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第二章                          2 少しつづ変わり始めた国の在り方


この5年の間に、変わったのは城の中かも知れない。

神の子誕生で、先ずは国王陛下がアリスの話を聞いて考えを改めたのだ。


世の中を変えるより先に、城の中から変えて行こうと話が纏まってからは、王家と二大公爵、それと国王派の陛下が信頼を寄せている侯爵や伯爵など数名を交えて、アリスから古代の叡智を共有する事となった。


その知識は、細部に渡って居たために陛下を軸に、何処から手を付けるかと会議が数日続く程だった。


そして、色々な事が大まかに決まると人員集めや役割分担などを決めるのにも尽力する事となった。



アリスは叡智を教えるだけだ。実際に動くのは王家と貴族達だ。王家に協力的で無い貴族の洗い出しも並行して始まっていった。


リオベルトの仕事量も増え、屋敷に戻らない日々が続いた事もあった。それもあって、いけ好かない貴族達が一新されたのだった。


家督を誰に継がせるかは自由だが、能力が見合わない世襲の場合は速やかに、与えられた業務を国へ返上する様にと国王自らが貴族達に通達したのだ。


政略的婚姻も、子供の意見を尊重し望まぬ婚姻で子を苦しめてはいけないとも付け加えられた。


何処まで効力があるか分からないが、突然の国王からの通達だ。貴族達も慎重にならざるおえないだろう。


それもあってか、婚約の手続きの撤回申請が増えたと言う。



少しつづ、貴族達もクリーンさが求められて行った。


そして、貧民救済は自立がテーマだった。

お金が無いから何も得られないのは分かりきっていた。お金を恵めば良いと言う話では無い。


お金を得る手段を教え込む必要があった。

先ずは、文字の読み書きだ。それに働き口の多様性。

どんな職業があり、どんなスキルが居るのか、それさえも貧民は知らないのだ。


無知故の貧しさである事も一つの原因なのだ。

こうした者が、金の為に悪い連中が汚れ要員として犯罪を起こさせるのだ。


指示するだけで、自分の手を汚さない奴等が一番悪いのに、捕まり処刑されるのは下っ端なのだ。


少しでも減らせる様に、平民向けの学び舎を各地に建て無料で読み書きを教える事にしたのだ。


今までの、世の中の経済は貴族と上位の平民で回してるだけで、国全体に回っていたとは言い難いからだ。


その改善が底上げに繋がる様にと進められた。



ウィリアムも精力的に各地へ赴き活動した。

国民に人気の王太子が出向いてくれるのだ、国の政策は貧民にも行き渡り家も持たぬ者も、学びに来るようになった様だ。


そこで問題になったのが、風呂にも入れぬ者達の汚さだった。その為に、無料で風呂を提供出来る施設や、ボランティアで古着を集め提供するなどの処置が取られる事になる。


幸いにも、お布施と言う名目で教会に寄付をする形で、教会の風呂を開放する事が出来たのは幸いだった。


全てが良くなったとは言い難いが、5年の月日で少しはマシになったと言えた。




執務室に居たウィリアムに声を掛けると、ウィリアムは仕事を切り上げ、二人で王太子宮へと向かう。



「アーサーは、リオベルトと一緒かな?」



「そうよ。二人で仲良く剣の稽古をする様よ」



「そっか。リオベルトが気を利かせてくれた様だね」



王太子宮殿に着くと、二人はウィリアムの部屋へと入った。メイドが御茶を運んで来て退出していく。


ホッと一息付いたアリスに、ウィリアムはミリティアの事を聞いた。



「自分で見に行ってみたら?気になるんでしょ?

心配しなくても、彼女は幸せそうよ?底辺を知らないから分からないだろ?って彼女に言われちゃったの。


何もしない贅沢って言ってたの。彼女は、城に来るまで苦労したのね…たまに外に出れるなら今のままで充分のようよ。訪ねて来た使用人と楽しそうに笑ってたわ」



「そっか…僕は彼女の事を本当は何も知らないんだろうね」



「そんなの、私も同じよ。考えさせられたもの…

リオにね、私とウィルは同じだって言われたの、考え過ぎだって。知らない事を責めるより、出来ることをすれば良いのかもね。


だって、私達は貧民の家に生まれた人の本当の苦労や苦悩は分からないんだもの。リオは、見てきたからなのかな?あんまり動じないし、同情もしない。

それが、傲慢な考えだと分かってたみたい。もしかしたら誰かに言われたのかもね…」



「確かに、僕達は恵まれ過ぎているからね。

リオベルトが、なんだかんだと一番大人だって事か」



苦笑いするウィリアムに、アリスも苦笑いを浮かべた。恵まれてる者が言っても全ては綺麗事なのだ。


仕事柄、リオベルトは底辺を生きる者と対峙する事は少なくないだろう。吐き捨てる様に汚い言葉で罵られる事もあるに違いない。底辺に居る者からしたら私達は恵まれているだけで悪人なのかも知れない



