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第三章                          4 交渉


交流会の翌日。


魔導具の技術提供の代わりとなるものを交渉する場が設けられた。


ウィリアムとリオベルトは、即日に決まる訳でも無く国の視察などをしながら考えるだろうと予想していた。


しかし、アルバートは直ぐに提案して来た。

帝国のポータル設置だ。


ポータルは、アリスにしか設置は出来ない。

ポータルの原理で、ウィリアムやリオベルト、一部の貴族が感覚で転移魔法を習得出来たが、アリスの代わりにポータルを開く事は出来なかった。


それだけ、次元や空間を同時に操るのは高度な魔法と言えた。


ポータルの設置となれば、アリスを長期間の間、帝国に行かせる事になる。



リオベルトが、アルバートにポータルの事を説明する。



「そう言う訳で、アリスで無ければ駄目なんだ。

一応、アリスは王妃だ。王妃の長期間の不在となると直ぐに答えは出せない」



「なるほど、ポータルとは、それ程までに高度な魔法と言う事なんだな。益々、興味があるな…

マルバラ帝国は、知っての通り国土が広い。移動も大変なんだ。ポータルが出来れば格段に貧しい小さな村や町が潤う事になる。

広い分、貧困層達の支援が行き届かないどころか発展させられないんだ。各地の領主達にも頑張って貰ってるんだが、中々進まないのが現状だ。


帝国の都市部だけが、発展してる状態で国全体で見たら現状は散々なものなんだ。


リオベルトなら分かるだろ?」



アルバートの話しを聞き、ウィリアムは考えた。



「王の立場からしたら早く改善したい所だね…

僕には、もう一人随分と前から自分の宮殿に引っ込んでいて表に出て来ない仮の妻が居るんだ。アリスの不在の間、彼女にアリスの仕事を頼んでも良いかも知れないね。


後は、アリス次第かな?」



ウィリアムの意見に、リオベルトは口を挟んだ。



「良いのか?帝国は広い。ポータルを各地になんて言ったら長いと年単位で掛るぞ?地方は路も整備されてない場所もある。移動だけで日数が掛る。

そんなにアリスを長い間、帝国に行かせて本当に良いんだな?


アイツは、きっと行くよ。

他国でも、困ってる民が居るなら助けたいと思うだろうな。そう言う奴だ。

それに本当は外の世界を見たいと思ってる」



「分かってるよ。アリスは、籠の中の鳥だった事が長いだろ?今だってそうだ。広い世界に出してあげたいんだ」



リオベルトも、その思いはあった。



「アルバート。治安が悪い場所も多いんだ。アリスの安全を保証出来るよな?」



「勿論だよ。護衛も付けるし俺も共に行動する」



アリスを呼び出し話せば、自分の役割を考え大丈夫なのかと心配した。しかし、リオベルトとウィリアムに本心はと聞かれ素直な気持ちを話した。



「私は、帝国へ行ってみたいわ。

この目で、この国以外の世界を見てみたい」


二人は、微笑み頷くと、アルバートは喜んだ。



魔導具の技術提供は、魔導具研究員達を数人派遣し専門職の者に伝授し、国で研究所を設立したらどうだとアルバートから助言を受けたウィリアムは、帝国では、どうしてるのかと参考に聞いた。


今、帝国で流通している魔導具を研究員と共に持ち込み、この国に合った物に改良しても良いのではと言う話になった。



そして、アルバートはもう一つの願いを口にした。



「これは、あくまでも希望であって断ってくれても構わない。


出来れば、いつか光属性の女児が生まれたら帝国に嫁いではくれないだろうか?」



「政略結婚か…。我が国では政略結婚は廃止にしたんだよ。いつか、このまま両国が友好国なら行き来も増えるだろう。その時に王家の娘が帝国の誰かと恋に落ちたなら、その時は止めないと約束するよ」



「そっか。確かに政略結婚は良くない風習だ。

この国は、魔法で豊かさを築いた国なのは分かるが、魔法は他国にとっても欲しい能力だ。サンブリア大陸には武力国家もある。欲の塊だった父の様に狙う者は他にも居るだろうからね。


魔力量が減るかも知れないが、魔導具でカバー出来る。少しづつ魔力を持つ者を他国に流失した方が、狙われる確率は減るんじゃ無いか?

