108 第二十五階層②
本日書籍第二巻の発売日です!
ジルとアリスの足跡をその目で見てみませんか?
よろしくおねがいします!
「助けてくれてありがとよ!」
「白の死神……。噂には聞いていたが、まさかこんなに強いとはな……」
「いや、強すぎるだろ! なんだよ、あれは!?」
「よほどすごいギフトなんだろうなぁ」
「ちげぇねえ! 酒場で話してもホラ話だと思われるのがオチだぜ。おい、これでいいか?」
助けた五人の冒険者に手伝ってもらって、モンスタートレインを構成していたモンスターたちのドロップアイテムを集めていく。
「ありがとう。助かるよ」
「いいってことよ」
「それを言うなら、俺たちだって命を助けてもらったしな」
「そうそう」
男たちは意外と文句なく手伝ってくれて、ドロップアイテムはすぐに集まった。かなりの量が集まったな。やっぱり大量のモンスターを倒すには、モンスタートレインを活用するのが楽そうだ。
とはいえ、これだけの量のモンスターを集めるのもまず大変だな。そもそもオレの場合、モンスターを集める時間もかかりそうだし、集めている時間があるなら、その時間で倒してしまった方が早い気がする。
「そう言ってもらえてよかったよ」
「そうそう。っぱ冒険者は助け合いだよなぁ」
「調子のいい奴だな、お前は」
なんか気のいい奴らだなぁ。
「死神」
男たちのリーダーらしき男が真剣な顔でオレを呼ぶ。
というか、その死神って呼ぶのやめてくれないかな。めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……。
「どうしたんだ?」
「我々を助けてくれてありがとう。本当に感謝している」
「いや、いいんだ。オレも貰えるもの貰ったしな。拾い集めるのも手伝ってもらったし」
「本当にバッファローのミルクだけでいいのか? 命を助けてくれた上に、アイテムまで貰ってしまうのは……。少ないが、王都まで帰ればパーティで貯めてる資金からも――――」
「いいよ。オレからのプレゼントだ」
男たちはそれぞれ武器だけ手にしていて、その他の荷物も持っていなかった。たぶん、モンスタートレインから逃げる途中で手放してしまったのだろう。
男たちの中には僧侶の格好をしたヒーラー役もいた。だが、荷物の中には、ポーションをはじめ、冒険に必要なアイテムが入っていただろう。それらをまた用意するにもそれなりの金がかかることをオレは知っている。
オレだってダンジョンを愛する冒険者の一人として、彼らの重荷になるようなマネはしたくない。彼らには、またすぐにでもダンジョンを楽しんでもらいたいのだ。
ダンジョンの攻略を目指す同志に幸あれ。
「じゃあ、オレは行くな」
「あ――――」
オレはバッファローのミルクだけを収納空間に呑み込むと、なにか言いたそうなリーダーを無視してそのまま走り出す。
体が今まで以上に軽い。大量のモンスターを倒して、身体レベルがレベルアップしたのだろう。
いつもよりも速いスピードで草原の中を走っていく。出会ったモンスターはワンパンで調理し、どんどんダンジョンの奥へ。
「お?」
すると目の前に現れたのは、石でできた両開きの大きな扉だ。ツルツルで継ぎ目のない白い石の扉が、まるでそこだけ遺跡から切り抜かれてきたようにそびえ立っている。
「ゲームで見た通りだけど、違和感がすごいな」
この扉こそがボス部屋への入り口であることをオレは知っている。もちろん、ボスモンスターがなにかも知っている。
オレはさっそく石の扉を両手で押すと、意外にも重さを感じさせない軽やかな動きで扉が開き出した。
「さてさて……」
草原にぽつんと立った扉。その向こうは、空間がねじれているのか、草原ではなかった。
白い継ぎ目のない石によって作られた、まるでコロッセオのような円形闘技場。その直径は五十メートルくらいはあるだろう。その大きく開けた空間の中央に鎮座しているものこそボスであるデカいオオカミだ。
ブラックウルフ。ゲームではそう表示されていたけど、当然、そんな表示はこの世界ではない。
ブラックウルフはオレを見ると立ち上がった。その体高は二メートルあるだろうか。大きなクマみたいに巨大なオオカミだ。それが唸り声をあげてオレを見ている。
普通なら、日本にいた頃のオレならば、怖くなって動けなくなるような鋭い眼光だ。痺れるね。ボス戦はこうでなくちゃ。
「来いよ、ブラックウルフ。遊んでやる」
「UOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!」
ブラックウルフはオレの言葉を理解したわけではないだろう。だが、オレの余裕な態度が気に喰わなかったのか、今度は遠吠えを繰り出した。
その瞬間、まだ夕暮れだったはずの空が一気に暗くなる。そして、まるでブラックウルフの遠吠えがハウリングするように聞こえ始めた。
一気に暗くなった視界。頭上には大きな満月が輝いているため、なんとか見通すことができた。
その中で、怪しく光る黄色い一対の光。
ブラックウルフの目だ。
しかし、その数がおかしい。
一対だけだったはずの目の輝きが、どんどんどんどん増えていく。
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