久しぶりの二人の時間だった。

アーサーが成長すると共に、二人だけの時間は少なくなった。だからこそ、リオベルトが気を利かせ、アーサーを連れ出したのかもしれない。



「リオには感謝しないとね」  


「そうだね」



ウィリアムはアリスを抱き寄せるとキスを落とした。



「キスだけじゃ収まらなそうだ」



そう呟くと、またキスを落とす。

そのまま、ソファーの上にアリスを押し倒していく。

二人はそのまま、快楽へと身を委ねるのだった。




ベットに横たわりながら、横に寝そべるアリスの髪を撫でながらウィリアムは疑問を口にする。



「リオベルトは、どんな気持ちなのかな?」



「リオ?そうね、ウィルとは考え方が違えから…

リオは、肉体関係と愛情を切り離してるのよ。だからこそ、リオは誰とでも寝るわ。最初から言われてたの。愛ある夫婦が良いなら、全てを受け入れろってね」



「どういう事?」



「リオとの結婚は、最初は酷いものだったのよ?

それはそれは、夫婦とは呼べないくらいにね。結婚式の後の初夜さえ無しよ?


数ヶ月した頃に、ウザい私を払い除けようとして私を突き飛ばした時に頭を打った衝撃で、私は前世の記憶が蘇って、本当に離婚を考えてたのよ」



初めて聞くアリスの話に、ウィリアムは驚いた。

リオベルトとアリスは最初から互いを想い合ってるとばかり思っていたからだ。



「驚いた?リオって捻くれてるからね。

リオはね、心の繋がりを求めてるんだと思うの。だからね、最初の私達が肉体関係無しに仲良くなるのに嫉妬してたのよ?なんで欲望に任せて寝ないんだって思ってたみたい。可怪しいでしょ?」



アリスは、クスクスと笑う。



「アリスは、僕が他の人と寝たら嫉妬するかい?」



「嫉妬して欲しいって聞こえるけど?」



「そうだね。して欲しいな。

僕はリオベルトと違って君以外となんて考えられないよ」



「それが分かってるから、リオは気を利かせてくれるのよ、きっと。案外、リオはウィルも好きなのよ?素直じゃないから否定するだろうけど、リオって意外に思うかもだけど、愛が深いのよ?」