帝国も含め、魔力があっても少ない者が多い他国は魔法の力なしで発展して来た。その分、機械的な武力を持つ。魔法で対抗する生身の人間の方が致命傷になると思うけどね。

戦いが多い国からの助言だと思って聞いて欲しい」



アルバートの言っている事は、御尤もだった。

科学技術が発展している大陸の戦いは武器の性能が戦況に影響していた。


魔物との戦闘しかしてきて居ないオベリオ王国とは根本的に戦い方が違うのだ。



「忠臣を有難う。平和ボケしてる国だと思うだろうね。確かにそうだ。


長い年月の間で、政略結婚により遺伝的な独占を貴族がして来た結果、平民達の魔力量が下がって来ている。貴族だけが魔法を有している事態になりかねない現状だ。いつまでも魔法に頼っててはいけないと思っている所だよ」



ウィリアムは、そう言うと困った様に微笑んだ。



「いや、俺も言い過ぎたかも知れない。

他国に来て俺の理想や考えを押し付けるつもりは無かったんだ。許してくれ。俺って思った事は言ってしまうタイプなんだ。馬鹿正直に済まない」



「気にしないでくれ。本当の事だ。

そうやって、他国からの視点での意見を聞けるのは学びになるよ。有難う」




会談は終わり、アルバートは街を見て歩きたいと言った。ウィリアムは、支度が終わったら宮殿で待機しててくれと言った。リオベルトに案内をさせると。


この国で、リオベルト以上の護衛は居ないと言って。



アルバートが部屋を出て行くと、ウィリアムは話し始めた。



「リオベルト。少しアリスと話すよ。

君も着替えてアルバート王を案内してくれ」



リオベルトは、何かを察した様にすんなりと部屋を出て行った。



アリスを座らせ、自分もソファーに座るとウィリアムは真面目な顔で話した。



「アリス。君もアルバートを気に入ってるだろ?

これから帝国で少なくとも1年間は彼と過ごす事になれば、その関係も親密になるに違いないと僕は思うんだ。交流会で、アルバートと共に居る君の笑顔を見てそう思った。


僕が、リオベルトと親密になってからは、君は僕達に一歩下がった距離間にしてくれてたのも分かってるよ。君は察しが良いし、それに優しい。


預言書の事で、国の事情によって僕達は結ばれ、君は僕の弱さをカバーしてくれた。愛してくれて嬉しかったし君に依存する僕を受け入れてくれた事に感謝してるんだ。僕達の愛は歪で、国の為の犠牲に成り立った関係かもしれない。


今も君を愛してるし大切な家族だ。

けれど、今の関係は家族愛だけなのかも知れない。

愛する家族として、君の本当の何にも縛られてない幸せを求めて欲しいと思ってるんだ」



アリスは驚いた顔を見せた。



「ウィル。確かに私達の関係は歪かも知れないわね。誰かに愛されるのは嬉しいものよ。

私は、誰かに執着の様な愛を向ける事を知らないのかも知れない。本気で誰かを求めた事が無いから、与えられた相手を愛し愛される関係に甘んじてたのかな?


それは、それで幸せだったわよ?


確かに、アルバート王と話してると楽しいわ。

私の知らない世界を沢山知っているから、話してて飽きないし。けど、まだ時間をそれ程共にしてないもの。それが本気で求める様な愛になるかも分からないわ」



ウィリアムは、微笑んで言葉を紡いだ。



「人を好きになるのに時間なんて関係無いだろ?

僕も確かに、君に夢中になったんだ。時間なんて直ぐだった。君の魅力に魅了されたんだ。

アルバートが君に惹かれるのも分かるんだ。君は素敵だから…


そんな素敵な君より、強烈に惹かれてしまったのがリオベルトだ。大嫌いだった男に…


人の気持ちは複雑極まりない。だからこそ、アルバートに惹かれたなら僕やリオベルトの事なんて何も考えなくて良いんだ。

アーサーの事も、子供はいつか巣立つ。彼は彼で愛する者を見付け親から離れていく。

君は君の本当の幸せを見付けて欲しいんだ。僕達は魔力の御蔭で、まだ若いんだ。幾らでも初めからやり直せる」



アリスは少し困った様な笑顔を見せた。



「分かったわ。

何も無くて帰って来ても、ちゃんと迎えてよ?」



ウィリアムは笑いながら「勿論だよ」と言った。




その頃、リオベルトはアルバートを街に連れ出していた。表通りを見て回り、そして裏通りも見せた。


何処の国も闇はある。リオベルトは、帝国に居る頃にアルバートには色々話していた。だから隠さなかった。そして、奈落の底へ招待した。


ジグルドと再会し意気投合する様に、アルバートは奈落の底に長居する事になる。




「ジグルドの話に良く出てきた女性が君だね?会えて嬉しいよ」 



「え〜?私の噂話してたの〜?

