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5、未来の知識(中)

 少し土汚れた革靴と、小さな子供用のピンク色の靴が首相官邸の赤い廊下を踏みしめ進む。


 金井は不審に思う周囲の視線を感じ、ギュッと少女――玲奈の手を握った。

 一方の玲奈はと言うと、物珍しいのか、廊下の絵画や天井を見渡し、まるで動物園にでも来たかのように、へぇと抜けた声を出す。


 金井は、玲奈が金井の先輩に話しかけ、子供を連れ込んで――という厳しい視線を受けた時は、思わず勘弁してくれと思った。


 しかし、金井にとっては幸いな事に昼時で、最後にすれ違った先輩を最後、警備員としかすれ違っていない。


 金井と玲奈は廊下の奥まで進み、コンコン、とドアを叩いた。


 中からは、首相の桂の声が返ってくる。


「入ってくれ」


 随分と落ち着いた声だったが、それが逆に金井の緊張を煽った。


「し、失礼します」


 金井は少し裏返った声で言うと、グッと重い扉を押し開けてその隙間から玲奈を入らせ、自分の体を通した。


 桂の視線が玲奈へと注がれる。

 流石に総理を務めるだけの事はあり、並の事には驚かない胆力と、鋭い観察眼を持つ桂だが、今回ばかりは、独身の金井が子供を連れ込む理由が分からないのは勿論、不信感を抱かずにはいられず、思わず片眉を吊り上げていた。


「お話があります」


 金井の真剣な様子を察し、桂は持っていた万年筆をペン立てに戻すと、執務用の椅子から立ち上がって、来客用のソファーに腰を下ろした。


「座って話をしよう」


 金井は玲奈にも座るように促すと、自分も腰を下ろす。

 背中を背もたれに預ける桂とは違い、金井は緊張してスッと背筋を伸ばして座った。


 桂はチラッと腕時計に目をやり、ゴホンと咳払いをする。


「私が忙しい事は金井君も近くにいて知っているだろ。手短に頼むよ」


「はい……。では、単刀直入に申し上げます。ですが、その前に――」


 金井はソファーとソファーの間に両手をついて身を乗り出すと、桂の耳元で囁いた。


「ここでは盗聴される可能性があります。地下室で話しましょう」


 桂の目が微かに見開かれた。


  ◇◇


 青白いライトが灯り、無機質な部屋の様相が浮かび上がる。

 室内は簡素な造りで、盗聴器を設置されても見つけられるよう、一切の調度品が置かれていない。


 部屋の中心には、まるで刑務所の面会室のような白い机と二つの椅子だけが置かれていた。


 桂は金井に、手で座れと促すと、自身もパイプ椅子に腰かけた。


 玲奈は先ほどまで金井たちがいた首相執務室に残っている。

 変に官邸内を歩き回られても困るので、金井が後輩の山本に面倒を見ているよう頼んだのだ。


 桂は自分のスーツに盗聴器を付けられていないか確認すると、両肘を机について顔の前で手を組んだ。


「さて、話を聞こうか」

少し短いですが、最近、中々投稿出来ていないので上げました。春休みになれば投稿頻度も上がる予定です。よければ、ブックマーク、感想等、お願いします(₋₋)←ペコ顔文字

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