第二話 針金と糸
「(これは、、本当なのか?)」
見出しを読み、詳細を開いたが中々目を向けられなかった。まるで金縛りにあったように体は動かないが、首から上は自由に動き、頭の中でひとり、葛藤をしていた。よく会話の中で怖いものは何かという質問があるが、毎日が過ぎるにつれて解答が変わっていくが、この時、漸くその模範解答に会ったと思う。
「(ほんの少しだけでも読んでみるか。)」
「コン、コン」
「! !」
金縛りが解けた。
「ガチャッ」
「もう出かけるよー。早く支度してー」
「ちょっと、今日はいいかな。体調が悪くて。」
「そうなの?じゃあお大事に。」
「全員行くの?」
「あと、優磨も行かないって。」
「そうか、分かった。」
ここには自分も合わせて13人住んでいる。この中で10人は家がなく、この施設で暮らしていて、残りの3人は小百合おばさんとその娘二人が住んでいる。小百合おばさんの旦那さんは大学病院で勤めていて、家を空けているため、実際片手で数える程度しか会ったことしかない。
他の9人はどう思っているのか分からないが自分はこの小百合おばさんには大変な感謝がある。ここで衣食住を養ってもらっていることそうだし、死ぬべき運命であった自分に居場所をくれたことが何よりも幸せなことだった。だからこんな事が起きるなど到底あり得ないことであった。しかし、このスマートフォンと言われるものに書いてある情報が正しいと感じてしまったのは、この現代には存在しないような、次世代の機械であるからなのか、自分でも分からない。ただ、この10年間ぐらいの信頼よりも、出会って10分ぐらいの機械を信じたことは事実だった。
「(少しだけならいいよね。)」
そう思って読み始めると、止まらなくなってしまう。結局、この夜は誰とも話せなかった。