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第三章                          9 大人達の想い


アリスは、アルバートと共にオベリオ王国へと帰って来た。


久しぶりの国に、懐かしさを覚えていた。

馬車の中から景色を堪能した。



「やっぱり、オベリオ王国の空は澄んでるわね」


「そうだな。空気も美味いし。帝国とは大違いだ」


「そうね。魔物や強盗が襲って来ないし」



そう言ってアリスが笑うと、アルバートも笑った。

アルバートは、アリスに口吻し膝の上にアリスを横抱きにすると「着いたら暫くはキス出来ないだろうから」と言って、何度もキスを落とした。



「けど、やっと二人に宣言出来る。そうすれば、アリスは正式に俺の女だよ?嬉しい?」


「ウフフ。嬉しいのはアルの方でしょ?」


「そりゃ嬉しいさ。アリスも嬉しいって言えよっ」


「嬉しいわよ」


再び唇を重ねる。カーテンを閉め城に着くまで何度もキスをした。



城に着くと、2人は涼しい顔で使用人に出迎えられ、アリスは王妃として、帰宅を王に伝えてと指示を出し、アルバートを客室に案内した。


すると、直ぐにウィリアムとリオベルトが駆け付けて来た。



「おかえりっアリス」そう二人に言われたアリスは笑顔で「ただいま」と言った。



ソファーに座ると、リオベルトが最初に話し出した。



「アルバートは、全て知ってるのか?」


「アリスに聞いたよ。全てね」


アルバートが答えると、リオベルトもウィリアムもアリスを見て微笑む。


ウィリアムが「良かったね」と言えば、リオベルトは「やっぱりな」と言った。


アリスは、アルバートを見た。するとアルバートが頷く。そして、ウィリアムとリオベルトに視線を向け真剣な顔で言った。



「俺はアリスを妻にしたい。正式にアリスと別れてくれ」


そう言われたウィリアムは、苦笑いした。



「直球だね。アリスが決めたなら僕は喜んで離婚してあげるよ。ただ、ちゃんとアーサーにも伝えてからだよ」



「そのつもりよ。それに、これからの事を決めてアーサーに委ねる事が先だから、それからで良いわ。

そうでなきゃ、アルも今後が決められないのよ。暫く帝王を続けるか、直ぐに譲るか。この国次第だから」



ウィリアムもリオベルトも言ってる意味が分からなかった。そんな二人にアルバートが答える。



「この国が、属性に拘り魔法を残すなら俺はもう帝王で居る意味は無いし、過去のアリスが望んだ様にするなら、俺は帝王としてオベリオ王国への技術提供する役目を果たす為に暫く続ける事になる。そう言う意味で、この国次第って事だよ。」



二人は納得し、アリスを見た。

リオベルトが話し出す。


「通信魔導具で話してから、俺達も考えた。

その前に、アリスが旅立ってから数ヶ月した頃に、アーサーとした話しをさせてくれるか?」



そう言って、リオベルトはアーサーから呼び出され質問された事や話した内容を語ってくれた。


リオベルトの妄想として、アーサーに話した話は全てでは無いが合っていた。


その時に、アーサーはリオベルトの言っている事が本当だったら良いと言っていた事も聞き、アリスは少し安堵した。


それを踏まえた上で、リオベルトとウィリアムは話し合ってた様だ。



「国王の立場から言うと、今直ぐに属性を取り上げられる貴族達が困る事になるのは、国として困るとしか言い用が無い。


それはアリスも分かるよね?


