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3話  襲撃

少し寂れた大通りから外れた住宅街の中に、真新しい白い壁をベースにレンガのように作られたタイルが不規則に貼られ、屋根はお城のように見立てられた建物があった。

全体的にメルヘンな雰囲気があり、中からは甘い匂いが漂ってくる。

店内には女性が複数人いて、食事スペースも設けられているようだ。


「うーん、このタルトは最高だね!」

たっぷりの苺とブルーベリー、クリームの乗せたフルーツタルトをほおばりながらみる子は満足そうに言う。

「私のショコラフレーズもチョコと苺の甘味と酸味が程よく混じり合っていて口の中に沁みわたります」

私はチョコスポンジの間に生クリームと苺が挟まれ、上には細かく刻まれたチョコがまぶされた。ショコラケーキを食べていた。

「どのケーキもおいしそうに見えますわね」

茜はザーネトルテという泡立てた生クリ-ムにゼラチンを加えたクリームがふんだんに使われたドイツで誕生したらしいケーキを小さく切り取りながら口に運ぶ。



みる子の勢いに押され、結局私たちは件のケーキ屋へ来てしまっていた。


「おいしいのはいいけれどこれ太らないか怖いですね。」

「ちょっちょそーいうのはやめてよ~、今日は気にせず食べようよ」

相変わらずみる子は楽観的でうらやましいけど一理はありますね。

「うん!そうですね!今日も授業でたくさん動きましたしご褒美としましょう」

「その意気ですわ!ルーティさん!私も楽しいことだけ考えて食べてしまいましょう」

茜もノッテきた

「茜は護身術の授業はうけてないけどね!」

「………」

「………」


その後も私たちは他愛もない話を続けた。


「あら、もうこんな時間、そろそろ帰らなくては家の物にお小言をもらってしまいますわ」


「え~まだいいじゃん!」

「みる子だってお母さんに怒られるのは嫌でしょう」

「ぐっぐうう…」

「まあまあおいしいケーキも食べてたくさんお話もできたので今日はこれでお別れとしましょう」


皆の意見が統一した所で店を出ることとした。


「うーんすっかり暗くなって、人も見かけなくなっちゃたね」

「もう夜ですしここは大通りから外れていますから…」

努めて明るい声を出しているが、やはり人通りがないのは怖い。


そうして一本道に入り歩いていると前から服装を着崩した強面の男3人組が歩いて来た。



「よーう、お嬢ちゃん達今ヒマ~」

如何にも軽薄そうな声をかけてくる。

「イエ、今から帰る所なので失礼します。」

私たちは言葉少なに道の脇から通り抜けようとする。

すると男の一人が足を壁につき、

「とおせんぼ~」


「っっっいい加減にしろよっ!帰るって言ってんだろ!」

ついに限界が来たらしいみる子が怒鳴りつける。茜は泣いてしまっている。


「あ~君は別に帰っていいよ~用があるのはパツ金ちゃんだけだから」

「!?ふざけるなっ、ルーティ相手にする必要はない、さっさと行っ


ゴッ ドサッ


「えっ」


みる子が吹っ飛ばされ、地面に倒れこんでいた。


「なっ何を…!」

男がいつの間にか取り出したナイフで切りつけてくる。


キィンッ


金属音が鳴り、ナイフが男の手から落とす。


「!武具持ちかよ」

「ええ、こんな時のために護身術を習っていますから!」

3人組が近づいて来た時点でカバンから取り出していた。スタンロッドを伸ばし構える。



そしてロッドの石突から電気を迸らせる。

ナイフを飛ばされ驚いて突っ立ていた男の胸を突き後方へ下がらせ、その勢いのまま回って近くにいた2人目の脳天を狙うがこちらは躱されてしまった。

3人目はすでにこちらから離れていた。


「今から逃げるのだったら見逃してあげますよ」

(みる子っみる子っごめん!出遅れた)

「茜っみる子を連れて逃げてっ助けをっ」急いで小声で茫然自失状態の茜に伝える。

まだ、顔色は戻らないが茜は小走りで倒れたみる子の方へ向かい逃げる。



男たちは追おうとしたためロッドを振りかぶり電気を放ち近づけないように牽制する。

「まだやる気ですか!すぐに人が来ますよ!」


男たちはニヤニヤと笑っている。

「いや~その助け間に合うといいね!」

「学校で習ったお遊戯で俺たちに勝てる気かなあああ!」


突然、懐から取り出した注射器を腕に挿した。

「ぐうううう!があああ」

呻き出し体を丸める男たち。


「なっ!!何をしているのっ」

状況が分からず困惑してしまう。

(今攻めるべきでしょうか)


だがこちらが動き出す前に男たちに変化があった。

3人とも色は違うが体が膨らみ始め(いや大きくなっているの!?)目が血走り、顔がひきつっている。。


(どういうことですかっ!さっきまでは人間だったはずなのにっ)


「何が何だか分からないって顔だなあ~!これは今裏で流行っている魔薬ってやつだよお嬢ちゃん、人間を超えられるのさ」

「学校の勉強より約に立つ知識を手に入れられてよかったなああ!」


「こけおどしですかっ!そんな物鍛えた力の前には約にたちませんっ」

「だといいねえええ!」

3人組が襲い掛かってくる。先ほどよりも数倍速くなっている。

(動きは素人同然だけどこうも速いと対処できるでしょうか)

網目状に放った電気をものともせず突っ込んでくる。

人間を超えるというのもあながち誇張ではないらしい。

ザシュッ

一人目が私の首近くで爪の尖った手を振ってくるが、何とか体を捩じって交わす。

服が切れ、首筋にも血が走るが軽傷だ。

2人目が私の足を狙い殴りつけてくる。

「がっうう」

痛い、痛いけど骨は折れていないはず。

3人目は防御が何とか間に合い、片足立ちでロッドを構え電気を全力で開放し追い払う。。


「!!」

「!!」


男達は魔薬を使って仕留められなかったことに驚いていた。

「あまり大したことはないようですね…」

(もうダメだ、相手が素人の動きしかできないのとこちらを舐めていたから何とかなったが、次に来られたらもう…)


「思っていたよりはやるようだな…だが、片足立ちで」

「もういい」

今まで一言も発さず黙っていたスキンヘッドの男が口を開いた。

「えっリーダー!」

「もういい、目的は達せられた」

「ですがっ舐められたままではっ」

「取り逃がした女が助けを呼ぶだろう、これ以上長居することに意味がない」

「……」

「……」

何故か分からないが、3人組は撤退するつもりらしい。

こちらとしては助かりますが。

「おいっ、女っ運が良かったな」

「次、町で会ったらぶっ殺してやるからな!」


捨て台詞を吐いて来た道を走ってどこかに行ってしまいました。


「ふうっ…」

助かった。


「ルーティー!ルーティ!」

助けに戻って来た茜と駆け付けた警察の声が遠くで聞こえてきました。



「ルーティッッ大丈夫!くっ首から血が」

泣きながら茜は聞いてきました。

「あはは、うん大丈夫だよ、足は痛いけど首は大した……ッッッ」

首元を触るとそこにはずっと身に着けていたペンダントがなくなっていました。



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