ウィリアムは「知ってる」と言って、アリスにキスを落とした。そして、アリスから離れて仰向けに寝転ぶと少しだけ悔しそうに言った。



「ほんと、男としてリオベルトには敵わない。

僕は心が狭いなと思い知らされるからね。きっと、リオベルトの方が王に向いてるよ」



「それは、リオが望まないわ。

それにリオなら、こう言うは。国民から愛されるウィルの方が王であるべきだってね」



「良く俺の言いたい事が分かったな」



急に、リオベルトの声が聞こえてアリスもウィリアムも驚いた。



「ちょっとっ!いきなり驚かさないでよっ。心臓が止まるかと思ったわ」



アリスが怒ると、リオベルトは笑いながら「悪い悪い」と軽く謝る。そんなリオベルトにウィリアムは呆れた様に言った。



「人の寝室に勝手に入るし盗み聞きするし、君は最低だな。デリカシーがない」



「覗きは得意だからな。お楽しみの所、悪いがアーサーがアリスが居ないから御機嫌斜めだ。俺との遊びも飽きたらしい」



困った顔を向けるリオベルトにウィリアムは何も言えなくなった。アーサーの為だから仕方無いと思うのだった。



アリスは慌ててシャワーを浴びると、アーサーの元へと急いだ。愛情を注いだ結果、アーサーは甘えん坊だ。そんな所はウィリアムに似てるのだろう。



「カカ様。カカ様は直ぐに何処かに行っちゃうんだから、僕と一緒は疲れちゃうの?」



「そんな事ないわ。アーサーが大好きだもの。

ただ、少し他にも御仕事があるの。大人になるとアーサーだって、遊んでばかりは居られなくなるのよ?分かるでしょ?」



「うん。父上みたいになるんだもんね?僕も、父上みたいに格好良くなれる?」



「父上より格好良くなれるわ」



「それは困るな。アーサーが私より格好良くなったらアリスを取られてしまう」



後ろからウィリアムの声がすると、アーサーは満面の笑みでウィリアムに駆け寄る。ウィリアムがアーサーを抱き上げると嬉しそうに抱きつくアーサー。


アーサーは、ウィリアムが大好きだった。

忙しくて、ずっと傍には居られないが、暇さえ見付けてはアーサーの元へとやってくるウィリアムと触れ合えるのは、アーサーにとって嬉しい事なのだ。


新年の度に、陛下と共に民への挨拶をする光景を見て来たアーサーにとって、陛下よりも歓声が上がるウィリアムの人気ぶりが、格好良く見えるのだろう。


メイド長が、ウィリアムが幼き頃の話をするとアーサーはウィリアムと同じ事をしたいと直ぐに言い出す位だった。



「父上。今日はリオ叔父さんと剣の稽古をしたんだ。父上が昔に使ってた木の剣を使ったんだ。今度、父上とも一緒にやりたいな」



「アレを使ったのか?新しいのを造ってやらなきゃな」



「僕は、アレが良いのっ。父上のが良いっ」



ウィリアムは嬉しそうに笑うと、アーサーの頭を撫でた。二人の笑顔を見ていたアリスとリオベルトは二人揃って口から言葉が出た。



「「本当にソックリ」」




日が落ちる頃に、アリスとリオベルトは城を後にした。



「少しは、ゆっくり出来たか?」



「覗き見してたんだから聞かなくても分かる癖に」



リオベルトは笑ってアリスを抱き寄せた。



「本当なら、親子三人で普通に暮らしてたらオマエも普通の幸せを過ごせたのにな」



「今でも私は幸せよ。欲張りにも私にはリオとの生活も幸せだもの。マリが居てルナが居る。こんなにも幸せで良いのかな?と思うくらいよ」



「それなら良い。俺も幸せだよ。こんな俺でも受け入れてくれる家族を作れたのはオマエの御蔭だ。有難う」



馬車の中で、熱いキスを交わす。

甘い声が外に漏れるが、御者は気にしない。いつもの事だからだ。気を利かせて速度を落としながらダグラス家へと走らせるのだった。



屋敷に着けば、マリとルナが出迎えてくれる。

アリスは、マリとルナを順番に抱き締め頬にキスをする。



「ルナ。今日は何してたの?」


「ママとドレスのデザイン画を描いたの。

御母様に似合うデザインにしたの。後で見てくれる?」


「私の為にデザインしてくれたの?嬉しいわ、ルナ」



アリスは、嬉しくてルナを抱き上げてキスをする。見た目はリオベルトだが、性格がマリに似ていて可愛いのだ。マリに似て、いつもアリスが喜ぶ事を考えてる所がいじらしい。


クールな見た目と裏腹な可愛らしさのギャップにやられるのだ。



ダグラス家でもルナには隠し事をしないで育てる事にしていた。マリの教育の御蔭で、ルナは母親がマリなのも理解しているし、マリがアリスを大切に思っている事も理解していて、ルナもアリスを大切にしなきゃみたいな感じに思っているのが伝わるから余計に可愛かった。


リオベルトは、マリにもルナにも優しさを見せた。 

この家に縛り付けてしまったマリに感謝もしてる様だった。アリスが別荘で生活している間に、家族の絆は深まった様だった。



アリスは、ルナを抱えながら二人に身体ごと振り返ると笑顔で言った。



「二人とも疲れたでしょ?私はルナと一緒に夕飯を済ませて寝かし付けるから、二人は休んで」



ルナに視線を移すと、アリスは楽しそうにルナと話しながら二階のルナの部屋へと消えていく。


残された二人は、そんなアリスを見送るとリオベルトが口を開いた。



「アリスは気を使ったらしい。俺達も夕飯を食べてゆっくりしよう。最近は、一人でルナの世話と仕事で疲れてるだろ?あまり無理するなよ?早く寝るか?それとも快楽の方がいいか」



そう言って、マリを見ればマリは女の顔を覗かせた。

リオベルトは、マリの腰に手を回すと部屋へと導く。


最初は、アリスの我儘から始まった。

けれど、リオベルトは家族としてマリを受け入れてから過ごす内に愛情が芽生えていた。


自分の子を産んでくれた女だ。情が移ったのだ。

アリスは、アーサーを出産すると預言書通りに性欲は落ち着いた様だった。前ほど欲望に溺れたりしない。


マリも人間だ。普通に性欲はあるものだ。

何度も肌を重ねれば、愛情は芽生える。アリスを求める様な愛では無いが、穏やかな愛おしさは感じていた。


健気で一生懸命なマリに好感を覚えるのは早かった。

勿論、アリスは理解している。それどころか喜んでいた。自分だけが、大切な人が増えていく中で、リオベルトにも大切に思える人を増やして欲しいと思っている様であった。



リオベルトは、マリに愛の言葉を囁きながら快楽へと導く。マリを抱いている時はアリスを忘れ、マリだけに愛を向ける。


沢山の女を抱いてきたリオベルトは、肉体関係だけで絆される事はけしてない。


けれど、アリスの他に愛する女になったマリ。

男は自分だけしか知らないマリが愛おしく思ってしまう。他の男に触らせたくも無いと思える位には、マリを愛しているリオベルトなのだった。





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