けれど、いつかは無くすのが良いと思っている。

魔法が無くても困らない体制を整えてからと言う結論に至った訳だけど、アリスはどう思う?」



アリスは少し考えて答えた。


「確かに、この国は魔法に頼り切って来たわ。

だから、急に取り上げられたら混乱するのも分かる。けど、帝国を旅して魔法に頼らずとも同じくらい、それ以上の暮らしも見てきた。


帝国は大きい分、各地の領主は独自に自立して動いていたわ。王だけに頼る訳でも無く自分の領主を一つの小さな国として運営してた。


城での負担は、この国よりも少なくなってた。

各地で魔物が現れるけど、各領主が対応するから、わざわざ王都から盗伐に出る事もない。


普通に出てくるから民達も魔物を退治する術を知ってた。


それを見て、この国は民を守ると言って甘やかしてた気がすると思ったの。


帝国の民は逞しかったわ。戦が多かったからかも知れないけど。全てが新鮮だった。概念が覆された。

リオなら分かるでしょ?」



話しを振られたリオベルトは息を吐いて答えた。



「確かに、この国は甘えた奴等が多い。

平和ボケしてるからかな。王を完璧な神だとでも思ってる様な節があるし、何かあれば王だよりだ。

帝国の民とはまるで違う。けれど、そうやって生まれてから育ったんだ。急には無理だろ?

俺だって分かってるよ。俺のして来た事は、本当に正しいのかって。でもさ、葛藤しながら光属性として完璧であろうとする前国王やウィリアムが居る限り、俺が出来るのは闇属性を活かすことしか無かった。


アリスが言いたい事は分かるが、そうやって生きてきた、それしか無かった俺達に、全てが間違いだったと言うのは酷だろがっ


オマエは、そうやって自分の正しいと思う意見を考えなしにぶつけて、ウィリアムの努力を否定してんだよ。俺達はオマエさえ甘やかした訳だな。


オマエは、ウィリアムの本当の苦悩なんて知らないもんな。俺がオマエに隠してた様にコイツも全てをオマエに晒してねぇよ。


それはオマエが大事だったからだ。

オマエは過去の天使だった頃から変わらねぇんだ。

嘆いて自分の想いだけ押し付けて、光と闇の本当の苦しみをオマエは知らねぇんだ。

神の子だ?身体は人間なんだよ。神じゃねぇ、普通の人間と同じ様に感情があって欲もある。

天使が、勝手に地上に降りてきて、勝手に天に帰った。その代償が今だろう?


いい加減にしてくれ!」



リオベルトの哀しい怒りは、アリスに響いた。

誰よりもウィリアムを大切に想うからこその怒りなのだと分かった。黙るアリスの代わりに話に入ったのはアルバートだった。



「リオベルト、逆ギレかよ?

それはオマエ達が、本音を言わなかったからだろ?

アリスが責められる事なのか?


確かに、リオベルトもウィリアム王も苦悩の連続だったと思うよ。それに振り回されたアリスの気持もオマエ達は分かってんのか?


運命に翻弄されたのはアリスだって同じだ。天使と今のアリスは別もんだろ?


混同するなよ。今のアリスだって普通の人間だよ。

違うかよ?


オマエ達と同じ様にアリスだって、本心を曝け出してた訳じゃないだろ。ずっと不安で怖かっただろうに。

オマエ達の男のプライドってヤツに、付き合いながら笑って許して、籠の中で怯えてたんだろうな。


一人は逃げ出して、一人は縋り付いた癖に本当に大事な奴に気付いたら綺麗事言って手放して、一生懸命にオマエ達を愛そうとした女を、どっちも幸せに出来なかった。


で、今は逆ギレされて。

最低なのはどっちだよ?部外者だけどさ、俺はアリスの代わりに殴りたい気分だよ」



アリスは、隣に座るアルバートの手を握り口を開いた。



「私達は、互いに自業自得よね?

傷の舐め合いだったのかも知れない。

良い子ぶって、カッコつけて…。もう、たくさんよね?