やっぱり、私の事が好きなんじゃな〜いっ。そろそろ認めたら?」



ジグルドは、不貞腐れる様にミリティアを見ると言った。



「認めるも認めないも、オマエの事なんて好きな訳あるかっ。まったく皆にチヤモヤされて自惚れてるんだから哀れな女だなっ!」



「ひどぉ〜いっ。勝手にチヤホヤされちゃうんだもん、仕方無くなぁ〜い?」



そんな二人を、アルバートば笑いながら見ていた。

なんだかんだとお似合いの二人に見えたのだ。



アルバートは、皇帝の息子としては妾の子であり城でも虐げられてきた過去を持つ男だ。

王族や貴族の様な雰囲気はあまりない、皇帝を殺めようと鍛えられた肉体もあり騎士団員の様な感じだろうか。


皇帝が執着した女の面影があるのか、綺麗な顔をしては居るが男らしさがある男だった。


酒場に居ても浮く様な事は無いが、雰囲気があり人の目を惹く。誠実そうに見えて影があり不思議な魅力がある。


リオベルトは、アルバートがジグルド達と談笑している姿を眺めながら、アリスはこの男に惹かれて行くのかと思っていた。


ウィリアムも、そう思うからこそアリスと二人で話したいと言ったのだろうと思った。


1年間、共に過ごし戦いに明け暮れた日々を思い出し、コイツならアリスを預けても大丈夫だろうと親心みたいなものがリオベルトに流れた。


城に帰る帰り道、リオベルトはアルバートに言った。



「なぁ〜、アリスに惚れたんだろ?」


「まぁ〜ね」


「アイツはさ、俺達の大事な女なんだ。

誰よりも幸せになって欲しいと思ってる。家族愛の様な愛は与えられても、きっと女としての幸せは与えられなかった俺達の代わりに、アイツがオマエを選んだなら幸せにしてやってくれるか?」


「選んでくれるなら、死ぬまで大事にするよ」


「そっか…オマエは強いからな。

本当の意味でアリスを守ってやれるだろうよ。

俺はさ、アイツを泣かせる事しか出来なかった気がするんだ。馬鹿な男の弱さで逃げてさ…


オマエなら真っ直ぐにアリスを愛するんだろうな。

それに、この国よりオマエが作る帝国の方が立場があっても自由そうだからな」

 


「なんだよ。今日は真面目じゃん。

俺は、リオベルトはカッコいいと思うよ。

不器用に国の為に愛する人達の為に闇で生きてたリオベルトがスゲェ〜カッコいいと思う。

誰にも素直じゃなかった男が、死にそうになって本当に大切な者が分かった…馬鹿かも知れないけどさ。

死を目前にしなきゃ気付かない事があるのは俺も分かるよ。


だから、俺も毎日さ全力で生きたい。

だから、惚れちゃったからにはリオベルト達から奪うとしても気持ちは止める気は無いよ」



リオベルトは笑って言った。



「オマエは、ほんと馬鹿正直だよな。

まぁ〜奪っても良いが、アリスを不幸にするなら父親と同じ運命を辿ると思えよ」



アルバートも笑って言った。



「大丈夫だよ。俺はリオベルトみたいに逃げないからさ」



「言いやがる」



笑い合いながら城へと帰る。



アルバートを送り届け、執務室によるとウィリアムとアリスが、まだ話してた様だ。


ドアを開ける前から談笑する声が聞こえてきた。



ドアを開ければ「おかえり」と出迎えてくれる。



「もう、こんな時間なのね。

ウィルと久しぶりに良く話せた気がするわ」



「随分と、楽しそうだったな?」



リオベルトがアリスに問えば、アリスはクスクス笑った。



「君の話しで盛り上がったんだ」とウィリアムも笑う。



「二人で、俺の悪口か?」



呆れた顔をするリオベルトにアリスは言った。



「私がね、リオがお兄ちゃんなら、ウィルが弟って言ってたのよ。そしたら、ウィルが酷くないかって。


ウィルからしたら、私が末っ子だろ?て。

そしたらね、二人であーだこーだ言い合ってたら、リオが一番捻くれてて素直じゃないから、末っ子かもねって」



そう言いながら、アリスはまた笑った。



「まったく、くだらない話だな。

俺にしてみりゃ、オマエ達どっちも弟に妹だよ!」



三人は、久しぶりに笑い合いながら話した。

幼い頃の話から最近の事まで。過去を振り返る様に。








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