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第二章                          3 子供達の関係は複雑で


アンジェリカとトムの子供。ソフィア6歳。


リオベルトとマリの子供。ルナ6歳。


ウィリアムとアリスの子供。アーサー5歳。


レオンとキャロラインの子供。レイ5歳。



四人の子供は、親戚の様な幼馴染の様な関係だ。



たまに、皆が集まり遊ばせて居るのだが子供の世界も複雑の様だ。



アーサーは、レイがアリスに似ている事から、初め女の子だと思っていたらしく、男だと知ってショックを受けてから、何となくレイと距離を取っている。


もしかしたら、初恋だったのかと思うとショックを受けたのは可哀想な気もした。



そんな事もあり、アーサーは皆が集まるとルナと良く話していた。


ルナは、マリに似て控えめな所がある。

活発な訳でも無く、人見知りな性格で慣れるまで時間がかかる。けれど、アーサーが良く喋る子だからかルナは徐々に口数は少ないが、アーサーと打ち解けた様子だった。


アーサーはルナに合わせて、絵を描いたり本を読んだりとルナの隣に座り静かに過ごす事を覚えた。



レイは、中性的な顔に似合わず活発だ。

エルロンドが溺愛してる様で、我儘さが目立つ。


しかし、ソフィアの方が強い。

ソフィアは父親似なのか母親に似ず、言いたい事はハッキリ言うタイプだった。


レイが我儘を言えば、ピシャリと説教をする大人びた子供だった。流石は王族と言った貫禄さえあった。



そんな子供達を眺めながら、大人達は御茶を飲んでいた。



「レオン兄様。パパに言っといて下さる?

あまりレイを甘やかしてると、レイの代でミシェーレ家は終わるわよって」



「私が言った所で聞く耳を持たないだろ?

アリスが直接、言うんだな。キャロラインが身体が弱ってから、父上が殆ど面倒を見てるだろ?父上の傲慢さが移ってるんだろうな。参ったよ」



「そんなに体調が優れないの?もし必要ならレイを預かっても良いのよ」



産後の経過が芳しく無かったのか、キャロラインは日に日に弱っているそうだ。キャロラインは、王族の割には魔力量が少なかった。それなのに、レイの魔力量はレオンより優れていた。レイを身籠った事により身体に相当な負担を掛けたのかも知れない。


神聖力は万能では無い。癒しの力も定められた寿命を延ばす事は無理なのだ。ウィリアムが神聖力を使ったが癒せなかったのだから寿命なのかも知れない。



「キャロラインは、元から身体が強い方では無かったからね。神聖力も効かないとなると先は短いかも知れない。まだ、レイは幼い。母の温もりが恋しくなる年頃だろうに」



ウィリアムは、自分の妹の子を心配気に見つめていた。



「レオン兄様は、元々は政略結婚で仕方無く結婚した訳でしょ?」



「なんだよ?急に」



「真面目に答えてよ。私は心配してるのよ。

レオン兄様は、嫡男として色々な事を我慢してたのかなって?」



レオンは、罰が悪そうな顔をして話始めた。



「アリスに心配される日が来るとはな。

貴族ってそんなもんだと思ってたさ。俺達も幼い頃に母親が死んだだろ?ミシェーレ家の嫁は短命なのかもな…だからって、キャロラインを全く愛してなかったとは言わない。それなりに情はあるさ。


愛とか良く分からないのかもな…愛された事も無いしな。キャロラインも幼い頃から婚約者だと思ってただけで本当に愛してた訳じゃないんだ。

結婚して、なんとなく分かるよ。アイツも寂しい奴なんだなってな」



レオンの話にウィリアムは同調した。



「確かにキャロラインは、王の子として生まれたが女の子だったからね、僕の影になってしまった。父も母も政略結婚だ。愛など無かったし、期待もされていない中で育った可哀想な子だよ…」



アリスは、呆れた顔で話に入った。



「今まで、こんな家族関係を改善しようと思う王は居なかったのかしらね?愛って家族から始まるじゃない?甘やかし過ぎも問題だけど、放ったらかしは論外ね。本当にレオン兄様が心配だわ。


愛も知らないなんて。そんな親に育てられるレイが可哀想」



「そうかもな…。だからと言って、どうも出来ないだろ?」



「レイを数年間、家で預かっても良いかしら?

