっとコルネリウスに頼みがあってな」

「ワシに?」


 コルネリウスが目をパチクリさせていた。


「ああ。実は商人になって商会を立てたいんだが、伯爵以上の貴族の推挙が必要でな。それを頼めないかと思って……」


 オレの言葉を聞いて、コルネリウスは少し困った顔を浮かべる。


「それなら、ワシの父上に用なんだね。でも、父上もお忙しいお方だからなぁ……。一応、会談をセッティングすることはできるよ? でも、父上を納得させられるようなものを用意しないと難しいかも……」


 これは暗に無理だと言われているな。


 まぁ、オレとコルネリウスは知り合いだけど、オレとコルネリウスの父親は赤の他人だ。息子の知人だからという理由だけで後見人になってくれるようなことはないだろう。そんなにアッヘンヴァル伯爵の名は安くない。


 それは予見していた。


 そこはやっぱり時間をかけて信頼を勝ち取るしかないな。


「まぁ、やれるだけやってみるよ。セッティングを――――」


 そう言いかけた時、ガチャリと離宮の扉が少し開く。


 少し開いた扉の隙間から姿を現したのは、長い耳を持つ黒髪の少女だった。


 少女はオレのことなんて知らないかもしれないが、オレは彼女を知っている。


 エヴプラクシア・マカロヴァ。


 エルフの貴族であるマカロヴァ侯爵家の娘だ。ゲームでも登場し、主人公の心強い味方になってくれる。主人公の仲間になってくれるキャラクターは多いが、エヴプラクシアはその中でも上位の強さを持っている。


「あら? ジルベール、今日は早いのね。もうすぐ姫様がいらっしゃるわ。控えて待っていなさい」

「ああ」

「わかったよ、シア。ジル、後でまた話そう」

「わかった」


 もうちょっとアッヘンヴァル伯爵の情報が欲しかったが、まぁ、仕方がないね。


 早く商人として動き出したいが、急いては事を仕損じるなんて言葉もある。ゆっくりやっていこう。


 と思ったのだが……。


「ジルが商人になりたいというのは本当ですか?」


 翌日。


 昨日と同じようにエグランティーヌの護衛に来たら、なぜかエグランティーヌはオレが商人になりたいことを知っていた。


 というか、何で知ってるんだ?


 となりでオレと同じように跪くコルネリウスを見ると、ふいっとコルネリウスが視線を逸らした。


 お前が言っちゃったのか!?


 さて、犯人がわかったところでエグランティーヌに答えないといけないのは変わらない。


 ここは正直に言うか……。


「はい。自分の商会を持ちたいと考えています。ですが、それには伯爵以上の貴族の推挙が必要です。そこで、コルネリウスの御父君であるアッヘンヴァル伯爵への面会を求めていたのですが――――」

「でしたら、わたくしがジルの後ろ盾になります」


 オレの言葉を遮るように瞳を輝かせて前のめりで言うエグランティーヌ。


 あぁ。また面倒なことに……。


 オレのうぬぼれでなければ、エグランティーヌはまだオレに気がある。


 だが、オレにはもうアリスという婚約者がいる。その上、エグランティーヌの気持ちを受け取るなんて不誠実なことはできない。複数人の女性を満足させられるほどの甲斐性が自分にあるとは思ってないしな。


 そんな状態で、エグランティーヌの世話になるのはいかがなものか。


 だからコルネリウスに相談したのに。バラしやがって。


「いや、それは――――」

「わたくしなら王族ですもの。伯爵以上という条件でも大丈夫です」

「でも――――」

「実はもう書類を書いてしまったのです。ジルが良かったら受け取ってください」

「は、はあ……。ありがとうございます、エグランティーヌ殿下。このご恩は、このジルベール、生涯忘れません……」

「はい!」


 オレは震える手でエグランティーヌから書類を受け取った。書類は商人ギルドから取り寄せたのか正式なものだ。


 エグランティーヌの後ろではエヴプラクシアが口を手で隠して肩を震わせている。きっと笑っているんだろうなぁ。


 王族にここまでされて断れるわけないだろ! いい加減にしろ!


 せっかく、エグランティーヌに借りを作ることがないように動いていたのに……。翌日にはバレてるとかどうなってるんだよ!


 まぁ、コルネリウスに口止めをしなかったオレのミスか。


 はぁ……。

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ジルが未熟なのか、世界観的にもジルの思考が正しいのかどっちだろ? > オレにはもうアリスという婚約者がいる。その上、エグランティーヌの気持ちを受け取るなんて不誠実なことはできない。複数人の女性を満足…
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