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第一章                          14 そして二人は結ばれて


良いムードを邪魔された二人は寝室に入る頃には気不味さが戻っていた。


監視も居る為に気不味さは倍増だ。

ウィリアムが気を利かせてワインを開けてくれたので、酒の力を借りる事にした。



そして、ベットに入るとウィリアムがアリスを覆い被さる様に見下ろした。



「ごめんね。ムードも何も無いね。僕が不甲斐無かったらリードしてくれるかい?」



アリスは、思わず笑ってしまった。

気を取り直してアリスはウィリアムを見つめた。



「ウィル。私達の他には誰も居ないわ。私だけ見て愛して」



ウィリアムは「アリス、愛してるよ」そう囁くとキスを落とした。徐々に熱く絡み合うキスの熱で二人は夢中になった。


見られているなんて気にもならなくなった。

二人には、もうお互いだけしか見えて居なかった。


初めてだと言っていたのに、初めてとは思えない程にウィリアムの愛撫はアリスを快楽へと導いて行った。



ウィリアムは、甘い吐息と共に溢れるアリスの声に興奮を抑えきれなかった。アリスの全てが愛おしくて、もっと淫らにしたくなった。初めての不安も消えて本能のままにアリスを夢中で味わっていく。


感度良く身体が反応するアリスに魅了されていくのが分かった。一度味わえば病み付きになるくらい甘美で、ウィリアムはアリスに溺れていく。


アリスは、挿入前から次々に与えられる快楽で意識が何度も飛びそうになるほどだった。堪らずウィリアムにせがむと嬉しそうに焦らすウィリアムは意地悪で、やっと挿入された頃には直ぐに絶頂を迎えてしまったアリスは何度もイカされ、いつの間にか意識が飛んでアリスの記憶はプツリと切れた。



ふと目を覚ますと隣に寝そべるウィリアムが微笑んで頭を撫でてくれる。



「どの位、意識が無かった?」

 


アリスが訪ねればウィリアムは優しくおデコにキスを落とし「1時間くらいだよ」と答えると、唇にキスを落とした。



「もう監視は終わったの?」



「いつの間にか居なくなってた様だ。

ずっと二人きりの世界だよ。アリス、愛してる。

妊娠しなきゃ、ずっと君を独占出来るのにな…」



「ウフフ。何だか甘えん坊になった気がするわね?」



「駄目かい?」



流石は小説の中の男主人公だ。国民に天使だと言われているだけあって、何処を切り取っても完璧で、甘え方も完璧だ。



「ウィルは素直ね。」


「素直じゃない誰かさんと比べたのかい?御仕置が必要かな?」



そう言うとウィリアムはアリスを快楽へと、またいざなった。



その日以来、ウィリアムはアリスにベッタリだった。

何をするにも、くっつき甘えて来る。ウィリアムを昔から知る使用人さえ驚いているくらいの変わりようだった。


きっと、城から離れ王太子と言う重圧から少し開放されたからなのだろうと、アリスは思っていた。



リオベルトとは正反対なウィリアム。


属性に性格が引っ張られるのだろうか?

けれど、己を責めている所なんかは一緒だった。




王家の別荘の敷地内は王都の敷地より広かった。


ウィリアムとアリスの事は極秘の為に、この時の為に選ばれた場所だけあって使用人も必要最低限で護衛も腕の立つもの数人。王家の別荘だから敷地を囲う壁に魔法結界が掛けられており安全なのだ。


王都の王城の敷地内も同じだ。



世継ぎを産む為と言う事もあって、使用人達は必要最低限の接触しかして来ない。だから広々とした別荘に二人だけの様な錯覚をしてしまう位に、二人だけの世界だった。


昼間から快楽を楽しむ事もあるが、二人で料理を作ったり乗馬をしたり、木登りしてみたり。時には鬼ゴッコやピクニック、剣術や魔法の扱い方をウィリアムに習ったり、刺繍をしたり。


二人で毎日、楽しい事を探して過ごした。



「本当の夫婦なら外の街へも遊びに行けたのにね」



「また言ってるの?出来ない事を考えないで、出来る事を考えようって言ったじゃない?」



「そうだけどさ…」



少し哀しげな表情を見せるウィリアムに、アリスはキスをする。



「ウィルは欲張りになったわね。

今まで我慢してた想いが溢れて来ちゃったのかしら?」



そう言って微笑むアリスが、どうしようも無く愛おしくて、ウィリアムは身体の疼きに逆らえなかった。


アリスが欲しくて、直ぐに手を出してしまう。

所構わず発情する動物の様に本能の赴くままアリスを抱いた。



アリスは、いつでも受け入れてくれるが、ウィリアムは不安でもあった。飽きられるんじゃないか?本当は嫌なんじゃないか?そんな事を考えてしまう。



アリスに夢中になって初めて自分はネガティブなんだと自覚したウィリアムは、この夢の様な時間が無くなった後を考えると、日常に戻ったら自分は堪えられるのかと不安しか無かった。