パパに預けるより数倍は良いと思うんだけど」



アリスの提案にレオンは考えた。そして困った顔で言った。



「私は良いが、父上がな…」



「大丈夫よ。私がパパに言ってあげるから」



こうして、アリスはレイを家に連れ帰る事にした。

エルロンドには、レオンに伝言を頼んだ。


話はレイの着替えなど持って来てくれたら話すと。



レイを連れて家に帰ると、使用人達にレイ用に部屋を整える様に指示を出し、レイをマリに紹介した。


マリは快く迎い入れてくれた。


帰って来たリオベルトは呆れて居たが、仕方無いと言った感じで受け入れてくれた。



エルロンドがレイの荷物を大量に持って来て、アリスにレイの世話の仕方を指摘されると、落ち込んで帰って行った。帰り際にリオベルトがエルロンドにフォローを入れていた様だが、アリスは知らんぷりだった。



ルナと過ごす時間は、レイにとっては退屈そうだった。

 


「レイ、紳士は傲慢では駄目なのよ?

レディーには優しく、下の者にも敬意を示してこそ出来る男なの。分かる?」


「その方が格好良い訳?」


「そうよ。確実にモテるし尊敬されるわね」 


「どうすればモテる?」


「先ずはそうねぇ…命令口調を辞めなさい」



アリスは、レイに言い聞かせる様に話した。


まだまだ子供だ。モテるとか尊敬されるとか言えば素直に言う事を聞いてくれるからチョロい。



リオベルトは、微笑ましげにそれを見ていた。

そして、話に加わる。



「まぁ〜、モテたいなら、時には強引さも必要だ」



面白がる様に、レイにモテテクを伝授するリオベルトにアリスは呆れた。


アーサーは王家の人間だからか、リオベルトは少しだけ距離を置くが、レイには気軽に接してる様に見えた。


自分の子供は女の子だから、男の子の方が接しやすいのかも知れない。



レイも、リオベルトが好きな様で、リオベルトの言う事は素直に良く聞いた。そして、レイはダグラス家で我儘で傲慢な性格を矯正されたのだった。



数ヶ月もすれば、レイとルナは仲良くなっていた。

レイの誘いで、ルナも少し動く様になった。


外に出て走ったり、木の剣で稽古と称したチャンバラをしたり大声で笑う事も増えたのだ。


レイを家に連れてきたのは、ルナにとっても良かったのかも知れないとアリスは思っていた。



1年後には、レイをミシェーレ家に帰した。

その後、レオンとエルロンドは、事ある事にレイから「それじゃ女にモテませんよ」と言われる様になったと苦情が入る事になる。



そして、問題はそれだけでは無かった。


アーサーが、ルナとレイが仲良くなった事が気に入らない様で、益々と言って良い程に、レイをライバル視する様になった。


レイは我関せずな態度だから余計に、アーサーも腹が立つ様だった。




「アーサーは、今日も不機嫌だったね」



ウィリアムが困った顔でアリスに聞いてくる。



「そうなのよねぇ〜。レイにライバル視してるみたいなの。仲良くして欲しいんだけどね。アーサーは、ルナが好きなのかしら?」



「そうかもしれないね。

それとも、レイに負けたくないって言う男のプライドかな?


