第一話 あの日について
「152番!!終わりだ」
「、、、 はい」
何日待ったのだろうか。この苦しみから解放されるまでに。今まで、もはや"あの事"など覚えていなかった。だから後悔や反省などなく、ましてやあれをして甲斐があったのかも分からなかった。30年も経ってればそれもそうだろう。
「分かってはいると思うが、これは仮釈放だからな。本来ならお前の場合、死刑だったはずなのに。」
「そんなの分かっています」
こうして俺の人生が再開した。もちろん俺には身元引受人などいない。だから、塀の中で稼いだ金を持って行く場所は一つしかなかった。
「おはよー、今日は学校休みだね」
「相変わらず起きるのが遅いな!、」
「せっかくだしみんなで遊びにでも行かないって話をしてたんだけど、行く?」
「おーいいんじゃん。行く行く!」
「それと荷物、届いてたよ。スマートフォンって書いてある。」
「スマートフォン?何それ?そんなの頼んでたっけ。」
「差出人はえっーと、剥がしてある。きっと小百合おばさんが剥がしたんでしょ」
「あーかもね!とりあえず部屋で開けてくる」
ここにいる人は、自分も含めて全て親がいない。それぞれいろんな事情があって、今は里親の小百合おばさんの元で暮らしている。里親とはいっても小百合おばさんは養子として引き受けているのではなく、あくまでここの飄景児童養護施設で自分達のご飯から生活までずっと世話をしてくれているのであって、法律上の里親ではない。しかし、小さい頃から皆んなお世話になってるから里親と思っている。
「(これがスマートフォン?)」
電池はすでに入っていて、ボタンを押すと起動した。
いわゆる電子辞書みたいなものだった。
「(ニュースとかも見れるのか、なになに?)」
そこにはとんでもないことが書いてあった。
[飄景児童養護施設連続殺人事件から35年。遺族が背負い続ける憎しみに迫る。]
「(何の話をしてるんだよ、35年っていつの話だよ。)」
そう思って詳細を見ると、それは来週の出来事だった。さらに読むと事件全ての概要が記され、一番上にはWikipediaと書かれていた。