だから終わりにしよう。全て

直ぐに終わりにするのは不可能だから帝国の協力の元で技術を提供して貰って、アーサーには完全覚醒して貰わないといけない。

それだって直ぐには無理だから。


リオが怒るのも分かるわ。ウィルを想って怒ってるんだもんね。


私はウィルを沢山、傷付けたわよね。

リオと一緒にウィルを傷付けた…。ゴメンね。


リオとはお互い様よね?リオには謝らないからっ!」



アルバートに言われ、アリスにも言われてしまったリオベルトは罰が悪そうに答えた。



「俺が謝る方だからな。悪かった…

アルバートも、アリスの代わりに怒ってくれて有難うな」


アルバートは、微笑んで頷いた。



ずっと黙ってたウィリアムが最後に口を開いた。



「僕は、アリスにもリオベルトにも罪悪感しかないよ…いつだって無力感でいっぱいで、二人には助けて貰ってばかりだ。僕に悪いなんて思わなくて良いよ。


僕は、自分の弱さを隠したかっただけの不甲斐無い王だ。君達に頼らないと王で居られないんだからね…」



「馬鹿ねっ。そうやって、自分ばかり責めて。

リオみたいに八つ当たりすれば良いのよ。私みたいに好き勝手に言えば良いのよ。

ウィルは、他人に合わせてばかりで気を遣って、そうやって…もう辞めなよ」



アリスの返しに、ウィリアムは苦笑いしか出なかった。



「俺さ、アンタらの事は本当の意味じゃ知らない。

属性や魔力の善し悪しで決まる世の中の事も分からない。それが当たり前だったのなら、帝国がいつも戦いだったって当たり前と似たようなもんだろ?


人はさ、当たり前の生活が自分の普通になる。

他から見たら、それが良いと思うか悪いと思うかなんて人の考え方次第だしさ。


保守的なのも革新的でも、俺はどんどん喧嘩しながら皆で決めてけば良いと思うけどね。

国の事なら尚更だ、上のものだけで決めようとするから責任だ重荷だなんて事になるんじゃねぇのかな?


下の奴、みんな巻き込んで決めたら良くね?

それに、この国の人は外の国を知らな過ぎだ」



馬鹿正直に自分の考えを口にするアルバートにリオベルトは苦笑いして答えた。



「オマエさ、空気読めよ。

今の感じは、黙ってアリスとウィリアムの話しを聞くとこじゃね?」



「あっ、ごめん。

二人して、互いに駄目出しばっかしてるし

ウィリアム王が困ってるし、先に進めようかと」



「はぁ〜っ、オマエが居ると俺達の言い合いが馬鹿らしくなるよな。悪いが、個々に話し合う時間取らせてくれないか?アルバートは退屈かも知れないけどな」



「あ~、分かったよ。俺も気が利かなかったな?積もる話も有るよな?付き合い長い三人だもんな。

空気読めなくて悪かったよ。


じゃ〜、アリス。とりあえずウィリアム王と二人だけで話して来なよ」



アリスのウィリアムは、部屋を出て行く。

それを見送ったリオベルトとアルバート。



「さっきは言い過ぎた。悪い。

でも俺はアリスに惚れてるからさ、ムカついた」


「いいよ、俺も言い過ぎたから、止めてくれて有難うな。オマエが何も言わなかったら、もっとアリスを攻めてたと思うしな」


「俺はさ、リオベルトの気持も分かるよ。

本当は自由なアンタが、大事な男の為に頑張って来たんだもんね。だけどさ、甘やかし過ぎだから、アンナに卑屈になっちゃったんじゃないの?」


「かもな…でも、そうする事が俺の為だった。ウィリアムも俺の犠牲者かもな…」


「三人は、そう言う所が似てるんだろうな?

みんなで自分が悪かったと思ってる。で、文句言って謝って。なんか羨ましいかもね。俺には三人みたいな関係性は築けないからさ」



リオベルトは、苦笑いしながら「酒飲むか?」と聞けば「頂くよ」とアルバートは笑った。




移動した、アリスとウィリアムは、アリスにとっては久しぶりの最上階へと来ていた。


二人は黙って座ると少しの沈黙が続いた。

話し始めたのはアリスからだった。



「ウィルは、ほんと怒ったりしないわよね?

その分、ずっと胸の内に秘めてきたんでしょ?

