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111 ドワーフの男

 明らかに嘲笑を帯びた声に振り向くと、そこには二メートルを超える巨漢がいた。


 ハゲあがってピカリと光る頭部。それとは逆にまるで密林のように生い茂ったゴワゴワしたヒゲ。人間のものよりも黒いその地肌。


 ドワーフだ。ドワーフの男が嗤うような目でオレを見下していた。


「やっぱりお前が噂の死神か。ソロで変異個体を狩って回ってるんだって? その変異個体は、冒険者ギルドからの依頼で俺様たちが狩る予定だったものだ。横取りはよくねえなあ?」


 そう言って、ドワーフの男がその左手に持っていた酒瓶を呷る。


「かぁー! ったく、余計なことしやがって。とりあえず、ほれ」


 そう言ってオレに向かって右手を伸ばしてくるドワーフの男。その手が何かを求めるように動く。


「有り金、全部貰ってやるよ。それでチャラにしてやる。寛大な俺様に感謝するんだな」

「はあ?」


 こいつは何を言ってるんだ?


 酔って自分の行動を省みられないのだろうか?


「ちょ、ちょっと待ったあ!」


 もうドワーフは無視して帰ろうとしたら、震える声と共にオレとドワーフの間に入り込んできた男たちがいた。


「お前たちは……」

「よお、死神」


 今日、第二十五階層でモンスタートレインに襲われていた五人組パーティだ。


「あんたには助けてもらったからな」

「今度は俺たちが助ける番だぜ」


 男たちがオレに向かってグッと親指を立ててみせる。オレはもう帰ろうかと思ってたんだけど、この場に残った方がいい感じ? 気持ちは嬉しいけど、面倒だな。


「なんだあ? お前たち、俺様の邪魔をする気か? 俺様はあの最強クラン、『グレイブディガー』のメンバーだぞ? そこのとこ、わかってんのか? うん?」

「なん!?」

「マジかよ!?」

「こいつはマズったな……」


 しかし、なんだかオレのことを守ってくれそうな男たちだったが、ドワーフの男の言葉にあからさまに怯んだ様子を見せた。


 クラン? 『グレイブディガー』って何やねん?


「俺様に敵対するってことは、『グレイブディガー』を敵に回すってことだぜ? その覚悟がねえなら引っ込んでろよ」

「くそう……」

「すまん、死神……」


 悔しそうな顔をして引き下がり、オレに向かって謝る男たち。


「なぁ、その『グレイブディガー』って何なんだ?」

「「「「「はあ!?」」」」」


 オレのその言葉で、男たちはもちろん、ドワーフの男、果てはオレたちの騒動を遠巻きに見ていた冒険者たちも驚きの声をあげる。


「え?」


 そんなに『グレイブディガー』って有名なのか?


「がハハハハハッ! 『グレイブディガー』の名を知らない奴が冒険者にいるとはな! いいか、よく聞けよ? 『グレイブディガー』はこの王都でも最強のクランだ! そして、俺様はそのメンバー! 俺様に盾突くってことは、『グレイブディガー』を敵に回すってことになる! そんなことできるはずねえよなあ? ほれ、大人しく有り金だしな」

「ふむ……」


 ただのチンピラかと思ったんだが、面倒な奴に絡まれたらしい。金で解決するというのもこの場合はありなのだろう。


 だが、オレの持っているお金は、将来アリスの授業料や衣装に使われる予定のものだ。ダンジョンの低階層のレアポップモンスターを狩りつくしてしまった今、失うわけにはいかない。


「それはできない」


 オレは拳を握ることで戦闘も辞さない構えを見せた。


「バカな奴だ。大人しく出してれば、まだ英雄ごっこができたのによ! 俺様が貴様の化けの皮を剥いでやるぜ!」


 ドワーフの男がコップを投げ捨てると、腰の分厚い剣を抜く。その姿勢はピンと伸びており、剣先は巌のようにピクリとも動かない。男がそれなり以上の実力者である証だ。


 男は最強クランのメンバーだと言っていた。少なくともクランに入ることを認められるくらいには強いのだろう。


 まずは様子見でもするか。


 オレは覚られないように徐々に重心を前へと倒していく。オレの十八番。縮地だ。


 オレはそのままドワーフの男の懐に入り込むと、その鳩尾がけてアッパーカットを繰り出した。


「ぐほっ!?」


 男の鳩尾にめり込んでいくオレの左拳。


 骨を避けるように放たれた拳に返ってくるのは、柔らかいゴムを殴ったような感覚だった。


 ようやく動き出そうとしていたドワーフの男の動きを止めるほどの一撃。


 我ながら会心の一撃だ。


 オレが次に繰り出したアッパーカットは、がら空きになった男の顎を蹂躙する。


「はぐっ!?」


 ドワーフの男の口からガチンッと歯の打ち鳴る音が冒険者ギルドの中に響いた。


 そのまま後方に飛び、頭から木の床に落ちるドワーフの男。その目は完全に白目を剝いており、口からは赤い泡がぶくぶくと溢れ出していた。


「あっけないな……」


 まずは様子見のつもりだったんだが、まさか縮地に対して反応もできないとは。


 あれか? モンスターの相手ばかりで対人戦の経験が少ないとかか?


 それにしたってお粗末だな。


「はぁ……」


 まぁ、邪魔者は片付いた。もう帰ろう。

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