なんか分かる気もするよ。僕もリオベルトに少なからず憧れと敵対心みたいなものがあった気がするよ。まぁ〜、今だにあるかもだけどね。」



アリスは、クスクス笑ってしまう。

子供も子供で、色んな感情で複雑なのかと思うと、大人になっても感情に振り回されるのは同じだと思うのだ。



「ウィルに似てるからね。それにウィルに憧れてもいる。アーサーも、大きくなって全てを受け入れて認めてくれる相手に出会えたら良いわね」



「そうだね。僕がアリスに出逢った様にね。

そろそろ、同い年の子供達との交流会でもしようか?外にも沢山の人が居るのを学ぶ頃だろ。色んな子供がいて少しは刺激になるんじゃないかな」



ウィリアムの提案で、王家主催の子供達の御茶会を開く事になった。大人の介入は無しだ。


メイドや護衛は付けるが基本的には子供達だけの交流会と言う事になった。



何かあっては困るので、リオベルトが姿を消して見守ると言う形にしたのだった。



御茶会当日はアーサー達と歳の違い子供達は、二十数人集まった。アーサーは、初めて会う沢山の子に圧倒された。



場を纏めたのは、ソフィアだった。

王族らしく皆に向かって挨拶すると、交流会だから楽に過ごして良いと、堅苦しい作法を気にするなと始めに場を和らげた。


まだ幼いながらにシッカリしていたとリオベルトが教えてくれた。



アーサーは、自分も王族なのにと少し自信を無くした。けれど、他の者の前でウジウジはしていられない。父を見習い、笑顔を作ると自分から色んな子に話し掛けたりした。


幼いながらに王子様スマイルで、女の子達の頬を赤く染める様は、流石だとリオベルトが感心していたのは笑えた。



レイも負けではなかった様だ。

リオベルト直伝のモテテクを駆使して甘い笑顔で女の子をエスコートしていたらしい。


ルナはと言うと、人見知りを発揮してしまい一人で居ることが多かった様だ。リオベルト似のクールな見た目は喋らないと近寄り難いイメージになってしまうのだ。アーサーやレイが気を遣い、話し掛けたりしたが女の子が二人を取り囲んでしまうから、結局は一人になってしまう形となったらしい。


見かねたソフィアが、自分の輪の中に入れた様だが、友達を作る事は出来なかったようだ。



初めての交流会は、無事に終わった。

アーサーは、疲れきってしまったのか早々に眠りについてしまった。



「疲れたんじゃないか?ウィリアムと似てるからな。

気を遣いすぎたんだろ?最後の方は笑顔が引き攣ってたぞ。父親が、愛想振りまくのが得意だと子供が辛いな」



リオベルトに嫌味の様な言い方をされたウィリアムは溜息を吐いてから反論する。



「得意な訳じゃない。僕は、その方が楽だったんだよ。当たり障りが無いだろう?どんな話をされても笑顔で誤魔化せるしね。王族は時には誰にも肩入れ出来ない時もあるんだ。仕方無いだろ」



「今まではそうだったかもな。

王家は媚を売り過ぎだ。だから馬鹿な貴族が身の程知らずになってくんだよ。顔に出してピリ付かせた方が良いと俺は思うぞ」



「僕は癖だからね。だからってアーサーに強要したつもりは無い」



言い合う二人をアリスは一喝した。



「もうっいい加減にしなさいよ!アーサーが起きちゃうでしょ!」



黙った二人の手を掴むと、アリスは二人を引っ張って部屋の外に出た。



「直ぐそうやって喧嘩になるのね。揚げ足取りは辞めなさいよ。アーサーはウィルが好きで憧れてるのよ。

だから、父親を真似したいのよ。だけど、アーサーはウィルじゃない。そのうち、自分の在り方を自分で見付けるわ


だから、二人の考え方の違いで喧嘩するのは無しよっ。アーサーはアーサーなの。

二人とも、また違う考えを持っていくわ。今からブーブー言わないの」



「悪かった」


「ごめん」



反省した二人を連れて王太子宮にあるアリスの部屋に入った。


アリスは、ワゴンに置いてあるグラスをテーブルに置くとワインボトルを開けた。



「少し飲みましょ」と、グラスにワインを注ぐとリオベルトが「俺はいい」と言った。



アリスが視線をリオベルトに向ける。



「別に気を遣った訳じゃない。コレから仕事なんだよ。陛下の頼みでね」



「内容は言えない感じ?」



「まぁ〜な。悪いけど二人で楽しんで」



リオベルトは、さっさと部屋を出て行ってしまった。

残された二人は、ワインを飲みながらリオベルトの事を話した。



「リオは秘密が多いのは相変わらずね」


「ごめんね。父のせいだ」


「ウィルが謝る事じゃ無いでしょ?まだまだ綺麗事じゃ片付けられない事があるって事よね…」


「皆んなで協力するって話は、リオベルトには通用しないって事かな」


「一人で背負いたがるのよね…」



リオベルトは、本心を語る事は出来ても、今でも汚い仕事は隠している。手伝うと言っても手伝わしてはくれない。ウィリアムが一緒に背負うと言っても頑なに共有する事は無かった。



「リオの気持ちも分かるけど、私達の気持ちも汲んでくれたら良いのにね。


そう言う意味では、距離を感じるのよ。同じものを背負わせてくれないのは他人行儀な気がして」



「難しいね…、僕がリオベルトなら、やっぱりアリスには背負わせたくないと思うしね。

それと同時に、僕は弱いから君を結局は巻き込んでしまう気もするんだ」



「その方が嬉しいわ。リオは本当の意味で弱味を見せないから」




その夜は、アリスはウィリアムと酒をつまみに語り明かし、そのまま泊まってしまうのだった。





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