本当は、誰よりも普通の人間になりたかったんじゃないの?だけど、王太子として生まれたばかりに、本当の自分を抑えて生きて来たんだよね?」



ウィリアムは、苦笑いして口を開いた。



「今更、そんな所から話すの?

アリス…僕は、ずっと誰かに褒められたくて愛されたくて、その為に生きて来たのかも知れない。

だから誰にも嫌われない様に必死だった。そんな僕が対抗心を持った男が一人だけいた。それがリオベルトだった。彼には好かれようとも思わなかった。


そうやって、本当の自分を出せてた唯一の人だったんだよね。それに気付きもせずに完璧で有ろうとした。それが僕の普通だから。別にツラいとも思わなかったんだよ。


アリスは勘違いしてる。僕は誰かの為に生きる事が嫌だった訳じゃないんだ。僕は強く無いからね…

皆に愛されたくて、自分が何を望んでるかも分からない。今はただ、リオベルトが傍に居てくれたら僕は何も要らないんだ。例え、一生籠の中の鳥でもね」



アリスは微笑んだ。



「ウィルにはリオが全てなんだね」


「うん。僕は強く無いから、リオベルトの存在が居なきゃ生きていけない…でも、そんな自分が好きなんだ。リオベルトしか居ない幸せを感じてたいんだ」


「まったく、惚気なの?」



二人は笑い合った。ウィリアムは、アリスにもアルバートとの事を惚気なよと言うと、二人は暫く惚気話を言い合うのだった。



「アリス。僕はリオベルトが居たらそれで良いけど、アーサーには同じ運命を辿らせたく無いのはアリスと一緒だ。時間は掛かるかも知れないけど魔法を天に返すのには賛成だよ」


「うん。何があってもウィルを一人にしないでねって私からもリオに言っておくわ」




二人は客室に戻ると、リオベルトとアルバートが酒を飲みながら談笑してるのに呆れた。



「ちょっとっ。なんで二人は酔ってんのよ?

しかも盛り上がっちゃって。リオは、まだ仕事中なんだからねっ!」



アリスに怒られた二人は「すいません」と声を揃えて言うのだった。



アリスは、リオベルトの手を取り引っ張って出て行くとウィリアムは苦笑いしてアルバートを見た。



「僕も一杯貰おうかな?」



アルバートは、笑顔で酒をGlassに注ぐとウィリアムに差し出した。



「アリスとは、ちゃんと話せましたか?次は俺と話しましょう」


「そうだね。アリスを送りだす者として言いたい事もあるしね」



差し出されたグラスを受け取ると、ウィリアムはそう言って酒を飲むと、アルバートにアリスとの事を話し、アリスを幸せにしてあげて欲しいと頼んだ。



「しかし、アンタも大変だよね?

リオベルトもアリスも言いたい放題だったろ?

あの二人は、似てるとこあるもんね。頭がキレるのか勝手に先走る所とかさ。


最悪は死んでもいいみたいな所もあるしね。

だから危なっかしいし、ほっとけない。アンタは弱くないぜ?自分が痛い事も忘れる位に人の為に尽くせるのも俺は強さだと思うからさ。


リオベルトには、もっと甘えて困らせてやれば良いよ。アイツも、それが嬉しいみたいだしな」



「君は不思議な魅力があるよね。言いたい事を素直に言っても嫌われない様な魅力。嫌われるのも厭わないからこそ変な感じにならないんだろうね。

僕はさ、気を遣ってるから逆に誰かを傷付けたりしちゃうんだ。駄目だよね…」



「アンタはネガティブ過ぎだな?

そんなとこが、リオベルトにしてみりゃ可愛いんだろうけどな」



アルバートは、笑った。

ウィリアムの何とも言えない、不器用さと真面目さ。

綺麗な顔で、弱気な事を言う可愛らしさ。


リオベルトもアリスも、守ってやりたくなったんだろうと思うのだ。この男が、国民から愛されているのが分かる気がしたアルバートだった。






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