その不安を消し去る様に、アリスとの快楽に溺れた。




「最近、なんか浮かない顔する事が増えた気がするのは気のせい?」


「ごめん。そんな顔してた?」


「何かあるなら言ってね」



心配気に見つめてくるアリスを抱き寄せてウィリアムは女々しい自分の感情を吐露した。



「君との時間が幸せ過ぎて失う事ばかり考えてしまうんだ。君が居ない生活を考えては恐怖に支配され闇に囚われそうになる。君を手に入れる為に僕は…人としてしてはいけない事をしてしまいそうで、怖くなるんだ」



アリスは何も言えなかった。

自分達の歪な関係のせいでウィリアムが苦悩しているのだから。


何も言ってくれないアリスに、ウィリアムは嫌われたかと慌てて言い訳を口にした。



「ごめん。今のは忘れて。

どうかしてた。アリスだって困るよね。

ほんと、女々しすぎだ…」



アリスは苦笑いを浮かべて複雑な胸の内を言葉にした。



「謝らないで…。ウィリアムが悪い訳じゃ無いわ。

預言書が悪いのよ。いくら国の繁栄の為とはいえ、私達は被害者みたいなものじゃない。


ウィルもリオも犠牲者じゃない…


大人の都合で勝手に結婚相手を幼い頃から決められて、国の為だとか家の為だとか、心に嘘付いて…


誰も幸せになれないじゃない…」



言葉を吐き出しながらアリスの瞳から涙が零れ落ちる。何とも言えない感情が涙となって溢れ出て止まらなかった。



「ごめん。泣かせるつもりは無かったんだ。

アリス…泣かないでくれ。ごめん…」



ウィリアムは、アリスを抱き締めて泣き止むまで、ただ背中を擦っていた。


どうにもならない事で、悩んだ挙句にアリスを泣かせてしまった自分の不甲斐無さにウィリアムは、もっと強くならなくてはと思った。


綺麗事じゃ何も守れないと言っていたリオベルトの顔が浮かんでいた。きっと彼の方が自分なんかより覚悟が決まって居たんだと思うとウィリアムは自分が恥ずかしくなった。



全てにおいて、自分はリオベルトに劣って居るのだと認めざる負えないと思ったウィリアムは、潔くアリスをリオベルトに返そうと思うのだった。



泣き止んだアリスにウィリアムは言った。



「アリス。僕は君を愛してる。

だからこそ強くなるよ。皆が幸せになれる様な国にする。リオベルトやアリス、それにアンジェリカも、国の為に犠牲になる者が居なくなるよう僕なりに変えて行く。僕達の子が、神の子だからって産めば良いって訳じゃ無いだろう?


例え、この生活が終わりを迎えても、アリスがリオベルトの元へと帰ってしまっても…


僕は君の為に国を良くする。君との子供を立派な王に育てるよ」



「馬鹿ねっ。それじゃウィルは犠牲者のままじゃないっ!」



アリスはウィリアムに初めて怒った。

ビックリした顔を向けるウィリアムにアリスは言葉を続ける。



「もうっ!リオも馬鹿だけどウィルも馬鹿よ!

全部、一人で背負おうとしてっ。皆んなで協力すれば良いじゃないっ。

男だからとか女だからとか、どうでも良くない?

結局、馬鹿な貴族の為に平民も王家も動いてるじゃないっ。馬鹿みたいにくだらないパーティーやったり、経済を回すですって?そんなもんじゃ無くても回せるわよっ!馬鹿馬鹿しいっ!


なんか益々、腹が立ってきたわ」



プンプンと怒るアリスに、ウィリアムは可笑しくなって声を上げて笑ってしまった。


「なんで笑うのよっ」と不貞腐れるアリスに益々、可笑しくて腹を抱えて笑い出すウィリアム。


こんなに笑ったのは生まれて初めてで笑いながら涙が溢れ出して、笑いが止まる頃にはスッキリした気分だった。守りたいなんて傲慢だった。自分なんかより、アリスは大人だった。それを認めざる得な無くて初めてウィリアムは良い意味で肩の力が抜けた気がした。



逆にアリスはモヤモヤが晴れずにワインをガブ飲みするのだった。



「ウィル。私、決めたわ。

無事に出産したら、私は籠から出るわ。

女だから公爵夫人だからとか関係無いっ。せっかく魔力量が高いのに何もしないとか宝の持ち腐れじゃない?魔法って魔物討伐するだけなんて勿体ないじゃない。もっと他に利用価値があると思わない?


他の令嬢だってそうよ。女だから活かせる魔法の使い方があるはずよ。そうでしょ?」



「アリスは案外、勇ましいね。それで何か案はあるの?」



流石は王太子である。

勢いだけのアリスとは違った。



「もうっ。これから考えるのよ。

意気込みは大事でしょ?夢は大きくって言うじゃない」



クスクスと、ウィリアムは笑った。

慎重派なウィリアムには、アリスの考え方が新鮮で眩しく見えた。



「あの、人に興味が無さそうなリオベルトが唯一、アリスだけを大事にしてるのが分かるよ。アリスは希望の光みたいな存在なんだろうね。


選ばれし巫女は、ただの器じゃないのかもね。

きっと僕やリオベルトの希望の光なんだ…」



「買い被りすぎだわ」





その夜、アリスは鮮明な夢を見た。


光り輝く空間。けれど眩しくは無くて、鮮やかな色彩はこの世のものでは無かった。


全体的に、薄いクリーム色の様な薄い淡いピンク色の様な色彩自体が発光している。そんな、何処までも続く空間にアリスは漂っている様な感覚だった。


気分はとても満たされていて心地良くて何とも言い表せない感覚が包んでいた。



『巫女よ…。我の大切な子よ。


長い年月が我の意志から随分と遠くに離れてしまった。ずっと傍に、傍らに居るのに繋がれぬ…。


愛しき子よ。我と繋がり皆に光を照らしなさい。

新たな命を正しく導きなさい。


その力を正しく使いなさい。


愛しき我が子たち。世界は如何様にも変えられる。

その愛の想いの力で幸せになりなさい』



何処からとも無く優しい声がする。

その声に答えたいのに声が出ない。


(どうすれば…)



『愛しき子よ。人の世の事は人が選び創るのです。

そなたの愛おしい者達が健やかに過ごせる為に出来る事をしなさい。新たな命が健やかに過ごせる為に動きなさい。それが皆の為にもなって行くのですよ。

愛おしい子よ。そなたが創りたい世界とは誰かの犠牲が存在しない世界であろう?』



(そうよ。でも、そんな世界に出来るの?)



『巫女よ。出来ないと思えば出来はしない。

その為の神の子だ。歪んでしまった力を強制的に元に戻す程の光を内在した存在。


その光を曇らせる事無く育て上げるのが、本来の聖霊の役目。大きな力には責任が伴う。しかし、その責任とは犠牲では無い、在り方でしかない。


導く為の力でしか無いのだ。本来の聖霊の役目とは王に仕える事でも王の補佐でも無い。


聖霊の分霊である者は、ただ存在するだけで世界の摂理を調整している。その中でも光と闇は人にとって、最も大切な存在だ。本来は、どちらも愛の存在。


その意味が、巫女には分かるであろう?』



力強く男性的な別の声だった。



(希望となる光と慈愛の闇…)



『そうだ。人は弱い。感情に左右される。

光属性と闇属性は、対極では無い。どちらも違う側面の愛だ。巫女の光は神の光。

全てを包み込む母なる神の光だ。光属性のソレとは似て非なるもの。


神の子生まれし時。巫女の光もまた覚醒するだろう』



その言葉が心に響き渡ると共に、アリスは目が覚めた。


薄暗い寝室のベットの上だった。


横を見れば寝息を立てながら眠るウィリアムの寝顔が視界に入る。



不思議な夢で聞いた言葉が鮮明に記憶に刻まれていた気がした。




「神の声だったのかしら…」



呟く様に口から出た言葉に反応する様にウィリアムが目を覚ます。



「起きてたの?まだ朝方でしょ?」



まだ眠そうな顔でアリスを抱き寄せながら、そう口にするウィリアムに、アリスは抱きつき返す様にウィリアムの胸に収まった。



「不思議な夢を見たの…とっても心地良くて、とっても温かかった」



「良い夢だったみたいだね」



二人は、再び目を閉じると互いの温もりも感じて安心した様に眠りに落ちた。再び目を覚ましたのは昼過ぎの事だった。



それから、一ヶ月後にアリスの体調不良で妊娠してる事が判明する事となる。



安定期に入る迄は安静にと医者に言われ、ウィリアムはアリスから一時も離れる事は無かった。


本当に良いパパになるんだろうなとアリスは思ったのだった。




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